【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 好きな人が、自分を好きかもしれない。

85.支え

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目が覚めると自分の部屋のベッドの上だった。

何かこんな事前にもあったよなぁ。

ボンヤリした頭で文化祭の日を思い出しながら部屋を出た。

一階へと階段を降りながら、リビングに明かりが付いてる事に驚く。

もう日付が変わろうとしてるのに。

それに聞こえて来るのは父さんと…蓮の声だ。

何でこんな時間まで蓮が家にいるんだろ?

どうしてこうなったんだっけ?


あぁ、そっか。

帰り道で変質者に襲われたんだ。

後ろから抱きつかれて拘束されて、頬を舐められたり身体を触られたりして…


咽せそうな甘ったるい臭いが甦る。

の臭いが家でする訳ない…

そう分かってるのにザッと血の気が引く。

ドタタッ

力が入らなくて、あと3段って所で階段から滑り落ちた。


「晴?大丈夫⁉︎」

慌てた父さんの声。

「ハァ…だ…いじょ…ッ…!」

大して痛い所は無いのに、息が上がって上手く答えられない。

「晴、落ちのか⁉︎」

バタバタと走って来る二人分の足音と共に現れた蓮の姿に、少し呼吸が楽になった。

もっと安心したくて手を伸ばすと、蓮が意志を汲んで抱き締めてくれる。

「どっから落ちた?痛い所は?」

「…ん…3段目くらい。痛いとこは無いから大丈夫。」

蓮の胸に身体を預けると普通に受け答えできた。

「憲人さん、やっぱ警察は明日以降にしよう。」

「うん、そうだね。明日は学校休ませるよ。」

二人の会話もしっかり理解できるし、さっきのは寝起きの貧血みたいなもんだろう。

「父さん、俺大丈夫だよ?明日英語の小テストだから行かないと。」

しっかりした声が出て、父さんも蓮もちょっと驚いた顔をしてる。

「それはダメ。せめて1日は休んで。」

珍しく頑とした父さんの態度に、結局明日は欠席する事になった。



「蓮、本当にありがとう。」

もう大丈夫だからと言う俺に心配そうな目を向けてるけど、蓮は明日も学校だから家でしっかり休んで欲しい。

そう伝えて、渋る蓮を送り出した。


玄関からリビングへ戻ろうとして、異常に身体が冷えてる事に気付く。

「父さん、お風呂……あれ?」


何故か力が入らなくなって壁伝いにズルズルと座りこんだ。

「晴!!大丈夫⁉︎」

父さんが助け起こしてくれるけど、立ち上がれない。

そこで自分が震えてる事に気が付いた。

え?何だこれ?

「蓮君!!」

父さんが玄関に走るのを眺めながら、頭の中は混乱してた。

さっきから身体がおかしい。



フワリと身体が浮いて、思考の波から意識を戻すと俺を抱き上げてる蓮と目が合う。

酷く心配そうなその顔に、大丈夫だと笑おうとしてーー。

「無理すんな。」

痛みを堪えるような蓮の声。

「あんな目にあったんだからショック受けんのは当たり前なんだよ。俺に気使うなっつったろ?」

そう言われて、顔が歪む。

「晴、自分の気持ちだけ考えろ。どうしたい?」

言っていいのかな?

心配も迷惑もかけたくなくて目を逸らしてたけど。

本当は怖くて、蓮が離れると思ったら寂しくて…

「一緒にいて…。」

言葉にしたらポロリと涙が落ちた。

「蓮がいないと、怖い…。」

涙が止まらなくなって泣きながら訴えると、腕の力が強くなった。

「ん。分かった。」

いつの間にか身体に熱が戻ってホッと息を吐く。

「憲人さん、今日晴の部屋に泊まっていい?」

「勿論。僕からもお願い。」

蓮の胸で脱力した耳に二人の会話が聞こえた。



「腹減ってない?」

横抱きで部屋まで連れて来てくれた蓮に聞かれて首を横に振る。

「大丈夫。」

そんなに食欲は無いし、また吐いたら嫌だし。

「晴。」

そんな俺をベッドに降ろした蓮に、手を取って真剣に見つめられる。

「俺には遠慮も我慢もしないって約束して。
お前に遠慮されると俺は寂しい。」

さっきも言ってたけど、本当にそうなの…?

「迷惑じゃない…?」

「迷惑なんて思った事ないって前も言っただろ。
こっちはお前に惚れてんだよ。頼られたら嬉しいし、もっと我儘言って甘えて欲しいって常に思ってる。」

「ほ…⁉︎」

惚れてるって…

いや、好きとは言われたけど…男らしい言い方もカッコ良すぎる!!

ボンッと赤くなった俺に苦笑しながら、蓮が俺の頭を撫でた。

「まだ伝わってなかった?俺が晴を好きだって。」

「う、ううん。それは分かってる…!」

「なら良かった。俺は晴が笑ってるのが幸せなんだよ。」

それは俺も同じだよ。

蓮にはいつも笑ってて欲しいもん。

同じ気持ちなのがとても嬉しい。


「じゃあさ、本当に我儘言っていい?」

大きく頷く蓮に、正直に言う。

「もっとくっつきたい。」

その途端、横抱きで膝の上に乗せられた。

「俺ね、蓮にギュッてされんの好き。ここなら何があっても大丈夫って思えるから。世界一安心できる場所なんだよね。」

ペタリと頬を蓮の胸にくっ付けながら言うと、そこからドクッと音が聞こえた。

「それとね、子供の頃みたいに一緒に寝て欲しい。」

その状態で蓮を見上げると、目元が赤くなってる。

「蓮?」

「ぐっ…俺の理性の限界に挑むのはやめてくれ…。」

「やっぱりダメ?」

良く分かんないけど反応が芳しく無い気がする。

「……仰せのままに。」

了承してくれた事に安堵して、その言い方が何だか可笑しくて俺はクスクス笑った。


それから少しして、俺達は一緒にベッドに身を横たえた。

なんと腕枕ってサービス付きで、安心しきった俺は悪夢を見る事もなく朝までグッスリ眠れて。

翌朝目を覚ました時には随分気持ちが軽くなってた。

ただ、蓮から離れて暫くすると不安感が押し寄せて来る。

そのせいか、蓮は俺を片時も離さなかった。

また倒れたら困るからって家の中では俺を抱き上げて移動。

ご飯の時は蓮の膝の上だし、たまに食べさせてくれたりもする。

お風呂は流石に恥ずかしくて別々だけど、お互いに速攻で出て。

蓮に髪を乾かしてもらって、膝の上でアイスを食べる。

寝る前は軽くマッサージなんかしてくれて、気持ち良さにウトウトした所で就寝。

勿論ベッドは一緒。


立ってる時は蓮に抱き上げられ、座る時は膝の上か脚の間。寝る時は添い寝がデフォルトーー。


うん、めちゃめちゃ甘やかされてる自覚はある。

本当にダメ人間になりそうな程甘やかされてる。


父さんは全然気にしてない顔してるし、夜勤明けで帰って来た母さんはやたら写真を撮りたがった。


そんな生活になってもう3日が経つ。

学校には理由を話してるけど、表向きは体調不良って事にして休んでる。

それに付き合ってくれてる蓮も学校に行けてないから謝ったら『行かなくても問題ねぇよ』って返された。

特進はテストさえ良ければ授業の参加はほぼ自由だ。

『余裕で満点とってやるから心配すんな』と宣った横顔は確信に満ちてて、俺は笑いながら改めて蓮の能力の高さに慄いたのだった。



そして、事件から丁度1週間が経った日。

蓮と並んでベッドに横になりながら、今まで話せなかった事件当日の事を話し始めた。







●●●
次回は話しを聞いた蓮の消毒作業が入ります笑












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