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高校生編side晴人 たくさんの初めてを君と
96.広がる視野
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ランチとデザートを終えると、あっという間に別れの時間だ。
「二人とも元気でな。高校卒業の時にはお祝いに日本に行くよ!」
そう言ったじいちゃんとグランマに手を振って、列車に乗る。
沢山のお土産と、暖かい気持ちを貰った。
寂しいけど、また会える日を楽しみにしよう。
その時には…俺と蓮の事を報告できるかな…。
「え、これ新幹線みたいなもん?45分で着くってよ!」
2時間かけて列車に揺られた往路とは違って、じいちゃんがチケットを取っといてくれた。
これなら相当早くホテルに戻れそうだ。
「マジか。早すぎるから着いたらブラブラしようぜ。」
蓮の提案に乗って、下車してからホテルの反対側の通りを散策する。
手?もちろん…繋いでますよ?
この辺り、クラスメイトも通ったりするんじゃないだろうか。
あ、でもまだ集合時間まで2時間近くあるから大丈夫かな?
そんなのお構いなしの蓮にそのまま離してもらえず歩いてると、男性に声をかけられた。
『✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎!』
「な、何⁉︎蓮、なんて言ってる?」
男同士で手なんか繋いでるから絡まれたんだろうか。
「この人の店、ペアアクセが沢山あるらしい。」
「ペアアクセ?」
「俺達がカップルに見えて勧めてんだろ。」
「カッ…⁉︎」
やたら嬉しそうな蓮が俺の手を引いてお店の人に付いて行く。
そこはハンドメイドのアクセサリーショップだった。
彼はどうやらここの店主らしい。
『✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎!』
「ピアスがオススメらしいけど、晴は開いてないもんな。」
少し離れて他のを物色する蓮。
俺はポカンとしてその場に棒立ち。
だ、だってさ。
ペアのアクセとか…恋人じゃん本当に!
それ以前に、俺達の事ナチュラルに受け入れすぎでは⁉︎
「あ!日本人?こんにちは!」
突然の日本語に驚いて振り返ると、奥の方からブロンドの女性店員が出てきた。
「ワタシ、日本に留学してたの!」
そして俺に近付いて耳打ちする。
「アナタのパートナー、超イケメン!芸能人⁉︎」
俺はブンブンと首を横に振る。
芸能人じゃないし、パ、パートナーじゃないし!
「そうなの?彼はモテるでしょ!」
それは同意です。今度は縦にブンブン頷く。
「ふふっ。だけど彼はアナタが大好きなのね!」
「えっ?」
「さっきからチラチラこっち見てるもの!
ワタシが近付すぎたら『せこむはつどう』ね!
『おしかぷ』だわ!『もえはげそう』!」
この人が留学した時、周りに何かしらのオタクがいたんだろうなぁ…。
って言うか、やっぱり受け入れ早く無い?
「あの…俺達男同士なのにカップルに見えるの?」
「あはは~!何言ってんの?見たら分かるわよ!あ、でもそうか。
日本は同性のパートナーは珍しいのよね?」
彼女が言うには、フランスでは男女でも『結婚』の形を取らない場合が多いそうだ。
「そのための制度もあって、同性のパートナーにも適用されてるわ。だから皆んな堂々としてる。
だって愛に色んな形があるのは当然じゃない!
皆んな違うから美しいのよ!」
力説する彼女に、目から鱗がポロポロ落ちた気分だ。
「ワタシもパートナーとは結婚してないわ。
でも子供もいるわよ!」
指差した先には、店主の男性。
そうか、パートナーとお店をやってるんだなぁ。
日本では『型からはみだす』事を良しとしない傾向があると思う。
だけど、フランスでは認識が違うらしい。
より『個人の自由』が尊重されてるように感じる。
「そりゃあね、全員が賛成って訳にはいかないと思うわ。でも、アナタの人生だもの。他人も周りも関係ないの。満足いくように生きる事が、アナタが生まれてきた意味なのよ!」
ウィンクしながら言われた言葉が心にじんわり広がった。
「それに彼、とっても幸せそう!
「え?」
その視線の先には、店主と何やら話しながらアクセサリーを見る蓮の姿。
それは真剣で、だけどどこか楽しそうでーー。
思わず見惚れてしまう。
「アナタに似合う物を探してるからだって分かってる?」
俺の反応に少し笑いながら、彼女は続けた。
「この仕事してると分かるの。本当に大切な相手に贈る物を選んでる時って、例えどんなに悩んでも幸せそうなのよ。」
それは、蓮が俺を大切に思ってくれてるからで…。
その思いが、蓮を幸せにしてるーーー?
「晴、これどう?」
蓮が持って来たのは、石が付いてないシンプルなデザインのネックレスだった。
「わ、いいね!」
俺の好みに合ってるけど、自分では選ばなそうな物で凄く新鮮。
「じゃあ、決まりな。」
「え⁉︎いや、自分でお金出すって!」
お会計しようとする蓮に慌てる。
「俺があげたいんだよ。」
そう言われて、言葉に詰まった。
蓮が俺のために選んで、買ってくれる事は単純に嬉しい。
だけど、ペアの物を勧められてたのに敢えて違う物を選んだのは…。
きっと、俺が困ると思ったんだろう。
そうだよな。
だって、俺が何も蓮に伝えてないからーー。
「あの、お姉さん……。」
俺の言葉を聞いた彼女はすぐに頷いてくれた。
ご主人に何か囁くと奥へ消えていく。
『✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎!』
今度はご主人が蓮に何か言って、蓮がこっちを見た。
「すぐ近くに地元の人しか知らない教会があるらしい。ステンドグラスが綺麗なんだってよ。」
「へぇ!行ってみようよ!」
●●●
フランスの若い世代は事実婚率が圧倒的に高いそうです。パートナー制度が充実してて、同性同士でも適用されるんだとか。
日本も、もうちょっと進むといいなぁなんて思ったり。(初めて真面目なコメントしました。)
さて、次回予告です。
じぃちゃんからのアドバイスや、異国の空気、考え方に触れた晴人はついに…⁉︎
タイトルは「告白」です。
「二人とも元気でな。高校卒業の時にはお祝いに日本に行くよ!」
そう言ったじいちゃんとグランマに手を振って、列車に乗る。
沢山のお土産と、暖かい気持ちを貰った。
寂しいけど、また会える日を楽しみにしよう。
その時には…俺と蓮の事を報告できるかな…。
「え、これ新幹線みたいなもん?45分で着くってよ!」
2時間かけて列車に揺られた往路とは違って、じいちゃんがチケットを取っといてくれた。
これなら相当早くホテルに戻れそうだ。
「マジか。早すぎるから着いたらブラブラしようぜ。」
蓮の提案に乗って、下車してからホテルの反対側の通りを散策する。
手?もちろん…繋いでますよ?
この辺り、クラスメイトも通ったりするんじゃないだろうか。
あ、でもまだ集合時間まで2時間近くあるから大丈夫かな?
そんなのお構いなしの蓮にそのまま離してもらえず歩いてると、男性に声をかけられた。
『✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎!』
「な、何⁉︎蓮、なんて言ってる?」
男同士で手なんか繋いでるから絡まれたんだろうか。
「この人の店、ペアアクセが沢山あるらしい。」
「ペアアクセ?」
「俺達がカップルに見えて勧めてんだろ。」
「カッ…⁉︎」
やたら嬉しそうな蓮が俺の手を引いてお店の人に付いて行く。
そこはハンドメイドのアクセサリーショップだった。
彼はどうやらここの店主らしい。
『✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎!』
「ピアスがオススメらしいけど、晴は開いてないもんな。」
少し離れて他のを物色する蓮。
俺はポカンとしてその場に棒立ち。
だ、だってさ。
ペアのアクセとか…恋人じゃん本当に!
それ以前に、俺達の事ナチュラルに受け入れすぎでは⁉︎
「あ!日本人?こんにちは!」
突然の日本語に驚いて振り返ると、奥の方からブロンドの女性店員が出てきた。
「ワタシ、日本に留学してたの!」
そして俺に近付いて耳打ちする。
「アナタのパートナー、超イケメン!芸能人⁉︎」
俺はブンブンと首を横に振る。
芸能人じゃないし、パ、パートナーじゃないし!
「そうなの?彼はモテるでしょ!」
それは同意です。今度は縦にブンブン頷く。
「ふふっ。だけど彼はアナタが大好きなのね!」
「えっ?」
「さっきからチラチラこっち見てるもの!
ワタシが近付すぎたら『せこむはつどう』ね!
『おしかぷ』だわ!『もえはげそう』!」
この人が留学した時、周りに何かしらのオタクがいたんだろうなぁ…。
って言うか、やっぱり受け入れ早く無い?
「あの…俺達男同士なのにカップルに見えるの?」
「あはは~!何言ってんの?見たら分かるわよ!あ、でもそうか。
日本は同性のパートナーは珍しいのよね?」
彼女が言うには、フランスでは男女でも『結婚』の形を取らない場合が多いそうだ。
「そのための制度もあって、同性のパートナーにも適用されてるわ。だから皆んな堂々としてる。
だって愛に色んな形があるのは当然じゃない!
皆んな違うから美しいのよ!」
力説する彼女に、目から鱗がポロポロ落ちた気分だ。
「ワタシもパートナーとは結婚してないわ。
でも子供もいるわよ!」
指差した先には、店主の男性。
そうか、パートナーとお店をやってるんだなぁ。
日本では『型からはみだす』事を良しとしない傾向があると思う。
だけど、フランスでは認識が違うらしい。
より『個人の自由』が尊重されてるように感じる。
「そりゃあね、全員が賛成って訳にはいかないと思うわ。でも、アナタの人生だもの。他人も周りも関係ないの。満足いくように生きる事が、アナタが生まれてきた意味なのよ!」
ウィンクしながら言われた言葉が心にじんわり広がった。
「それに彼、とっても幸せそう!
「え?」
その視線の先には、店主と何やら話しながらアクセサリーを見る蓮の姿。
それは真剣で、だけどどこか楽しそうでーー。
思わず見惚れてしまう。
「アナタに似合う物を探してるからだって分かってる?」
俺の反応に少し笑いながら、彼女は続けた。
「この仕事してると分かるの。本当に大切な相手に贈る物を選んでる時って、例えどんなに悩んでも幸せそうなのよ。」
それは、蓮が俺を大切に思ってくれてるからで…。
その思いが、蓮を幸せにしてるーーー?
「晴、これどう?」
蓮が持って来たのは、石が付いてないシンプルなデザインのネックレスだった。
「わ、いいね!」
俺の好みに合ってるけど、自分では選ばなそうな物で凄く新鮮。
「じゃあ、決まりな。」
「え⁉︎いや、自分でお金出すって!」
お会計しようとする蓮に慌てる。
「俺があげたいんだよ。」
そう言われて、言葉に詰まった。
蓮が俺のために選んで、買ってくれる事は単純に嬉しい。
だけど、ペアの物を勧められてたのに敢えて違う物を選んだのは…。
きっと、俺が困ると思ったんだろう。
そうだよな。
だって、俺が何も蓮に伝えてないからーー。
「あの、お姉さん……。」
俺の言葉を聞いた彼女はすぐに頷いてくれた。
ご主人に何か囁くと奥へ消えていく。
『✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎!』
今度はご主人が蓮に何か言って、蓮がこっちを見た。
「すぐ近くに地元の人しか知らない教会があるらしい。ステンドグラスが綺麗なんだってよ。」
「へぇ!行ってみようよ!」
●●●
フランスの若い世代は事実婚率が圧倒的に高いそうです。パートナー制度が充実してて、同性同士でも適用されるんだとか。
日本も、もうちょっと進むといいなぁなんて思ったり。(初めて真面目なコメントしました。)
さて、次回予告です。
じぃちゃんからのアドバイスや、異国の空気、考え方に触れた晴人はついに…⁉︎
タイトルは「告白」です。
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