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忌み子と呼ばれた少年
第88話 二年前とは違う
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(迎撃が使えないなんて……いや、そんなの関係ない!!)
戦闘では最も役立っていた迎撃の技能が使用できない事はナイも誤算だったが、迎撃以外にも戦闘に役立つ技能はいくらでもある。
刃に毒をこびり付けた刺剣をナイは握りしめ、迎撃に頼れずとも攻撃を仕掛ける事は止めない。しかし、ナイが仕掛ける前に赤毛熊は両腕を振りかざす。
「ガアッ!!」
「くっ!?」
赤毛熊の攻撃をナイは跳躍の技能を生かして後方に跳んで回避し、その一方で赤毛熊はちょこまかと動くナイに対して苛立ちを抱く。赤毛熊の攻撃が当たればナイなど一撃で倒せるだろうが、その攻撃が当たらなければ意味はない。
「グゥウウウッ……!!」
「どうした、かかってこいよ……そんなに俺が怖いのか!!」
無暗に攻撃しても意味はないと悟ったのか、赤毛熊はナイの様子を伺うように四つん這いの状態から動かなくなった。その様子を見てナイは挑発じみた言葉を欠けるが、当然だが赤毛熊には言葉は通じない。
自分の事を観察するように見つめてくる赤毛熊に対し、嫌な感覚を覚えながらもナイは懐に手を伸ばす。そして以前にも利用した目潰しをしかけようとした。
「このっ!!」
「ウガァッ!?」
粉薬が入った小壺をナイは取り出すと、それを見た赤毛熊は二年前の出来事を思い出し、咄嗟に距離を取る。以前にも赤毛熊は粉薬を目に受けて視覚と嗅覚を封じられた事があるため、警戒心を強める。
(やっぱり、目潰しは警戒してたか……けど、お陰で隙ができた)
目潰しは通用しなかったが赤毛熊が距離を取った事でナイは余裕を取り戻すと、ここで彼は毒を塗っていない刺剣を取り出し、それを空中に放り込む。ナイの行動を見て赤毛熊は戸惑うが、空中に放り込んだ刺剣に対してナイは旋斧を振り払う。
「喰らえっ!!」
「ガアッ!?」
空中に放り込まれた刺剣に対してナイは旋斧を叩きつけると、赤毛熊に目掛けて放つ。刺剣は赤毛熊に目掛けて突っ込み、思いもよらぬ攻撃に咄嗟に赤毛熊は爪を振り払う。
旋斧によって叩き込まれた刺剣は赤毛熊の爪に弾かれてしまうが、意表を突いた攻撃だったので赤毛熊に隙が生まれる。その隙を逃さずにナイは旋斧を抱えて赤毛熊に向かう。
(今までの特訓を思い出せ!!今なら斬れる!!)
二年前はナイの攻撃は赤毛熊には全く通用しなかった。しかし、この1年の間にナイは「剛力」を磨き、遂には巨岩をも破壊する程の一撃を繰り出せるようになった。
赤毛熊が体勢を崩した所でナイは力強く踏み込み、両手で掲げた旋斧を振りかざす。その攻撃に対して赤毛熊は咄嗟に刺剣を弾いた腕とは反対の腕を伸ばす。
「ウガァアアッ!!」
「だああっ!!」
赤毛熊の刃物如く鋭い爪がナイの元へ迫るが、それに対してナイは敢えて踏み止まり、その爪に対して旋斧を振りかざす。以前は赤毛熊の爪を欠ける程度の攻撃しか出来なかったが、今回は渾身の力を込めて振り下ろす。
激しい金属音が鳴り響き、火花が散った。結果から言えばナイは後ろによろめき、その一方で赤毛熊の右腕の爪は砕けるどころか右手その物が切り裂かれて血飛沫が舞い上がる。
――アガァアアアッ……!?
赤毛熊の悲鳴が渓谷内に響き渡り、体勢を崩した状態からの攻撃とはいえ、赤毛熊の攻撃に対してナイは正面から打ち合って見事に打ち勝った。赤毛熊の最大の武器である右手の爪は完全に破壊された。
自分の攻撃で赤毛熊が負傷した姿を見てナイは目を見開き、彼のこの二年間の訓練が無駄ではなかった事が証明される。だが、喜んでる暇はなく、怪我を負った赤毛熊の右手を見てナイは旋斧を手放して刺剣を掴む。
「ここだぁっ!!」
「ウガァッ!?」
血を流している赤毛熊の右手に向けてナイは刺剣を握りしめると、傷口に目掛けて刃を突き刺す。毒が塗られた刃物が傷口の中にねじ込まれ、赤毛熊は悲鳴を上げながら倒れ込む。
普通に刺剣で突き射そうとしても赤毛熊の頑丈な毛皮や鋼鉄のような筋肉には刃は通じない。しかし、傷口から直接差し込めば話は別であり、右腕に刺剣が突き刺さった状態で赤毛熊はその場をのたうち回る。
「ガアアアッ……!?」
「くっ……まだ動けるか」
オークやゴブリン程度ならば毒が体内に入り込んだ瞬間に身体が痺れて動けなくなるはずだが、赤毛熊の場合は毒に耐性があるため、身体をふらつかせながらも起き上がった。
赤毛熊は自分の右手を口元に近付け、信じられない事に自分の右手に噛みつき、右手の肉ごと噛み千切って体内に突き刺さった刺剣を取り出す。
「フゥッ……フゥッ……!!」
「まだ、動けるのか……」
赤毛熊は完全に右手を失ったが、それでも毒の短剣が突き刺された箇所から血を流し、毒が完全に体内に回る前に外へ放出する。その様子を見てナイは旋斧を持ち上げ、ここでゴマンから借りた盾を装着し、右手に旋斧を構えて左手で盾を装備する。
戦闘では最も役立っていた迎撃の技能が使用できない事はナイも誤算だったが、迎撃以外にも戦闘に役立つ技能はいくらでもある。
刃に毒をこびり付けた刺剣をナイは握りしめ、迎撃に頼れずとも攻撃を仕掛ける事は止めない。しかし、ナイが仕掛ける前に赤毛熊は両腕を振りかざす。
「ガアッ!!」
「くっ!?」
赤毛熊の攻撃をナイは跳躍の技能を生かして後方に跳んで回避し、その一方で赤毛熊はちょこまかと動くナイに対して苛立ちを抱く。赤毛熊の攻撃が当たればナイなど一撃で倒せるだろうが、その攻撃が当たらなければ意味はない。
「グゥウウウッ……!!」
「どうした、かかってこいよ……そんなに俺が怖いのか!!」
無暗に攻撃しても意味はないと悟ったのか、赤毛熊はナイの様子を伺うように四つん這いの状態から動かなくなった。その様子を見てナイは挑発じみた言葉を欠けるが、当然だが赤毛熊には言葉は通じない。
自分の事を観察するように見つめてくる赤毛熊に対し、嫌な感覚を覚えながらもナイは懐に手を伸ばす。そして以前にも利用した目潰しをしかけようとした。
「このっ!!」
「ウガァッ!?」
粉薬が入った小壺をナイは取り出すと、それを見た赤毛熊は二年前の出来事を思い出し、咄嗟に距離を取る。以前にも赤毛熊は粉薬を目に受けて視覚と嗅覚を封じられた事があるため、警戒心を強める。
(やっぱり、目潰しは警戒してたか……けど、お陰で隙ができた)
目潰しは通用しなかったが赤毛熊が距離を取った事でナイは余裕を取り戻すと、ここで彼は毒を塗っていない刺剣を取り出し、それを空中に放り込む。ナイの行動を見て赤毛熊は戸惑うが、空中に放り込んだ刺剣に対してナイは旋斧を振り払う。
「喰らえっ!!」
「ガアッ!?」
空中に放り込まれた刺剣に対してナイは旋斧を叩きつけると、赤毛熊に目掛けて放つ。刺剣は赤毛熊に目掛けて突っ込み、思いもよらぬ攻撃に咄嗟に赤毛熊は爪を振り払う。
旋斧によって叩き込まれた刺剣は赤毛熊の爪に弾かれてしまうが、意表を突いた攻撃だったので赤毛熊に隙が生まれる。その隙を逃さずにナイは旋斧を抱えて赤毛熊に向かう。
(今までの特訓を思い出せ!!今なら斬れる!!)
二年前はナイの攻撃は赤毛熊には全く通用しなかった。しかし、この1年の間にナイは「剛力」を磨き、遂には巨岩をも破壊する程の一撃を繰り出せるようになった。
赤毛熊が体勢を崩した所でナイは力強く踏み込み、両手で掲げた旋斧を振りかざす。その攻撃に対して赤毛熊は咄嗟に刺剣を弾いた腕とは反対の腕を伸ばす。
「ウガァアアッ!!」
「だああっ!!」
赤毛熊の刃物如く鋭い爪がナイの元へ迫るが、それに対してナイは敢えて踏み止まり、その爪に対して旋斧を振りかざす。以前は赤毛熊の爪を欠ける程度の攻撃しか出来なかったが、今回は渾身の力を込めて振り下ろす。
激しい金属音が鳴り響き、火花が散った。結果から言えばナイは後ろによろめき、その一方で赤毛熊の右腕の爪は砕けるどころか右手その物が切り裂かれて血飛沫が舞い上がる。
――アガァアアアッ……!?
赤毛熊の悲鳴が渓谷内に響き渡り、体勢を崩した状態からの攻撃とはいえ、赤毛熊の攻撃に対してナイは正面から打ち合って見事に打ち勝った。赤毛熊の最大の武器である右手の爪は完全に破壊された。
自分の攻撃で赤毛熊が負傷した姿を見てナイは目を見開き、彼のこの二年間の訓練が無駄ではなかった事が証明される。だが、喜んでる暇はなく、怪我を負った赤毛熊の右手を見てナイは旋斧を手放して刺剣を掴む。
「ここだぁっ!!」
「ウガァッ!?」
血を流している赤毛熊の右手に向けてナイは刺剣を握りしめると、傷口に目掛けて刃を突き刺す。毒が塗られた刃物が傷口の中にねじ込まれ、赤毛熊は悲鳴を上げながら倒れ込む。
普通に刺剣で突き射そうとしても赤毛熊の頑丈な毛皮や鋼鉄のような筋肉には刃は通じない。しかし、傷口から直接差し込めば話は別であり、右腕に刺剣が突き刺さった状態で赤毛熊はその場をのたうち回る。
「ガアアアッ……!?」
「くっ……まだ動けるか」
オークやゴブリン程度ならば毒が体内に入り込んだ瞬間に身体が痺れて動けなくなるはずだが、赤毛熊の場合は毒に耐性があるため、身体をふらつかせながらも起き上がった。
赤毛熊は自分の右手を口元に近付け、信じられない事に自分の右手に噛みつき、右手の肉ごと噛み千切って体内に突き刺さった刺剣を取り出す。
「フゥッ……フゥッ……!!」
「まだ、動けるのか……」
赤毛熊は完全に右手を失ったが、それでも毒の短剣が突き刺された箇所から血を流し、毒が完全に体内に回る前に外へ放出する。その様子を見てナイは旋斧を持ち上げ、ここでゴマンから借りた盾を装着し、右手に旋斧を構えて左手で盾を装備する。
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