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「え? 帰るんですか!」
翌日、図書室で二人にあった私は、突然のことに驚きを隠せなかった。
私達はソファに座って、今後のことを話そうとしたのに、言われた言葉はそれに反することだった。
私は前に座るネイトと隣に座るサイラスに目を向ける。
「ああ、そうだ。元々俺達はアイツを今に引き摺り出したかっただけだ。まぁ、過去に囚われている原因の庭園はなくなったし、アイツに言いたいことも言ったしな」
ネイトがスッキリした表情で言い放つ。
それに続いて、サイラスも私の頭を撫でながら話した。
「そうそう。元々僕達は公爵様になんの期待もしてなかったんだ。言いたいこと言えただけで満足だよ」
「でも、二人はパパと仲直りしてないじゃないですか」
「ははは、そんなの無理だ」
「そうそう、もう僕達の関係はあの時になくなってるんだよ」
二人の笑顔からは後ろ向きな気持ちは微塵も感じない。
でも、本当にそれでいいのだろうか?
親子なのに、こんな関係で?
「心配するな。まずはアンジュのことを話すぞ。これからどうしたいんだ? 今ならアイツだって動揺しているはずだからな。動くなら今だ」
私はネイトの言葉に頷いた。
「はい。お兄様達にはごめんなさい。でも、私はやっぱりパパに、ママを思い出してほしいんです! そうしないと、ママは犯罪者にされちゃうし……」
「そうだね。それなら、公爵様の記憶を取り戻すんだね」
「はい、でも、どうしたら良いかわからなくて……」
私は自信がなくて俯いた。
「兎に角、アイツの目に止まるように行動するのはどうだ?」
「え? でも、顔を見せるなって……」
「お前の顔はアイツには似ていない。髪の色以外はな。と言うことはお前の顔はお前の母親に似てるんだろ?」
「多分、そうです。すぐに親子だって言われます」
「なら、アイツにその可愛い顔を思う存分見せてやるんだな」
「そんなことで、思い出しますか?」
「まあ、やってみろ。その間に俺達もあの事件について調べてみる」
「本当ですか?」
「そうだよ。今まで公爵様に気を使って誰も手をつけられなかったんだよ。でも、僕達も学校にいる年だし、当事者の僕らが話を聞きたいと言って断られることはないよ」
「でも、お兄様達も嫌なことを思い出すと思います」
「いいんだ。俺たちの過去は過ぎたこと。お前の未来はそれよりもずっと大切だ」
私は立ち上がるとネイトに抱きついた。
「ありがとうございます。お兄様」
今度はサイラスの方に回ると抱きつく。
「ありがとうございます、サイラス兄様」
二人はなんだか泣き笑いのような表情で私を見つめる。
「……よし! まずはお前はアイツに、俺たちは事件関係者にコンタクトを取るぞ!」
「「はい!」」
そうして、私達は別れを告げた。
次に会うのは十日後に決めて、二人は寮に帰っていった。
私は二人が乗った馬車が見えなくなるまで手を振った。
ほんの数日の出来事だったのに、本当の兄が出来たようだった。
「楽しかったなぁ」
馬車が見えなくなって手を下ろすと、その手のひらを見つめる。
「兎に角、出来ることをしよう!!」
手をギュッと握りしめると、パパを探して走り出した。
やっぱりパパに会うには、散歩の時間を狙うのが良いはずだ。
私はいつもの時間に、庭園が見えるテラスでパパを待つことにする。
そして、しばらくすると本当にパパはやってきた。
話しかけるのは、ダメだよね。今はネイトのいう通り、私を見てもらうことから始めよう。
私はそう決めると、テラスの中をウロウロと歩き始める。
手を挙げてみたり、ジャンプしてみたり、体操してみたりと動きまくる。
これだけ動けば、きっと目に止まるはずだ。
「はぁはぁはぁ、見えたかな?」
肩で息をしながら、独り言を呟く。
その時、思ってもみない声が聞こえた。
「何が見えたのだ?」
「あっ、パパ…………」
私は肩をすくめて下を向いた。
まさかここに来るとは思ってもみなかった。
ほんの少し見てくれたら良いなと思っただけなのだ。
「ここで何をしている。怪しい踊りをしていたな。お前も犯人グループの一員で連絡でも取っていたのではないのか」
冷たい声に無表情で言われると体が固まってしまう。
声を出そうとしても何も言えない。
きっと、怒っている。
庭園を壊したのも私だし……
「……ごめ……」
「やはりな。謝るような事をしていたというわけか」
「ちが……」
「顔を見せるなと言ったな。もうすぐお前の母親も見つかるだろう。やっと犯人の顔が拝めるというものだ。お前もそれまでは大人しくしていろ。息子達を味方につけたようだが、全く油断も隙もないな」
そういうと、私の返事も待たずにパパはスタスタと歩いていってしまった。
私は驚いたのと、悔しかったのとが混ざって感情が昂る。
「ひ、酷いよ。なんであんなこと言うの? ママが犯人だってなんで決めつけるの? お兄様達の気持ちも知らないくせに!!」
私は既に遠くなったパパの後ろ姿に向かって叫んだ。
「パパの馬鹿!!!!」
その声は何もない庭園に響いただけだった。
翌日、図書室で二人にあった私は、突然のことに驚きを隠せなかった。
私達はソファに座って、今後のことを話そうとしたのに、言われた言葉はそれに反することだった。
私は前に座るネイトと隣に座るサイラスに目を向ける。
「ああ、そうだ。元々俺達はアイツを今に引き摺り出したかっただけだ。まぁ、過去に囚われている原因の庭園はなくなったし、アイツに言いたいことも言ったしな」
ネイトがスッキリした表情で言い放つ。
それに続いて、サイラスも私の頭を撫でながら話した。
「そうそう。元々僕達は公爵様になんの期待もしてなかったんだ。言いたいこと言えただけで満足だよ」
「でも、二人はパパと仲直りしてないじゃないですか」
「ははは、そんなの無理だ」
「そうそう、もう僕達の関係はあの時になくなってるんだよ」
二人の笑顔からは後ろ向きな気持ちは微塵も感じない。
でも、本当にそれでいいのだろうか?
親子なのに、こんな関係で?
「心配するな。まずはアンジュのことを話すぞ。これからどうしたいんだ? 今ならアイツだって動揺しているはずだからな。動くなら今だ」
私はネイトの言葉に頷いた。
「はい。お兄様達にはごめんなさい。でも、私はやっぱりパパに、ママを思い出してほしいんです! そうしないと、ママは犯罪者にされちゃうし……」
「そうだね。それなら、公爵様の記憶を取り戻すんだね」
「はい、でも、どうしたら良いかわからなくて……」
私は自信がなくて俯いた。
「兎に角、アイツの目に止まるように行動するのはどうだ?」
「え? でも、顔を見せるなって……」
「お前の顔はアイツには似ていない。髪の色以外はな。と言うことはお前の顔はお前の母親に似てるんだろ?」
「多分、そうです。すぐに親子だって言われます」
「なら、アイツにその可愛い顔を思う存分見せてやるんだな」
「そんなことで、思い出しますか?」
「まあ、やってみろ。その間に俺達もあの事件について調べてみる」
「本当ですか?」
「そうだよ。今まで公爵様に気を使って誰も手をつけられなかったんだよ。でも、僕達も学校にいる年だし、当事者の僕らが話を聞きたいと言って断られることはないよ」
「でも、お兄様達も嫌なことを思い出すと思います」
「いいんだ。俺たちの過去は過ぎたこと。お前の未来はそれよりもずっと大切だ」
私は立ち上がるとネイトに抱きついた。
「ありがとうございます。お兄様」
今度はサイラスの方に回ると抱きつく。
「ありがとうございます、サイラス兄様」
二人はなんだか泣き笑いのような表情で私を見つめる。
「……よし! まずはお前はアイツに、俺たちは事件関係者にコンタクトを取るぞ!」
「「はい!」」
そうして、私達は別れを告げた。
次に会うのは十日後に決めて、二人は寮に帰っていった。
私は二人が乗った馬車が見えなくなるまで手を振った。
ほんの数日の出来事だったのに、本当の兄が出来たようだった。
「楽しかったなぁ」
馬車が見えなくなって手を下ろすと、その手のひらを見つめる。
「兎に角、出来ることをしよう!!」
手をギュッと握りしめると、パパを探して走り出した。
やっぱりパパに会うには、散歩の時間を狙うのが良いはずだ。
私はいつもの時間に、庭園が見えるテラスでパパを待つことにする。
そして、しばらくすると本当にパパはやってきた。
話しかけるのは、ダメだよね。今はネイトのいう通り、私を見てもらうことから始めよう。
私はそう決めると、テラスの中をウロウロと歩き始める。
手を挙げてみたり、ジャンプしてみたり、体操してみたりと動きまくる。
これだけ動けば、きっと目に止まるはずだ。
「はぁはぁはぁ、見えたかな?」
肩で息をしながら、独り言を呟く。
その時、思ってもみない声が聞こえた。
「何が見えたのだ?」
「あっ、パパ…………」
私は肩をすくめて下を向いた。
まさかここに来るとは思ってもみなかった。
ほんの少し見てくれたら良いなと思っただけなのだ。
「ここで何をしている。怪しい踊りをしていたな。お前も犯人グループの一員で連絡でも取っていたのではないのか」
冷たい声に無表情で言われると体が固まってしまう。
声を出そうとしても何も言えない。
きっと、怒っている。
庭園を壊したのも私だし……
「……ごめ……」
「やはりな。謝るような事をしていたというわけか」
「ちが……」
「顔を見せるなと言ったな。もうすぐお前の母親も見つかるだろう。やっと犯人の顔が拝めるというものだ。お前もそれまでは大人しくしていろ。息子達を味方につけたようだが、全く油断も隙もないな」
そういうと、私の返事も待たずにパパはスタスタと歩いていってしまった。
私は驚いたのと、悔しかったのとが混ざって感情が昂る。
「ひ、酷いよ。なんであんなこと言うの? ママが犯人だってなんで決めつけるの? お兄様達の気持ちも知らないくせに!!」
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その声は何もない庭園に響いただけだった。
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