60 / 83
グランツ帝国
しおりを挟む
「ほう、妾に見せたいモノとは何じゃ?」
グランツ帝国。
世界最強と名高い騎士の国、フスティシア王国を敵対視しているまだ歴史の浅い国である。
しかしその勢力は大きく、領土だけで言えば世界でも屈指の大国だ。
今、グランツ帝国の頂点に君臨しているのは麗しき女帝、クラーラ・モーントシャイン・グランツ。
先代皇帝と、東方から流れてきた妾との間に生まれたクラーラは、普通なら皇帝の地位を継承するなどありえない身分だった。
しかし彼女は支配者として天性の資質を備えていたのだ。
指揮能力、管理能力、先見の明。
彼女はすべての能力がずば抜けており、他の追随を許さない。
東方の血を色濃く受け継いだその艶やかな黒髪は腰にまで届き、ネコ科の猛獣を思わせる金色の瞳が見る者を畏怖させる。
他の王族をすべて蹴散らして皇帝の座を奪い取った彼女がしたことは、グランツ帝国の国力の強化であった。
即ち優れた人材、技術、文化をすべて吸収し国の力とする作業。
優れた人材は生まれの貴賤に関わらず登用し、新たに生まれた歴史の浅い技術を積極的に取り入れる。
彼女の代で、帝国の力は数倍にもふくれあがったといっても過言ではないだろう。
そんな彼女の前に跪く男が一人。
彼は貪欲に技術を求める女帝に、献上したい新たな兵器を持ってきたというのだ。
「ご機嫌麗しゅう陛下。私の名はカルロス・アルキミア、しがない錬金術師です。・・・今回陛下にお目にかけたい兵器というモノはコレでして・・・」
おどおどとした様子でカルロスが取り出したのは、鉄で作られた筒のようなモノだった。
「見たことのないモノじゃの・・・これはどういう兵器なのじゃ?」
女帝の問いに、カルロスの目に光りが宿ったように見えた。少しうわずった興奮したような声でカルロスは答える。
「コレは、戦争の概念を変える兵器でございます!」
「・・・コレは何とも凄まじい」
カルロスが持ち込んだ兵器の威力を測るため、兵達が使う訓練場に来た女帝クラーラは、その兵器の持つポテンシャルの大きさに身震いをした。
カルロスが持ち込んだその兵器は三つ。
それぞれを適当に声をかけた兵士に持たせて10メートルほど先の的へめがけて射撃をさせた。
照準を合わせて引き金を引くと、鉄の塊が飛び出して対象を貫く。
実にシンプル。
しかしその威力は人を屠るに十分すぎるものだったのだ。
「これは良い。今日初めてこの兵器に触れた兵士がこれだけの成果をあげるか・・・是非実践で試してみたいものだな。・・・カルロスと言ったな? この兵器を量産する事は可能か?」
「は、はい。ですが私個人で作業を行うと時間がかかりすぎます」
「その点は心配するな。我が帝国の優秀な人材をつけてやろう。カルロス・アルキミアよ、大義である。お前を我が国の宮廷錬金術師として雇用する」
女帝の言葉に深々と頭を下げるカルロス。
「ふふ、まずは実践で試してみて・・・使えるようなら戦略の幅が大きく広がるな。・・・・・・これで忌まわしきフスティシア王国の老害どもを駆逐できるやもしれん。ところでカルロスよ、この兵器の名前は何という?」
その質問に、カルロスは自慢げに少し胸を張って自身の考えた兵器の名前を口にした。
「はい、この兵器はこれから戦争という概念をことごとく破壊するでしょう。故に ”スマッシャー”と名付けました」
こうして速見の落としたライフル銃は ”スマッシャー”と名を変えてグランツ帝国で量産される事となる。
このスマッシャーが世界の状勢にどのような影響を与えるのかは、まだ誰にもわからない。
◇
グランツ帝国。
世界最強と名高い騎士の国、フスティシア王国を敵対視しているまだ歴史の浅い国である。
しかしその勢力は大きく、領土だけで言えば世界でも屈指の大国だ。
今、グランツ帝国の頂点に君臨しているのは麗しき女帝、クラーラ・モーントシャイン・グランツ。
先代皇帝と、東方から流れてきた妾との間に生まれたクラーラは、普通なら皇帝の地位を継承するなどありえない身分だった。
しかし彼女は支配者として天性の資質を備えていたのだ。
指揮能力、管理能力、先見の明。
彼女はすべての能力がずば抜けており、他の追随を許さない。
東方の血を色濃く受け継いだその艶やかな黒髪は腰にまで届き、ネコ科の猛獣を思わせる金色の瞳が見る者を畏怖させる。
他の王族をすべて蹴散らして皇帝の座を奪い取った彼女がしたことは、グランツ帝国の国力の強化であった。
即ち優れた人材、技術、文化をすべて吸収し国の力とする作業。
優れた人材は生まれの貴賤に関わらず登用し、新たに生まれた歴史の浅い技術を積極的に取り入れる。
彼女の代で、帝国の力は数倍にもふくれあがったといっても過言ではないだろう。
そんな彼女の前に跪く男が一人。
彼は貪欲に技術を求める女帝に、献上したい新たな兵器を持ってきたというのだ。
「ご機嫌麗しゅう陛下。私の名はカルロス・アルキミア、しがない錬金術師です。・・・今回陛下にお目にかけたい兵器というモノはコレでして・・・」
おどおどとした様子でカルロスが取り出したのは、鉄で作られた筒のようなモノだった。
「見たことのないモノじゃの・・・これはどういう兵器なのじゃ?」
女帝の問いに、カルロスの目に光りが宿ったように見えた。少しうわずった興奮したような声でカルロスは答える。
「コレは、戦争の概念を変える兵器でございます!」
「・・・コレは何とも凄まじい」
カルロスが持ち込んだ兵器の威力を測るため、兵達が使う訓練場に来た女帝クラーラは、その兵器の持つポテンシャルの大きさに身震いをした。
カルロスが持ち込んだその兵器は三つ。
それぞれを適当に声をかけた兵士に持たせて10メートルほど先の的へめがけて射撃をさせた。
照準を合わせて引き金を引くと、鉄の塊が飛び出して対象を貫く。
実にシンプル。
しかしその威力は人を屠るに十分すぎるものだったのだ。
「これは良い。今日初めてこの兵器に触れた兵士がこれだけの成果をあげるか・・・是非実践で試してみたいものだな。・・・カルロスと言ったな? この兵器を量産する事は可能か?」
「は、はい。ですが私個人で作業を行うと時間がかかりすぎます」
「その点は心配するな。我が帝国の優秀な人材をつけてやろう。カルロス・アルキミアよ、大義である。お前を我が国の宮廷錬金術師として雇用する」
女帝の言葉に深々と頭を下げるカルロス。
「ふふ、まずは実践で試してみて・・・使えるようなら戦略の幅が大きく広がるな。・・・・・・これで忌まわしきフスティシア王国の老害どもを駆逐できるやもしれん。ところでカルロスよ、この兵器の名前は何という?」
その質問に、カルロスは自慢げに少し胸を張って自身の考えた兵器の名前を口にした。
「はい、この兵器はこれから戦争という概念をことごとく破壊するでしょう。故に ”スマッシャー”と名付けました」
こうして速見の落としたライフル銃は ”スマッシャー”と名を変えてグランツ帝国で量産される事となる。
このスマッシャーが世界の状勢にどのような影響を与えるのかは、まだ誰にもわからない。
◇
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる