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高校生編side晴人 好きって自覚したら失恋したよ
10.失恋
しおりを挟む人混みに紛れて駆け出す。
走って、走ってーー
祭りの喧騒から離れた公園で地面に身体を打ち付けた。
下駄の鼻緒が切れて転んだらしい。
痛む身体を起こして、近くの木に背中を預けた。
祭りの休憩なのか、夜の公園にはチラホラ人がいる。
ただ、暗いから俺が泣いてる事には気付かれないだろう。
荒い息を吐きながら天を仰いでも、涙は流れ続ける。
胸の奥がジクジクと痛んで、まるで血が出てるみたいだ。
子供の頃、蓮がいないと眠れなかった。
手を繋いで、大丈夫だよって言ってくれる蓮をとても頼りにしていた。
何をやってもトロい俺をいつも助けてくれた。
泣いた時はすぐに駆けつけてくれた。
口は悪いけど、何だかんだ優しい。
俺に何かあると、いつも最初に気付いてくれた。
蓮が笑ってくれるのが嬉しくて。
一緒にいられて楽しくて。
一年前、心の奥に鍵を掛けて封印した思いが迫り上がって来る。
ダメだと思うのに、止まらない。
さっき分かったんだ。
翔君が注目されるのは嬉しくて、隣にいることが誇らしい。
俺が一緒にいることをどう思われるかとか、周りの視線なんて気にならない。
なのに、蓮に関しては過剰に反応してしまう。
優秀な周りと比べられて、蓮に嫌われたくない。
蓮が周りの反応に気が付いて、俺を嫌いになったらどうしよう。
ガッカリされたくない。
他の人の所に行って欲しくない。
一緒にいることを、蓮に望まれたい。
周りに認めてもらいたい。
蓮の一番側にいる権利が欲しい。
胸の中に渦巻くのはドロドロした感情ばかりだ。
遥と付き合ってると知った時の涙の意味。
キスされて少しも嫌じゃなかったこと。
これが、ただの幼馴染に対する思いにしては強すぎることくらい分かってる。
俺は、蓮のことが好きなんだーーー。
だけど、もう一緒にはいられない。
自覚する前に終わってしまった恋心を抱いて、俺は独り踞る。
どうして、気付いてしまったんだろう。
どうして、蓮と遥が付き合ってると知った時に思いを封印したんだろう。
あの時、叩き潰して跡形もなく消し去ってしまえば良かったのにーーー。
閉じた瞼の裏で、桜の花が散った。
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