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忌み子と呼ばれた少年
第87話 因縁の再会
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――ウガァアアアアッ!!
森中に響き渡る程の咆哮を放ちながら赤毛熊は渓谷に流れる川の中に浸かるナイとビャクに対し、自分も崖を滑り落ちるように移動する。身体が水中に浸かった状態ではまともに戦えないと思ったナイはビャクに逃げるように告げる。
「まずい……引き返すぞ、ビャク!!」
「ウォンッ!?」
慌ててナイとビャクは身体を反転させ、川の流れに逆らいながら元の場所へ戻ろうとするが、既に赤毛熊は崖を降りて川の中に入り込む。普段から餌を得るために川を泳ぐ事もあるのか、赤毛熊は川の中でも素早く動き、徐々に距離を詰めていく。
このままでは赤毛熊に追いつかれ、川に浸かった状態で戦闘が始まってしまう。川の中で戦うとなればナイ達が不利であり、身体が水に浸かった状態ではまともに動く事もできない。
「ビャク、急げ!!追いつかれるぞ!!」
「ウォンッ……!!」
「ガアアアッ!!」
必死にナイとビャクは川原に向かうが、遂に赤毛熊に追いつかれてしまい、水中で碌に身動きが取れないナイとビャクに大して赤毛熊は爪を振りかざす。
「ウガァッ!!」
「ギャインッ!?」
「ビャク!?」
赤毛熊の爪が遂にビャクの身体に触れ、ビャクは悲鳴を上げながら川の中に倒れ込む。その姿を見てナイは怒りを抱き、咄嗟に赤毛熊に目掛けて刺剣を放つ。
「このっ!!」
「ガウッ!?」
ナイは刺剣を投擲するが、腰まで身体が沈んだ状態では上手く動く事ができず、放り込んだ刺剣も赤毛熊の頬を掠めただけで当てる事は出来なかった。
しかし、刃物を投げつけてきたナイに対して赤毛熊は警戒したように距離を取り、その隙にナイはどうにか川原まで辿り着く。水中から身体を抜け出す事が出来れば十分であり、ナイは背中の旋斧を抜いて構える。
「さあ……勝負はここからだ!!」
「グゥウッ……!!」
武器を手にしたナイに対して赤毛熊は目つきを鋭くさせて向かい合う。赤毛熊の片目はかつてアルの矢によって射抜かれ、現在は隻眼だった。
二年前の時と比べても赤毛熊は体格が更に大きくなっており、恐らくは環境が変化した事によってそれに適応するために肉体も成長したらしく、より恐ろしい存在へと変貌していた。
「ウガアアアアッ!!」
「くっ!?」
赤毛熊はナイへ向けて突っ込むと、それに対してナイは咄嗟に「跳躍」の技能を発動させて横に飛ぶ。その結果、ナイに避けられた赤毛熊は渓谷の岩壁に目掛けて突っ込む。あまりの突進力に岩壁に体当たりした瞬間に派手な土煙が舞い上がる。
赤毛熊は岩石の破片を払いのけながら何事もなかったように振り返り、赤毛熊が突進した箇所は岩壁が砕けて凹んでいた。頑丈な岩の壁に突っ込んでも傷を負うどころか逆に破壊する程の怪力にナイは顔色を青ざめた。
(こ、こいつ……二年前よりも強くなっている!?)
二年前の時点でも驚異的な強さを誇る赤毛熊だったが、更に力を増しているという事実にナイは動揺を隠せない。しかし、もうここから先は引き返すわけにもいかず、ナイは即座に旋斧を地面に突き刺すと、毒瓶と刺剣を取り出す。
毒瓶の蓋を開き、その中に刺剣を突き刺すと数種類の毒草を組み合わせた毒を刃に塗り込む。その様子を見て赤毛熊は本能的に危険を察したのか、ナイが何か行動に移る前に襲い掛かろうとした。
「ガアアッ!!」
「くっ……このっ!!」
迫りくる赤毛熊に対してナイは毒瓶を放り捨てて刺剣を構える。この時にナイは赤毛熊の行動を「観察眼」の技能で捕らえ、久々に「迎撃」の技能を発動させて反撃に移ろうとする。
(これを奴に打ち込めれば……!?)
しかし、いつもならば敵が攻撃を仕掛けた時は勝手に発動する「迎撃」の技能だが、どういう事なのか赤毛熊の攻撃の射程距離に入っても反応できず、咄嗟にナイは跳躍の技能を発動させて赤毛熊の攻撃を躱す。
「うわっ!?」
「ガアアッ!!」
赤毛熊の振り下ろした右腕が地面に叩き込まれ、あまりの破壊力に地面が抉り取られる。その光景を目にしてナイは冷や汗を流し、どうして「迎撃」が発動しなかったのかと戸惑う。
(どうして迎撃が使えないんだ!?)
これまでに迎撃の技能を発動させた時はナイが強く意識せずとも、反撃が可能な状態ならば勝手に発動していた。だが、今回は何故か赤毛熊の攻撃に反応できず、咄嗟に回避行動に移っていなければナイは今頃は殺されていただろう。
迎撃の技能が発動しなかった理由を考え、ここでナイは思い出す。それはこの二年の間は迎撃の技能を扱う機会が全くなかったのだ。赤毛熊を倒すためにナイは訓練に励むようになってから迎撃を扱う機会が極端に減り、訓練を経て強くなったナイが迎撃を発動させるほどの相手と巡り合う事もなかった。
つまりナイは迎撃の技能を扱う機会が長期間なかったせいで、迎撃の発動が思う様にできなくなった可能性が高い。技能とはあくまでも特殊能力ではなく、技術の才能に過ぎない。どんなに優れた才能を持っていようと、技術を扱う事を怠れば鈍ってしまうのは当然の理だった。
森中に響き渡る程の咆哮を放ちながら赤毛熊は渓谷に流れる川の中に浸かるナイとビャクに対し、自分も崖を滑り落ちるように移動する。身体が水中に浸かった状態ではまともに戦えないと思ったナイはビャクに逃げるように告げる。
「まずい……引き返すぞ、ビャク!!」
「ウォンッ!?」
慌ててナイとビャクは身体を反転させ、川の流れに逆らいながら元の場所へ戻ろうとするが、既に赤毛熊は崖を降りて川の中に入り込む。普段から餌を得るために川を泳ぐ事もあるのか、赤毛熊は川の中でも素早く動き、徐々に距離を詰めていく。
このままでは赤毛熊に追いつかれ、川に浸かった状態で戦闘が始まってしまう。川の中で戦うとなればナイ達が不利であり、身体が水に浸かった状態ではまともに動く事もできない。
「ビャク、急げ!!追いつかれるぞ!!」
「ウォンッ……!!」
「ガアアアッ!!」
必死にナイとビャクは川原に向かうが、遂に赤毛熊に追いつかれてしまい、水中で碌に身動きが取れないナイとビャクに大して赤毛熊は爪を振りかざす。
「ウガァッ!!」
「ギャインッ!?」
「ビャク!?」
赤毛熊の爪が遂にビャクの身体に触れ、ビャクは悲鳴を上げながら川の中に倒れ込む。その姿を見てナイは怒りを抱き、咄嗟に赤毛熊に目掛けて刺剣を放つ。
「このっ!!」
「ガウッ!?」
ナイは刺剣を投擲するが、腰まで身体が沈んだ状態では上手く動く事ができず、放り込んだ刺剣も赤毛熊の頬を掠めただけで当てる事は出来なかった。
しかし、刃物を投げつけてきたナイに対して赤毛熊は警戒したように距離を取り、その隙にナイはどうにか川原まで辿り着く。水中から身体を抜け出す事が出来れば十分であり、ナイは背中の旋斧を抜いて構える。
「さあ……勝負はここからだ!!」
「グゥウッ……!!」
武器を手にしたナイに対して赤毛熊は目つきを鋭くさせて向かい合う。赤毛熊の片目はかつてアルの矢によって射抜かれ、現在は隻眼だった。
二年前の時と比べても赤毛熊は体格が更に大きくなっており、恐らくは環境が変化した事によってそれに適応するために肉体も成長したらしく、より恐ろしい存在へと変貌していた。
「ウガアアアアッ!!」
「くっ!?」
赤毛熊はナイへ向けて突っ込むと、それに対してナイは咄嗟に「跳躍」の技能を発動させて横に飛ぶ。その結果、ナイに避けられた赤毛熊は渓谷の岩壁に目掛けて突っ込む。あまりの突進力に岩壁に体当たりした瞬間に派手な土煙が舞い上がる。
赤毛熊は岩石の破片を払いのけながら何事もなかったように振り返り、赤毛熊が突進した箇所は岩壁が砕けて凹んでいた。頑丈な岩の壁に突っ込んでも傷を負うどころか逆に破壊する程の怪力にナイは顔色を青ざめた。
(こ、こいつ……二年前よりも強くなっている!?)
二年前の時点でも驚異的な強さを誇る赤毛熊だったが、更に力を増しているという事実にナイは動揺を隠せない。しかし、もうここから先は引き返すわけにもいかず、ナイは即座に旋斧を地面に突き刺すと、毒瓶と刺剣を取り出す。
毒瓶の蓋を開き、その中に刺剣を突き刺すと数種類の毒草を組み合わせた毒を刃に塗り込む。その様子を見て赤毛熊は本能的に危険を察したのか、ナイが何か行動に移る前に襲い掛かろうとした。
「ガアアッ!!」
「くっ……このっ!!」
迫りくる赤毛熊に対してナイは毒瓶を放り捨てて刺剣を構える。この時にナイは赤毛熊の行動を「観察眼」の技能で捕らえ、久々に「迎撃」の技能を発動させて反撃に移ろうとする。
(これを奴に打ち込めれば……!?)
しかし、いつもならば敵が攻撃を仕掛けた時は勝手に発動する「迎撃」の技能だが、どういう事なのか赤毛熊の攻撃の射程距離に入っても反応できず、咄嗟にナイは跳躍の技能を発動させて赤毛熊の攻撃を躱す。
「うわっ!?」
「ガアアッ!!」
赤毛熊の振り下ろした右腕が地面に叩き込まれ、あまりの破壊力に地面が抉り取られる。その光景を目にしてナイは冷や汗を流し、どうして「迎撃」が発動しなかったのかと戸惑う。
(どうして迎撃が使えないんだ!?)
これまでに迎撃の技能を発動させた時はナイが強く意識せずとも、反撃が可能な状態ならば勝手に発動していた。だが、今回は何故か赤毛熊の攻撃に反応できず、咄嗟に回避行動に移っていなければナイは今頃は殺されていただろう。
迎撃の技能が発動しなかった理由を考え、ここでナイは思い出す。それはこの二年の間は迎撃の技能を扱う機会が全くなかったのだ。赤毛熊を倒すためにナイは訓練に励むようになってから迎撃を扱う機会が極端に減り、訓練を経て強くなったナイが迎撃を発動させるほどの相手と巡り合う事もなかった。
つまりナイは迎撃の技能を扱う機会が長期間なかったせいで、迎撃の発動が思う様にできなくなった可能性が高い。技能とはあくまでも特殊能力ではなく、技術の才能に過ぎない。どんなに優れた才能を持っていようと、技術を扱う事を怠れば鈍ってしまうのは当然の理だった。
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