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忌み子と呼ばれた少年
第84話 親友との約束
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――その日の夜、ナイは全ての準備を整えると倉庫から抜け出す。そして村の外に向かおうとした時、家の前に誰かが立っている事に気付く。
「……よう、ナイ」
「ゴマン……?」
家の前に立っていたのはゴマンだと気付いたナイは驚き、時刻はもう深夜を迎えているというのにどうして彼が家の前にいるのかと戸惑う。一方でゴマンは真剣な表情を浮かべ、ナイの格好を見て尋ねる。
「お前、行くつもりか……」
「……うん」
ゴマンの言葉にナイは頷き、どうやら彼には気づかれていた様だった。当然と言えば当然の話であり、ドルトンが来たことを知らせたのはゴマンであり、ナイがドルトンに何を頼んでいたのかも見ていたのだろう。
彼はナイの返事を聞いて考え込み、やがて背中に背負っていた家宝の盾を差し出す。その行為にナイは驚くが、ゴマンは盾を差し出しながら告げた。
「これ……貸してやるよ」
「えっ……」
「言っておくけど、やるわけじゃないからな!!あくまでも貸すだけだ、だから絶対に生きて戻って来いよ!!必ず返せよな!!」
「ゴマン……」
盾を差し出してきたナイはゴマンの行動に動揺を隠せず、てっきり彼は止めるためにここへ来たのかと思った。しかし、ゴマンはナイに無理やりに盾を押し付けると、黙って背中を向けた。
「爺さんの仇を討ちに行くんだろ?」
「……うん」
「やっぱりそうか……なら、頑張れよ」
「ゴマン?」
「僕は一緒に行かないぞ……行ってやりたいけど、足手まといになるのは分かり切っているからな」
赤毛熊の強さをよく知っているゴマンは自分がナイに付いて行っても役に立たない事は重々承知していた。正直に言えばゴマンとしてもナイの力になりたい所だが、自分が付いて行っても役に立たないと考えていた。
実際にゴマンが付いてくる事を告げてもナイは彼を置いていく事は間違いなく、赤毛熊との戦いで彼を危険に晒すわけにはいかない。だからこそゴマンは家宝の盾を持ちだし、彼に託して必ず返しに来るように約束させる。
「いいか、絶対にそれを返しに来いよ!!その盾が無くなったら僕が親父に殺されるんだからな!!絶対に……絶対に生きて戻って来いよ!!」
「……分かったよ、必ず戻ってくる。それまではこの盾を借りるね」
「ああ……絶対に爺さんの仇、取って来いよ!!」
ゴマンは言いたいことを告げるとその場から走り去り、最後の言葉は涙声だった。ゴマンもこれがもしかしたらナイとの最後の会話になるかもしれないと予想していたのだろう。
ナイは確かに強くなった。だが、必ず赤毛熊を倒して戻ってくる保証はない。もしかしたらナイもこれが最後のゴマンとの会話かもしれないと思うと、彼の託してくれた盾を強く握りしめる。
(ありがとう、ゴマン……生きて戻ったら必ず返すよ)
盾を背中に背負ったナイは村の外に向けて歩み出し、この時に彼は他の人間に気付かれない様に「無音歩行」と「隠密」を発動させる。見張り役の村人達はナイの存在に気付く様子もなく、そのまま何事もなくナイは村から抜け出した――
――村を出たナイは山に登ろうとしたが、村の外を少し歩くと狼の鳴き声が響き渡り、草原からビャクがこちらに駆けつける光景を目にする。どうやらビャクも別れ際のナイの雰囲気の異変を察していたらしく、山から下りて彼を迎えに来たらしい。
「ウォンッ!!」
「ビャク……来てくれたのか」
「クゥ~ンッ」
ビャクは黙って地面に伏せると、自分の背中に乗り込むように促す。その行為にナイは頷き、どうやらビャクもナイの目的を勘付いていた。
昔は子犬程度の大きさだったが、現在のビャクは大人の馬と同程度の大きさを誇り、しかも馬よりも早く走る事が出来る。たった二年でナイを乗せて走れるほどに成長したビャクは森が存在する方向へ目掛けて移動を行う。
「行こう、ビャク!!」
「ウォオオンッ!!」
ビャクは雄たけびを上げながら草原を駆け抜け、その姿を目撃した草原の魔物達は驚いた様に離れていく。白狼種であるビャクの威圧に圧倒され、あのボアでさえも怯えて逃げ出す。
「フゴォッ!?」
「ギギィッ!?」
「キュイイッ!?」
ナイを乗せて草原を駆け抜けるビャクを見てボア、ゴブリン、一角兎は驚いた様に道を開き、その光景を後目にナイは深淵の森の方向に視線を向ける。ここまで来た以上は引き返す事は出来ず、赤毛熊を倒すまではナイは村に戻るつもりはなかった。
「待ってろよ……赤毛熊!!」
「ウォオオンッ!!」
ナイの気合を込めた怒鳴り声とビャクの咆哮が草原へ響き渡り、魔物達は彼等を恐れて近寄る事も出来なかった――
「……よう、ナイ」
「ゴマン……?」
家の前に立っていたのはゴマンだと気付いたナイは驚き、時刻はもう深夜を迎えているというのにどうして彼が家の前にいるのかと戸惑う。一方でゴマンは真剣な表情を浮かべ、ナイの格好を見て尋ねる。
「お前、行くつもりか……」
「……うん」
ゴマンの言葉にナイは頷き、どうやら彼には気づかれていた様だった。当然と言えば当然の話であり、ドルトンが来たことを知らせたのはゴマンであり、ナイがドルトンに何を頼んでいたのかも見ていたのだろう。
彼はナイの返事を聞いて考え込み、やがて背中に背負っていた家宝の盾を差し出す。その行為にナイは驚くが、ゴマンは盾を差し出しながら告げた。
「これ……貸してやるよ」
「えっ……」
「言っておくけど、やるわけじゃないからな!!あくまでも貸すだけだ、だから絶対に生きて戻って来いよ!!必ず返せよな!!」
「ゴマン……」
盾を差し出してきたナイはゴマンの行動に動揺を隠せず、てっきり彼は止めるためにここへ来たのかと思った。しかし、ゴマンはナイに無理やりに盾を押し付けると、黙って背中を向けた。
「爺さんの仇を討ちに行くんだろ?」
「……うん」
「やっぱりそうか……なら、頑張れよ」
「ゴマン?」
「僕は一緒に行かないぞ……行ってやりたいけど、足手まといになるのは分かり切っているからな」
赤毛熊の強さをよく知っているゴマンは自分がナイに付いて行っても役に立たない事は重々承知していた。正直に言えばゴマンとしてもナイの力になりたい所だが、自分が付いて行っても役に立たないと考えていた。
実際にゴマンが付いてくる事を告げてもナイは彼を置いていく事は間違いなく、赤毛熊との戦いで彼を危険に晒すわけにはいかない。だからこそゴマンは家宝の盾を持ちだし、彼に託して必ず返しに来るように約束させる。
「いいか、絶対にそれを返しに来いよ!!その盾が無くなったら僕が親父に殺されるんだからな!!絶対に……絶対に生きて戻って来いよ!!」
「……分かったよ、必ず戻ってくる。それまではこの盾を借りるね」
「ああ……絶対に爺さんの仇、取って来いよ!!」
ゴマンは言いたいことを告げるとその場から走り去り、最後の言葉は涙声だった。ゴマンもこれがもしかしたらナイとの最後の会話になるかもしれないと予想していたのだろう。
ナイは確かに強くなった。だが、必ず赤毛熊を倒して戻ってくる保証はない。もしかしたらナイもこれが最後のゴマンとの会話かもしれないと思うと、彼の託してくれた盾を強く握りしめる。
(ありがとう、ゴマン……生きて戻ったら必ず返すよ)
盾を背中に背負ったナイは村の外に向けて歩み出し、この時に彼は他の人間に気付かれない様に「無音歩行」と「隠密」を発動させる。見張り役の村人達はナイの存在に気付く様子もなく、そのまま何事もなくナイは村から抜け出した――
――村を出たナイは山に登ろうとしたが、村の外を少し歩くと狼の鳴き声が響き渡り、草原からビャクがこちらに駆けつける光景を目にする。どうやらビャクも別れ際のナイの雰囲気の異変を察していたらしく、山から下りて彼を迎えに来たらしい。
「ウォンッ!!」
「ビャク……来てくれたのか」
「クゥ~ンッ」
ビャクは黙って地面に伏せると、自分の背中に乗り込むように促す。その行為にナイは頷き、どうやらビャクもナイの目的を勘付いていた。
昔は子犬程度の大きさだったが、現在のビャクは大人の馬と同程度の大きさを誇り、しかも馬よりも早く走る事が出来る。たった二年でナイを乗せて走れるほどに成長したビャクは森が存在する方向へ目掛けて移動を行う。
「行こう、ビャク!!」
「ウォオオンッ!!」
ビャクは雄たけびを上げながら草原を駆け抜け、その姿を目撃した草原の魔物達は驚いた様に離れていく。白狼種であるビャクの威圧に圧倒され、あのボアでさえも怯えて逃げ出す。
「フゴォッ!?」
「ギギィッ!?」
「キュイイッ!?」
ナイを乗せて草原を駆け抜けるビャクを見てボア、ゴブリン、一角兎は驚いた様に道を開き、その光景を後目にナイは深淵の森の方向に視線を向ける。ここまで来た以上は引き返す事は出来ず、赤毛熊を倒すまではナイは村に戻るつもりはなかった。
「待ってろよ……赤毛熊!!」
「ウォオオンッ!!」
ナイの気合を込めた怒鳴り声とビャクの咆哮が草原へ響き渡り、魔物達は彼等を恐れて近寄る事も出来なかった――
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