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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎

25.俺の作戦

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文化祭は大盛況だ。
うちのクラスの催しもかなり好評なようで、参加者が多くなってるらしい。

「晴人は隠れる側の配役な!」

目だけ出してるダースベイダーの啓太にそう言われて、俺は人気の無い場所を渡り歩いていた。
目眩し役はめちゃめちゃ人目に触れるけど、隠れる役は静かな場所でコソコソしてればいい。

たまに通りかかる人が、足首まである青いチャイナドレスを纏った俺を見て、ギョッとした顔で見てくる。
写真を取られてる気配も感じて、珍獣にでもなった気分だ。


そろそろ13時だな。
に移動しよう。

俺は人の少ない校舎裏を経由してプールに向かう。

相川さんに指定された待ち合わせ場所は、このプールだった。
ドーム型の室内プールを開放して有料のカフェスペースにしたのが1年の特進クラス。
1時間500円と割り高だけど、暖かくてもし雨が降っても濡れず、買った食べ物を座ってゆっくりと食べられる事から、保護者や卒業生を狙ったらしい。

プールには水を張って、花びらを浮かべたりリゾート風にしてあるそうだ。

ほとんどお金を掛けてないのに売り上げが上がるって言う地主みたいなスタイル。
流石は特進クラス。目の付け所が違うよなぁ。

『13時から13時半までメンテナンスで人がいなくなるから、そこなら落ち着いて話せるよ!』

プールの入り口には「立ち入り禁止」の看板があったけど、相川さんに言われたとおり無視して中に入った。

明るいプールサイドには、至る所にイスとテーブルがあり、床にはヨガマットみたいな物が敷かれた所もある。

ここでゆったり過ごしながら飲み食いしたり、次に行く所を考えるのは確かにいいかもしれない。

うちの父さんとかすぐ疲れたって言うしな。
有料でも大人にとっては有難いスペースだろう。

そんな事を考えていると、奥の方に女子が立っているのが見えた。
彼女がおそらく、今日紹介される相手の木村桃きむらももさんだろう。

緊張した面持ちで俺を見た彼女は、ポカンと口を開けた。

そりゃそうだよね!
今から紹介されるはずの相手が

これが、俺の作戦だ。

あの日、相川さんと別れてから冷静になると俺はこう考えた。

相川さんの友達みたいな人が、俺に興味持ったりするわけなくね?
蓮とか特進の派手グループみたいな人なら分かるけど、地味平凡な俺?ないない!

もしかして、誰かと間違えてる?
あ!!!啓太か⁉︎

啓太は実はモテるんだよなぁ。
優しいし真面目だし、顔も爽やかタイプのイケメンだ。

相川さんの話しだと、剣道の試合で見たって事だし、俺と啓太を間違えてるのかも!


そう思った俺は、約束の時間と自分が「逃走者」役になる時間を敢えて被せた。

そえすれば、相手が間違いに気付いて気まずくなっても「俺も隠れられて有難いから気にしないで!」で済むもんな。

立ち入り禁止の場所にいられるなんて「逃走者」としては願ったり叶ったりだ。

さらに、もし万が一!!
本当に万が一だけど俺の事で合ってたとしても、待ち合わせにチャイナで現れるような奴、幻滅するだろ?

相手から断ってもらうのにうってつけの恰好だ。
もし相川さんが気を回して「一緒に見て回ったら?」なんて言って来たとしても、「仕事中なんだよね」で回避できる。

そう。
相手に気を遣わせず、相手から「ないわぁ。」を引き出す。
男のチャイナとは最強のアイテムなのである!!!



で、だ。

どうも遅れて来るらしい相川さんを待ちつつ、プールサイドに立ったまま、俺たちは自己紹介を始めた。

「萱島晴人です。」
「あ、木村桃です。」
「こんな格好でごめんね。クラスの衣装なんだ。」
「いえ、私こそお仕事中にごめんなさい。」

木村さんは大人しそうな感じで、相川さんとはタイプが違うように見える。
それでも仲がいいんだな。
…ちょっと羨ましい。

「相川さんとは中学からの友達なんだっけ?」
「あ、はい…。そう、です…?」

微妙に疑問系なのは何でだろう。

「あ、その…。私と陽菜ちゃんが友達って言うのは烏滸がましいって言うか…。」

俺の疑問が顔に出てたのか、木村さんが困ったように言う。

「陽菜ちゃんは可愛くて頭が良くて運動もできて完璧だから…。私なんかとは、全然違う世界の人って言うか…。」

それ…。

「超分かる!!!!」

俺の渾身の同調がプールに響き渡った。




●●●
☆本編にはどうでもいい設定☆
チャイナドレスは遥の親友、伊藤の物です。
女性物を難なく着られる晴人。
「肩と胸板がキツイ」と自己申告しましたが、周りからは認められませんでした笑






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