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王都での騒動
第238話 自称魔道具職人
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『ナイ、儂はな……昔、貴族の屋敷に入った事がある。その貴族は性格は悪くはなかったが、ちょっと趣味があれでな……屋敷の中には黄金や水晶で作り上げられた武器を飾っていたんだ』
『えっ!?爺ちゃん、貴族様と友達なの!?』
『昔の話だ。それに友達というわけじゃないが……まあ、色々と世話をした事はあったな』
子供の頃にナイはアルから知り合いの貴族の話を聞かされたことがあり、アルはその貴族の屋敷に訪れた時に様々な「観賞用」の武器や防具を見たという。
『黄金の剣や盾、他にも宝石がいくつも嵌め込まれた宝剣なんかも見せつけられたな。だけど、俺はそれらを見た時にこう思った。ああ、こいつら可哀想だな……とな』
『可哀想……貴族さんが?』
『いや、俺が可哀想だと思ったのは飾られている武器や防具の事だ。本来、剣や盾は戦うためや守るために作られる代物なのに、俺が屋敷で見た武器や防具はどれも人の目を楽しませるために作られた物……実用性はないし、ただの飾りとしてずっと放置されると思うと不憫でならないんだよ』
『不憫……?』
アルからすれば美術品のように作り出された武器や防具の類は可哀想に見えるらしく、本来の武器や防具としての用途で扱われる事はなく、鑑賞用として永遠に飾られるだけで過ごすなど可哀想で同時に勿体ないように思えたという。
『いくら外見を美しく作り上げても、本来の用途で使われずに飾られるままの武器や防具ほど可哀想な物はねえ。そんな物、俺は武器や防具とは認めないし、第一に美しい物が見たいなら最初から美術品でも飾ってればいいんだ。どうしてわざわざ武器や防具を飾るのか俺には理解できない』
『爺ちゃん……』
『いいか、ナイ。どんなに大切な物だとしても武器として作った物は武器として扱う方が良いんだ。大切に壊れない様に保管して扱うよりも、武器として利用される方がきっとその武器も幸せだろう。例え、無理に利用されて壊れたとしても……それが本来の道具の用途として正しく使われたのならきっと道具も本望だろう。だからナイ、もしも爺ちゃんが死んだときに爺ちゃんの道具を使う時、その時は形見だからって大切にするんじゃないぞ』
子供のナイに対してアルは自分の武器や防具の価値観を話し、その考え方にナイは共感を抱いた。だからこそナイはアルが残してくれたミスリル製の刃を手放さず、武器として扱う事を決めていた――
「――なるほど、亡くなった親御さんの考えを尊重して武器として使い続ける事を決めたのか。その考え方は僕も素晴らしいと思うよ」
ナイは正直にアルトに亡くなった養父の考えを伝えると、彼は納得したように頷くが、改めてナイに振り向いて話を続ける。
「だけど、君のやり方は効率的じゃないね。確かに武器として作り出された物を武器として扱うのは間違いじゃない。けれど、君の今の使い方だとこの刃物は最大限に利用しているとは言い難い。酷く言えば宝の持ち腐れだよ」
「うっ……耳が痛い」
「クゥ~ンッ……」
アルトの言葉にナイは否定できず、確かに今までの事を考えてもナイはアルが最後に残してくれたミスリルの刃物を使いこなしているとは言えない。
一応はこれまでにナイの仕込み武器としてミスリル製の刃物は役立つ事もあったが、アルトからすればナイの使い方はこの刃物の性能を生かしているとは言えず、この調子ではいずれ刃物を失くしてしまう危険性もある。
「この刃物、余程丹念に作り込まれただろうね。それなのに肝心の使い手である君が刃物を使いこなせていない。これを知れば君の養父も悲しむんじゃないかい?」
「ううっ……でも、どうすればいいのか分からないんだ。最初はそれを短剣のように使ってみようかと思ったけど、思うように上手くいかなくて」
「ふむ、元々は槍の刃物として作り出された物なら貫く事に特化した刃物なんだろうね。そういう意味では君が飛び道具として利用するのは悪くはない、悪くはないんだけど……使い方が甘すぎる」
「ウォンッ?」
飛び道具として刃物を利用する事に関してはアルトは問題ないというが、それならば何が気に入らないのかとビャクは首を傾げる。アルトが気にしているのは刃物を飛ばした後、いちいち回収しなければならない点だった。
「例えばの話だけど、この刃物とその盾に仕込んでいるボーガンを糸のような物で括り付けて、射出した後に糸を引き寄せて回収する機能があれば……色々と使い道はあると思うよ」
「えっ……でも、そんな事ができるの?だいたい糸で繋げるって、その糸が千切れたりしないの?」
「不可能ではないさ、僕の手に掛かれば簡単には切れない糸や刃物を吸い寄せる機能もそのボーガンに搭載する事が出来る……何しろ、僕は魔道具職人だからね!!」
「魔道具……職人?」
「クゥ~ンッ……」
ナイとビャクはアルトの言葉に疑問を抱くが、そんな二人の前でアルトは自分の鞄を開くと、中から様々な工具を取り出す。
『えっ!?爺ちゃん、貴族様と友達なの!?』
『昔の話だ。それに友達というわけじゃないが……まあ、色々と世話をした事はあったな』
子供の頃にナイはアルから知り合いの貴族の話を聞かされたことがあり、アルはその貴族の屋敷に訪れた時に様々な「観賞用」の武器や防具を見たという。
『黄金の剣や盾、他にも宝石がいくつも嵌め込まれた宝剣なんかも見せつけられたな。だけど、俺はそれらを見た時にこう思った。ああ、こいつら可哀想だな……とな』
『可哀想……貴族さんが?』
『いや、俺が可哀想だと思ったのは飾られている武器や防具の事だ。本来、剣や盾は戦うためや守るために作られる代物なのに、俺が屋敷で見た武器や防具はどれも人の目を楽しませるために作られた物……実用性はないし、ただの飾りとしてずっと放置されると思うと不憫でならないんだよ』
『不憫……?』
アルからすれば美術品のように作り出された武器や防具の類は可哀想に見えるらしく、本来の武器や防具としての用途で扱われる事はなく、鑑賞用として永遠に飾られるだけで過ごすなど可哀想で同時に勿体ないように思えたという。
『いくら外見を美しく作り上げても、本来の用途で使われずに飾られるままの武器や防具ほど可哀想な物はねえ。そんな物、俺は武器や防具とは認めないし、第一に美しい物が見たいなら最初から美術品でも飾ってればいいんだ。どうしてわざわざ武器や防具を飾るのか俺には理解できない』
『爺ちゃん……』
『いいか、ナイ。どんなに大切な物だとしても武器として作った物は武器として扱う方が良いんだ。大切に壊れない様に保管して扱うよりも、武器として利用される方がきっとその武器も幸せだろう。例え、無理に利用されて壊れたとしても……それが本来の道具の用途として正しく使われたのならきっと道具も本望だろう。だからナイ、もしも爺ちゃんが死んだときに爺ちゃんの道具を使う時、その時は形見だからって大切にするんじゃないぞ』
子供のナイに対してアルは自分の武器や防具の価値観を話し、その考え方にナイは共感を抱いた。だからこそナイはアルが残してくれたミスリル製の刃を手放さず、武器として扱う事を決めていた――
「――なるほど、亡くなった親御さんの考えを尊重して武器として使い続ける事を決めたのか。その考え方は僕も素晴らしいと思うよ」
ナイは正直にアルトに亡くなった養父の考えを伝えると、彼は納得したように頷くが、改めてナイに振り向いて話を続ける。
「だけど、君のやり方は効率的じゃないね。確かに武器として作り出された物を武器として扱うのは間違いじゃない。けれど、君の今の使い方だとこの刃物は最大限に利用しているとは言い難い。酷く言えば宝の持ち腐れだよ」
「うっ……耳が痛い」
「クゥ~ンッ……」
アルトの言葉にナイは否定できず、確かに今までの事を考えてもナイはアルが最後に残してくれたミスリルの刃物を使いこなしているとは言えない。
一応はこれまでにナイの仕込み武器としてミスリル製の刃物は役立つ事もあったが、アルトからすればナイの使い方はこの刃物の性能を生かしているとは言えず、この調子ではいずれ刃物を失くしてしまう危険性もある。
「この刃物、余程丹念に作り込まれただろうね。それなのに肝心の使い手である君が刃物を使いこなせていない。これを知れば君の養父も悲しむんじゃないかい?」
「ううっ……でも、どうすればいいのか分からないんだ。最初はそれを短剣のように使ってみようかと思ったけど、思うように上手くいかなくて」
「ふむ、元々は槍の刃物として作り出された物なら貫く事に特化した刃物なんだろうね。そういう意味では君が飛び道具として利用するのは悪くはない、悪くはないんだけど……使い方が甘すぎる」
「ウォンッ?」
飛び道具として刃物を利用する事に関してはアルトは問題ないというが、それならば何が気に入らないのかとビャクは首を傾げる。アルトが気にしているのは刃物を飛ばした後、いちいち回収しなければならない点だった。
「例えばの話だけど、この刃物とその盾に仕込んでいるボーガンを糸のような物で括り付けて、射出した後に糸を引き寄せて回収する機能があれば……色々と使い道はあると思うよ」
「えっ……でも、そんな事ができるの?だいたい糸で繋げるって、その糸が千切れたりしないの?」
「不可能ではないさ、僕の手に掛かれば簡単には切れない糸や刃物を吸い寄せる機能もそのボーガンに搭載する事が出来る……何しろ、僕は魔道具職人だからね!!」
「魔道具……職人?」
「クゥ~ンッ……」
ナイとビャクはアルトの言葉に疑問を抱くが、そんな二人の前でアルトは自分の鞄を開くと、中から様々な工具を取り出す。
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