【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎

31.匂い

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柔らかくて暖かい蓮の唇の感触に、思わず目を閉じる。
繰り返されるそれは、まるで俺の冷えた唇に熱を与えてるみたいだ。

触れるだけのキスは凄く優しくて…。
何度目かの後、蓮の唇が離れていくのを寂しいと思ってしまった。


蓮は俺を少し見つめると、立ち上がって頭を抱き寄せた。
座ってる俺の顔は、蓮のお腹の辺りに固定される。

蓮のカーディガンからほのかに香るシトラス系の香水は、俺の大好きな匂いだ。
そう言えば蓮がこの香りを纏い始めた時、いい匂いすぎて俺も纏わり付いてたっけ。



あれは確か中2の頃だったはず。

『はっ⁉︎⁉︎……晴⁉︎⁉︎』

当時からクールボーイだった蓮を思いっきり動揺させてしまったのは、突然俺が蓮に抱き付いたせいだ。

『なんかめっちゃいい匂いするぅ~!』

超好みの匂いに、俺は犬みたいスンスンと蓮の首筋を嗅いでた。

『ちょっ!待て、落ち着け!晴!!』

『なんの匂い?俺これ好き!』

『………好き…?』

『うん!超好き!!』

俺の変態野郎みたいな行為に蓮は相当焦ってたんだよな。
目撃してた遥に、後で揶揄われてたっけ。

蓮はこの日、翔君に貰った香水を初めて付けてたらしい。
あまりに好みの匂いに、俺はそれから暫く、蓮の隣に立つとうっとりしてた。




今にして思うと、俺のそんな言動も面倒くさかったのかもしれないよなぁ。
流行りに疎くてお子様な俺と違って、蓮はその頃からお洒落で大人だったからーー。


蓮はこの香水を気に入ったみたいで、高校生になってからも使い続けてた。

Tシャツを借りた時に少し気付いたけど、今も変えてないらしい。

髪色とかピアスとか、どんどん変わっていく蓮。
元々高かった背はさらに伸びるし。
腹筋割れてるし、ソフトマッチョだし。
顔は一般人なのが信じられない程にイケメンだし。

俺を置いて、どんどん大人になっていくーー。

そんな蓮の中に、俺がまだ知ってる部分が残ってる。
それが嬉しかった。




衝撃と混乱と、冷たい水に浸かった身体の疲れ。
それが、蓮の体温と匂いで解れていく。

俺は何だかぼんやりしてきて、蓮にキスされた事とか、抱き締められてるこの状況をどこか夢みたいに感じていた。

心地良い安心感に、蓮の行動の意味について考える事すら億劫で…。
このまま眠ってしまいそうな程、安心しきって蓮に身体を預けていた。


そんな俺の髪を指で梳きながら、蓮はスマホで誰かに電話してる。

「晴がプールに落ちたんだけど、着替えそっちにあるよな?持って来てくんね?」

蓮は暫くその相手と会話した後、急に舌打ちした。

「ーーー晴。」

いかにも「仕方なく」って感じで腕を緩めた蓮が、俺にスマホを見せる。

「ん…なぁに?」

ちょっと眠気すら感じてた俺が、間伸びした声を出して見上げると、蓮の表情が一瞬抜け落ちた。

「…いやそれは…マジで勘弁……」

何が?と俺が聞くより早く蓮の腕が伸びて来る。
また身体を持ち上げられたと思ったら、蓮がイスに座って、横抱きでその膝に乗せられた。

そのまま身体を寄せてホールドされる。

「濡れちゃうよ?」

「そっちは全然大丈夫だから。お前のそのポヤポヤした状態の方が大丈夫じゃねーんだわ。」

蓮は俺を抱き込んでるけど、何故か視線は逸らしてる。

何でだろ。って言うか、さっきから俺の事ヒョイヒョイ持ち上げてるの凄いな。

平均よりだいぶ軽いけど、俺だって男子なのに…。

どうして俺には筋肉が付かないんだろう。。。





●●●
疑問に思うのそこかい笑
眠気に弱い晴人。夜更かしも苦手なお子様です。





















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