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高校生編side晴人 たくさんの初めてを君と

97.告白

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二人にお礼を言って、店を出た。

「え⁉︎こんな狭い道入るの?」

お姉さんが描いてくれた地図だと、民家と民家の間を通るようになってる。

『超狭いけど、ここ通り道だから大丈夫!』

日本語のコメントが無かったら迷ってたかも。

その道を抜けると、さらに民家があって。

店の多い通りからは想像もできないくらいのんびりとした住宅街に驚く。

そして、その一画に件の教会があった。

確かに、これは地元の人しか知らないだろうなぁ。

ギィッと軋む扉を開ける。

こぢんまりとした教会には人の気配が無い。

だけどーーー。

「凄い、綺麗…。」

窓に嵌められたステンドグラスが、太陽の光を受けて煌めいてる。

歴史を感じる内部はそれでも清潔で、地元の人に大切にされてるんだと分かった。

日本の格式高い神社で感じる、ピリリとした厳かな雰囲気とは少し違う。

何だろう。上手く言えないけど…。

強いて言うなら、人の愛に溢れた、心が暖かくなるような空間。


「いい所だな。」

蓮の穏やかな声。

その瞳にステンドグラスの輝きが映って見惚れてしまう。

「晴、これ。」

蓮が取り出したのは、さっき買ってくれたネックレス。

前から俺の首に手を回してつけてくれる。

抱きしめられた時みたいに距離が近くて、でも触れてくれないのがもどかしい。

「ん。似合う。」

甘く微笑むその姿に顔が熱くなる。

「…ありがと、蓮。
あのさ、俺からもあるんだ…これ。」

そう言って手渡したのは、さっきのお店の包み。

蓮がお会計してる間にコッソリお姉さんに頼んだそれを、彼女は奥で包んで帰り際に渡してくれた。

「マジで?いつの間に買ってたん?」

驚きながらも嬉しそうな蓮が包みを開いて。

中身を見ると動きを止めた。


長い指で取り出したそれはピアスだ。


しかも、片耳ずつペアで付けるタイプの。

「…俺さ、高校卒業したら穴開けるから…そしたらそれ一緒に付けられるだろ?
…それでその…ピアスホール、蓮に開けて欲しいんだけど…。」

そろりと蓮を伺うと、俺を凝視してる。

「ダ、ダメ?「全然ダメじゃない。俺がやる。」

食い気味に言われて思わず笑ってしまった。

「マジで嬉しいわ…。晴の瞳の色だな。」

青に黒を一滴垂らしたような、ブルーグレーの石のピアス。

それを、俺の目元に近付けて蓮が微笑む。



そう言われて、二色で迷う俺にお姉さんが言った言葉を思い出した。

『これとこれで迷ってるの?だったら絶対こっちね!彼は1000%こっちが嬉しいわ!!
ワタシが保証してあげる!!!』

凄い自信だなぁ、プロは凄いな。

なんて思ってたんだけど…そう言う事だったのか。

てか自分の目の色を贈るって恥ずかしくないか⁉︎


「や、その…」「俺が世界で一番好きな色。」

羞恥から言い訳しようとした俺の言葉を遮った蓮は、本当に嬉しそうで。

「ありがとな、晴。」

そう言って俺の頬を包み込む蓮の手に、思わず自分の手を重ねた。

「晴?」

少し不思議そうなその声すらも、俺の心を震わせる。






なぁ、蓮。

俺はさ、じいちゃんみたいに『俺が幸せにする!』とか自信満々には言えないんだよ。

周りが気になって、悪い方にばっか考えちゃうし優柔不断だし。


それでもさ。

散々迷っても悩んでも、結局蓮が誰よりも大切だって事は変わらなくて。

俺が蓮を笑顔にしたいって強く思うんだ。

俺と一緒に居て蓮がそんな顔してくれるなら、ずっと。

一生でも、お前の側にいたいって思うよ。

それだけで、俺も幸せになれるからーー。






「好きだよ、蓮。」





その目を真っ直ぐ見上げて、告げた。






「待たせてごめん。俺も、蓮が好き。」







全ての感情が抜け落ちたかのような蓮の表情が見えたのは、一瞬。

次の瞬間には、抱きしめられてた。


痛い程に、強く、強くーーー。


苦しいのに、信じられないくらいの喜びが湧いて。

俺も蓮の背中に腕を回した。

ギュッと抱き付いて、心地いい体温と大好きな匂いに身を預ける。

幸せが体中を駆け巡って、甘く溶かされていくみたいだ。

この腕の中にいれば何があっても大丈夫だって、無条件で思える。

蓮は凄いな。

俺も、蓮にとってそう言う存在になりたい。





ふいに体が浮いて、蓮が俺を自分の腕に座らせるように軽々と抱き上げた。

向かい合って見下ろした蓮の顔は、まだ呆然って感じで。

「ヤベェ、嬉しすぎて現実か疑ってる。」

その言葉に少し笑って、蓮の額にキスした。

「実感湧いた?」

「……もう一回。」

見上げてくる蓮に言われて、その首に手を回してまた唇を寄せる。

今度は額じゃなくて、唇にーー。

「どう?」

「……間違いなく人生で一番幸せだって事は分かった。」

俺の背中を支える手に力が篭って。

そのまま、何度もキスを交わす。


晴、晴ーーー。

繰り返し俺を呼ぶ声が、蓮の思いの強さを物語ってるようで。

涙が溢れて止まらなくなった。


「晴、好きだ。俺の恋人になって。」

胸がいっぱいで、ただ頷く事しかできなくて。


だけど、幸せそうに笑ってくれたから蓮には伝わったんだと分かった。

見つめ合って、どちらからともなくまた唇を重ねる。




教会に降り注ぐ優しい光が、俺達を祝福してくれてるようだった。









●●●
やっと…やっとだ!!!
亀より遅い歩みながら、ついに恋人同士になりました。暖かく見守っていただきありがとうございます!!

次回はR18です!!!
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