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王都での騒動
第239話 改造
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「僕はこう見えてもこれまでに様々な魔道具の開発、及び改造を行っているんだ。その中には君の持っているボーガンを似たような物も取り扱った事がある」
「魔道具を……でも、僕の持っているのはただのボーガンを少し改造しただけで魔道具じゃないけど」
「そう、これはただの仕込み武器だね。だけど、僕の手に掛かればすぐに魔道具に作り替えてあげるよ。代金はいらない、その代わりに僕が改造している間の護衛はしっかりと頼むよ」
アルトは反魔の盾からボーガンを取り外すと、工具を利用して瞬く間に分解させた。その手つきは手慣れており、まるで腕利きの鍛冶師にも勝るとも劣らぬ動作で改造を行う。
彼はボーガンを分解させた後、部品を観察してヤスリなどの工具を取り出し、改造を行う。その様子を見ていたナイは昔、アルが鍛冶を行う時の姿と重なる。
(この感じ、爺ちゃんが武器を作ってるみたいだ……)
部品を削り取るアルトの姿にナイは養父のアルの姿を思い浮かべ、人間でしかも自分とそれほど変わらない年齢と思われるアルトが小髭族のアルに匹敵する技術を持っているのかと戸惑う。やがてアルトは全ての部品の確認と改造を行うと、改めて組み始める。
「よし、後はこうして……ついでにこの二つを組み合わせれば完成だ」
「それは……?」
「これは鋼線だよ。蜘蛛の糸の様に細いのに硬さは鋼にも匹敵するか、それ以上の硬度を誇る。簡単には壊れないし、これを刃物に括り付ければもう撃った後もすぐに回収できるようになるだろう」
「そんな物、どうして持っているの?」
「魔道具の開発に必要な素材は普段から持ち歩いているんだ。さあ、あとはこの鋼線を操る動力源だが……これを使おう」
「それって、風属性の魔石?」
アルトは鋼線をボーガンに取り込むと、続けて緑色に光り輝く魔石を取り出す。それを見たナイはすぐに風属性の魔石だと気付き、アルトはボーガンに風属性の魔石を嵌め込む。
鋼線と風属性の魔石を装着された新しいボーガンをナイは手渡され、先端の部分にミスリル製の刃を嵌め込み、最後に糸と括り付ける。外見はあまり変化していないが、試しにこの状態で扱うようにアルトに指示される。
「さあ、それを撃ち込むんだ。改造を加えてあるから以前よりも威力も速度も上がっているはずだよ」
「へ、へえっ……じゃあ、試してみようかな」
「ウォンッ!!」
ナイはボーガンを撃ち込む前にビャクが声を上げ、その声に振り返るとナイは少し離れた場所に存在する岩に気付く。それを見たナイは岩に向けてボーガンを構え、撃ち込む準備を行う。
「ここかな……よし、撃つよ?」
「ああ、だけど気を付けてくれ。今までよりも反動が強くなっているはずだから、気を付けてくれ」
「分かった」
「クゥ~ンッ」
ナイがボーガンを岩に構えると、ビャクは緊張した様子で見つめ、アルトも注意深く観察を行う。そしてナイがボーガンを発射した瞬間、今まで撃ち込んだ時よりも強い反動が襲い掛かり、凄まじい勢いでミスリルの刃が発射される。
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
「ほう……これは中々の威力だ、僕の想像以上だよ」
まるで弾丸の如く発射された刃は岩にめり込み、刃の半分以上も突き刺さる。その様子を見てナイとビャクは驚き、アルトも満足そうに頷く。
頑丈な岩に嵌まった刃を見てナイは戸惑い、これだけの威力ならばホブゴブリンのような魔物でも急所を突けば一撃で仕留める事ができるだろう。すぐに刃を回収しようとナイは岩に向かおうとした時、ここでアルトがそれを止める。
「おっと、わざわざ回収する必要はないよ。忘れたのかい?」
「え?」
「その風属性の魔石を回してごらん」
アルトの言葉を聞いてナイはボーガンに取り付けられている風属性の魔石に気付き、言われた通りに回してみると、ボーガンと刃物に取り付けられている糸が勝手に巻き込み、岩に突き刺さった刃物が引き寄せられて瞬時にボーガンの元へと戻る。
「うわっ……す、凄い」
「ふふふ、驚いたかい?その魔石には僕が細工を施しているからね、適性を持っていない人間でも回すだけで扱えるんだよ」
「へえっ……これ、上手く利用すれば色々と使えそうだね」
「その通りだ。その刃物の切れ味と鋼線を利用すれば武器としてだけではなく、他にも色々と使えるだろうね」
ナイが自分の改造したボーガンを褒めるとアルトは満足そうに頷き、この時にナイは彼の胸元で何かが光った事に気付く。どうやら服の下に彼はペンダントを身に付けていたらしく、改造を行っている最中に服が乱れて出てきたらしい。
そのペンダントにはこの国の王家の紋章が刻まれており、それを見たナイは驚く。なにしろそのペンダントは前に王城で遭遇した「バッシュ」も同じ物を首に掲げていたからであった――
「魔道具を……でも、僕の持っているのはただのボーガンを少し改造しただけで魔道具じゃないけど」
「そう、これはただの仕込み武器だね。だけど、僕の手に掛かればすぐに魔道具に作り替えてあげるよ。代金はいらない、その代わりに僕が改造している間の護衛はしっかりと頼むよ」
アルトは反魔の盾からボーガンを取り外すと、工具を利用して瞬く間に分解させた。その手つきは手慣れており、まるで腕利きの鍛冶師にも勝るとも劣らぬ動作で改造を行う。
彼はボーガンを分解させた後、部品を観察してヤスリなどの工具を取り出し、改造を行う。その様子を見ていたナイは昔、アルが鍛冶を行う時の姿と重なる。
(この感じ、爺ちゃんが武器を作ってるみたいだ……)
部品を削り取るアルトの姿にナイは養父のアルの姿を思い浮かべ、人間でしかも自分とそれほど変わらない年齢と思われるアルトが小髭族のアルに匹敵する技術を持っているのかと戸惑う。やがてアルトは全ての部品の確認と改造を行うと、改めて組み始める。
「よし、後はこうして……ついでにこの二つを組み合わせれば完成だ」
「それは……?」
「これは鋼線だよ。蜘蛛の糸の様に細いのに硬さは鋼にも匹敵するか、それ以上の硬度を誇る。簡単には壊れないし、これを刃物に括り付ければもう撃った後もすぐに回収できるようになるだろう」
「そんな物、どうして持っているの?」
「魔道具の開発に必要な素材は普段から持ち歩いているんだ。さあ、あとはこの鋼線を操る動力源だが……これを使おう」
「それって、風属性の魔石?」
アルトは鋼線をボーガンに取り込むと、続けて緑色に光り輝く魔石を取り出す。それを見たナイはすぐに風属性の魔石だと気付き、アルトはボーガンに風属性の魔石を嵌め込む。
鋼線と風属性の魔石を装着された新しいボーガンをナイは手渡され、先端の部分にミスリル製の刃を嵌め込み、最後に糸と括り付ける。外見はあまり変化していないが、試しにこの状態で扱うようにアルトに指示される。
「さあ、それを撃ち込むんだ。改造を加えてあるから以前よりも威力も速度も上がっているはずだよ」
「へ、へえっ……じゃあ、試してみようかな」
「ウォンッ!!」
ナイはボーガンを撃ち込む前にビャクが声を上げ、その声に振り返るとナイは少し離れた場所に存在する岩に気付く。それを見たナイは岩に向けてボーガンを構え、撃ち込む準備を行う。
「ここかな……よし、撃つよ?」
「ああ、だけど気を付けてくれ。今までよりも反動が強くなっているはずだから、気を付けてくれ」
「分かった」
「クゥ~ンッ」
ナイがボーガンを岩に構えると、ビャクは緊張した様子で見つめ、アルトも注意深く観察を行う。そしてナイがボーガンを発射した瞬間、今まで撃ち込んだ時よりも強い反動が襲い掛かり、凄まじい勢いでミスリルの刃が発射される。
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
「ほう……これは中々の威力だ、僕の想像以上だよ」
まるで弾丸の如く発射された刃は岩にめり込み、刃の半分以上も突き刺さる。その様子を見てナイとビャクは驚き、アルトも満足そうに頷く。
頑丈な岩に嵌まった刃を見てナイは戸惑い、これだけの威力ならばホブゴブリンのような魔物でも急所を突けば一撃で仕留める事ができるだろう。すぐに刃を回収しようとナイは岩に向かおうとした時、ここでアルトがそれを止める。
「おっと、わざわざ回収する必要はないよ。忘れたのかい?」
「え?」
「その風属性の魔石を回してごらん」
アルトの言葉を聞いてナイはボーガンに取り付けられている風属性の魔石に気付き、言われた通りに回してみると、ボーガンと刃物に取り付けられている糸が勝手に巻き込み、岩に突き刺さった刃物が引き寄せられて瞬時にボーガンの元へと戻る。
「うわっ……す、凄い」
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「へえっ……これ、上手く利用すれば色々と使えそうだね」
「その通りだ。その刃物の切れ味と鋼線を利用すれば武器としてだけではなく、他にも色々と使えるだろうね」
ナイが自分の改造したボーガンを褒めるとアルトは満足そうに頷き、この時にナイは彼の胸元で何かが光った事に気付く。どうやら服の下に彼はペンダントを身に付けていたらしく、改造を行っている最中に服が乱れて出てきたらしい。
そのペンダントにはこの国の王家の紋章が刻まれており、それを見たナイは驚く。なにしろそのペンダントは前に王城で遭遇した「バッシュ」も同じ物を首に掲げていたからであった――
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