【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 好きって自覚したら失恋したよ

9.決別

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「晴!お・待・た・せ♡あれ、蓮じゃん。」

明るい声と共に翔君が戻って来てくれた。
俺はなんとか握りしめてた拳を解く。

「え⁉︎モデルの翔じゃん!!」

黒崎君達が騒ぎ始める。
雑誌のモデルをしてた翔君は、良く街中でも声をかけられる有名人だ。

「どもー!蓮の兄の翔です。モデルは辞めて今は新米ドクターでーす!」

「マジかよ!蓮何で教えてくんなかったの⁉︎」

ノリノリで挨拶した翔君は、俺の顔を見てすぐに表情を曇らせた。
打って変わった低い声で蓮に詰め寄る。

「晴?……蓮、お前何かした?」

「……別に。もう行こうぜ。」

蓮が周りを促すと、兄弟の不穏な空気を感じたのか黒崎君達はそそくさとその場から離れて行く。
あっという間に人混みに紛れて姿が分からなくなった。

「蓮…。」

その後に続こうとした蓮の腕を引いて引き止める。
このまま行ってしまったら、蓮が俺を疎ましく思ってるんだと認める気がして怖かった。

蓮は立ち止まるとジッと俺を見下ろす。
その目が苛立ちを滲ませていてたじろいだ。


「…マジで似合わねぇ。こんなんやっても無駄だから。」


怒りを孕んだその冷たい言葉は、俺の胸に深く突き刺さった。
視界が滲んで蓮の姿がぼやける。

誰かが息を呑むような気配がしたけど、気にする余裕なんてなかった。
溢れた涙を拭う事もできずに俯く。

俺はただ、少しでも蓮の傍にいる自信が欲しかったんだ。
周りの言葉じゃなくて、蓮と向き合う勇気が欲しかった。

だけど

全部俺の独り善がりだった。
全ては「無駄」なんだから。
蓮は本当に俺と離れたかったんだーー。

「……もういい。分かった。」

震える喉に精一杯力を込めた。
涙は止まらないけど、それでも蓮の顔を見つめる。


髪型を変えたくらいで調子に乗って、キラキラした友達の前で話しかけて来る奴なんて迷惑だよな。
ソイツは、蓮が我慢して付き合ってくれてた事に気付いてもいなかったんだ。

怒りとか悲しみよりも、恥ずかしさが勝った。

俺は、何て馬鹿なんだろうーー。


『蓮は優しいから自分からは言い辛いみたいなの』

甦るのはあの日の言葉。

分かってる、分かってるよ。
だから、もうやめてくれーー。


「蓮、俺達もう一緒にいるのやめよう。
…これからは話しかけなくていいから。」

どうか俺なんかに構わず、傍にいるのに相応しい友達と楽しく過ごして欲しい。


蓮が目を見開いたから、俺の思いは伝わったんだろう。



俺は蓮といた15年、毎日が楽しかったよ。

だから、蓮もそうだって勝手に勘違いしたんだ。

こんな幼馴染でごめんな。

付き合わせて、ごめん。


今までありがとう。



安堵してるのか、喜んでいるのかーー
蓮の顔を見たくなくて背を向けた。


そして俺は、精一杯冷静な声で告げる。

もしかしたら蓮は、ずっと俺にこれを言いたかったのかもな、と思いながら。
優しい蓮が俺を見捨てられないなんて事がないようにーー。



「ーーーさよなら、蓮。」


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