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支配の崩壊
第10話
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校外学習の前日、班を決めることになった。
真後ろの席に座る理樹の方へ振り返りすぐに誘った。
「理樹、一緒に班組もうぜ」
「いいよ。あ、孝彦も入れていい?」
予想通りだ。
拓哉の様子を見ると、すぐに近くの班の子と組んでいたので、やっぱり人気者だなと思った。
他の子たちも徐々に決まっていく。僕はクラスの中央で、だるそうに目を瞬しばたたかさせている女の子に声をかけた。
「美来さん。よかったら、同じ班になってくれない?」
小学校の頃なら、仲の良くない女子生徒に気軽に話すのは考えられないが、今の僕の中身は教師だ。
美来はこちらを向き、頭を下げる。
「ありがとう…」
小さな声でそう言った。
美来は、見た目も中身もすごく大人びている。身長はそんなに大きくはないが、顔立ちも整っていて小学生には見えない。立ち振る舞いなんかも他の子に比べてとても落ち着いた様子だった。クラスメイトと話しているところを見たことがないが、クラスに一人でいる事を全く気にしている様子はない。いつも外から全体を俯瞰しているようだった。
その後は、適当な女の子に声をかける。同じ班になったのは、今年の女子の学級委員の渡辺真美と、その友人の須藤明美だった。
二人は、真面目な性格で、とてもじゃないけど僕と一緒に石神に逆らうような子ではない。真美の方は、一度石神に怒られないように媚び諂っていた。しかし、そんな事が通用する先生でもなく、「性根が腐っている」と叱られていた。
明美の方は友達も多く、真美とも仲がいい。この二人なら揃って報告してくれるだろう。
明日が楽しみだった。未来の僕は残業で、目の前のことで精一杯だったが、目標に向かって計画を立てることは、なんだか楽しかった。それがたとえ、自分の担任の先生を辞めさせようと言う計画であっても。
明日の学校の準備をしていると、優香が部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん。算数教えて!」
「いいぞー」
優香は三年生になってから、よく宿題を見せにくる。少し難しいのか、いつも空欄が二、三問ほど空いていた。
「三年生って難しいんだよ。お兄ちゃん、六年生ってすごいね!」
「優香も勉強すればなれるからね」
ふと、いじめが発覚した時を思い出した。
僕が中学校に上がり、助けてくれる人は誰もいなかったのだろう。事実を知ったのは、優香と一番仲の良かった、瑠花が家に訪ねてきたときだった。彼女は僕の家の前で泣いていて、誰かが帰ってくるのを待っていた。父も母も家を留守にしていたので、僕が応対した。
彼女も一緒になって優香を無視した。最初はそれを謝りに来たのだけど、事実を知った僕は、すぐに主犯の女の子の家を聞いていた。
その子の家に向かう途中、学校から帰ってきた優香に遭遇し、僕は引き留められた。
その時の優香の顔を忘れたことは、今まで一度もない。
「お兄ちゃん?」
優香が不思議そうにこちらを見ている。
「どーした?」
優香の頭を撫でた。
「お兄ちゃん最近楽しそうだったんだけど、今ちょっとかなしいお顔したでしょ。」
この頃の優香はよく僕を見ている。すぐに表情や異変に気づかれてしまう。
「してないよ」
「したよ!」
「してないって」
僕の頬を優香は摘む。
「じゃあ、最近楽しそうなお顔なのは、良いことあったから?」
「それは…、なんでそう思うの?」
「だって、前のお兄ちゃん、かなしいお顔よくしてたから…」
本当によく見ている。
僕は一年半もの間、優香がいじめられていることに気づけなかったのに。
「優香が楽しそうだからだよ」
「優香は楽しいよ!」
必ず優香は守らなくてはいけない。なんとしても。
真後ろの席に座る理樹の方へ振り返りすぐに誘った。
「理樹、一緒に班組もうぜ」
「いいよ。あ、孝彦も入れていい?」
予想通りだ。
拓哉の様子を見ると、すぐに近くの班の子と組んでいたので、やっぱり人気者だなと思った。
他の子たちも徐々に決まっていく。僕はクラスの中央で、だるそうに目を瞬しばたたかさせている女の子に声をかけた。
「美来さん。よかったら、同じ班になってくれない?」
小学校の頃なら、仲の良くない女子生徒に気軽に話すのは考えられないが、今の僕の中身は教師だ。
美来はこちらを向き、頭を下げる。
「ありがとう…」
小さな声でそう言った。
美来は、見た目も中身もすごく大人びている。身長はそんなに大きくはないが、顔立ちも整っていて小学生には見えない。立ち振る舞いなんかも他の子に比べてとても落ち着いた様子だった。クラスメイトと話しているところを見たことがないが、クラスに一人でいる事を全く気にしている様子はない。いつも外から全体を俯瞰しているようだった。
その後は、適当な女の子に声をかける。同じ班になったのは、今年の女子の学級委員の渡辺真美と、その友人の須藤明美だった。
二人は、真面目な性格で、とてもじゃないけど僕と一緒に石神に逆らうような子ではない。真美の方は、一度石神に怒られないように媚び諂っていた。しかし、そんな事が通用する先生でもなく、「性根が腐っている」と叱られていた。
明美の方は友達も多く、真美とも仲がいい。この二人なら揃って報告してくれるだろう。
明日が楽しみだった。未来の僕は残業で、目の前のことで精一杯だったが、目標に向かって計画を立てることは、なんだか楽しかった。それがたとえ、自分の担任の先生を辞めさせようと言う計画であっても。
明日の学校の準備をしていると、優香が部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん。算数教えて!」
「いいぞー」
優香は三年生になってから、よく宿題を見せにくる。少し難しいのか、いつも空欄が二、三問ほど空いていた。
「三年生って難しいんだよ。お兄ちゃん、六年生ってすごいね!」
「優香も勉強すればなれるからね」
ふと、いじめが発覚した時を思い出した。
僕が中学校に上がり、助けてくれる人は誰もいなかったのだろう。事実を知ったのは、優香と一番仲の良かった、瑠花が家に訪ねてきたときだった。彼女は僕の家の前で泣いていて、誰かが帰ってくるのを待っていた。父も母も家を留守にしていたので、僕が応対した。
彼女も一緒になって優香を無視した。最初はそれを謝りに来たのだけど、事実を知った僕は、すぐに主犯の女の子の家を聞いていた。
その子の家に向かう途中、学校から帰ってきた優香に遭遇し、僕は引き留められた。
その時の優香の顔を忘れたことは、今まで一度もない。
「お兄ちゃん?」
優香が不思議そうにこちらを見ている。
「どーした?」
優香の頭を撫でた。
「お兄ちゃん最近楽しそうだったんだけど、今ちょっとかなしいお顔したでしょ。」
この頃の優香はよく僕を見ている。すぐに表情や異変に気づかれてしまう。
「してないよ」
「したよ!」
「してないって」
僕の頬を優香は摘む。
「じゃあ、最近楽しそうなお顔なのは、良いことあったから?」
「それは…、なんでそう思うの?」
「だって、前のお兄ちゃん、かなしいお顔よくしてたから…」
本当によく見ている。
僕は一年半もの間、優香がいじめられていることに気づけなかったのに。
「優香が楽しそうだからだよ」
「優香は楽しいよ!」
必ず優香は守らなくてはいけない。なんとしても。
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