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淡雪、拘束からの犯人探し
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「淡雪様、来栖家からの使用人や侍女はこれより直ちに拘束させていただきます。無論、淡雪様も同様。淡雪様達の疑いが晴れることを祈ります」
光顕により扉が冷たい音を立てて閉じられた。
僕はしばしの間、ぼんやりと立っていた。
小一時間も絶った頃だろうか、窓に吊るしていた風鈴がチリンと鳴った音で僕は我に返った。
フラフラと椅子に腰を下ろした。
考えを巡らせる。
直江の殺害を企み、地利のお酒には毒が入っていた。
直江の手元には残り少なくなった地炉利があった。
それに気づいた僕は、僕用に用意されたお酒だけど飲まないから棄てられると思い、勿体ない精神を発揮して直江にそのお酒を注いだ。
直江の周りには僕と家臣の蒲原しか居らず、僕達の辺りに怪しい者はいなかった。
この状況で果たして直江に毒を飲ませることのできる人物は・・・
サァーっと一気に血の気が引いた。
だぁーっ、それって、どう転んだところで、僕が第一容疑者じゃないか。
状況だけで一発アウト!だよ。
詰んだ・・・完全に詰んだ・・・
円満離縁の出戻りどころか、ご遺体となって無言の帰宅じゃん。
やだよ~そんなの。
こうなったら犯人を見つけて、僕の容疑を晴らすしかない。
時系列を事細かに書き出して検証しよう。
紙とペンは・・・
徐ろに立ち上がり、脇机の引き出しを片っ端から開け、中をがさごそと漁る。
良家の子女なんて侍女や使用人がすべてを準備万端整えてくれるから
「あれを」
といえば、目的の物が用意されているのが普通なんで、はっきりいって、どこに何があるかなんて知らない。整理整頓なんかも侍女の役目だし。
あれ?こんなところにあの時の発明品がある。
冬星が来たっていうんで、嫌味を言われる前に突っ込んだんだな、きっと。
これは画期的で実用的なものだと思うんだ、うん。
僕はその小瓶を机の上に置いた。
まったく、どこに置いてあるんだよ。
引き出しの中のものを次々に床に落とし探す。
奥に手を入れたとき、紙らしきものに触れた。
取り出してみるとそれは手紙のようだった。
ご丁寧に隠すようにしてあった手紙。
さぞやひと目についたらマズいものなんだろう。そういうのって見たくなるのが人の性だよね。
僕は状況も忘れ、手紙を開いた。
もしかしたら、直江の人には知られたくない若気の至りの恥ずかしい詩とかだったら笑えるよな・・・
読んでいくうちに僕の顔色がだんだんと変わるのを感じた。
“父上、鬼元帥の名の通り、直江様は気に食わないものは蔑み、時にはその凶刃にて斬り捨てるのです。私はその狂気がいつ己に向かうかと思うと、一挙手一投足が朝夕に心を動揺させ、心細く、胸が潰れる思いです。都筑も晴も頼りなく、このままでは私の命は朝露の如く散ってしまうでしょう。故に私はその凶刃に倒れる前にと直江様に毒を盛りました。けれど、その罪の重さを思うに我が身が恐怖で震え、決して、許されることではないとわかっております。それ故に我が命を以て償います。来栖淡雪”
手紙を持つ手がぶるぶると震え、冷や汗ともあぶら汗ともつかない汗がどっと吹き出した。
僕は読み間違いか勘違いじゃないかと、我が目を疑った。
こ、こんな手紙書いた覚えなんかないが、筆跡はどう見ても僕の字に酷似している。
そもそも書いた覚えなんか皆無だし、こんな書き方はしない。
書くとしたら、
“父上、噂には違わず、西蓮寺はヤバい。どれだけヤバいかというと、間違いなく目つきだけで軽く二、三人は殺せると推測できる。これは一刻も早く、過失や瑕疵を見つけて円満に離縁にもっていかないと、いつ背後からバッサリ殺られるかわかったもんじゃない。生きて来栖家に出戻るためにも策を巡らすから後方支援をよろしく頼むね。淡雪”
と書く。
まぁ、比較すると自分でもなんだかなぁ~と考えなくもないけどさ。
僕という人物を知らない人間が、ぱっと見ただけでは、これは僕が書いたと思われても仕方がない。
つまり、直江を毒殺しようとした犯人は僕ですという告白書で物的証拠・・・
あまりといえばあまりのことに、目の前が一瞬暗くなり、貧血を起こして倒れるところだった。
「淡雪様、どうなされました?」
光顕により扉が冷たい音を立てて閉じられた。
僕はしばしの間、ぼんやりと立っていた。
小一時間も絶った頃だろうか、窓に吊るしていた風鈴がチリンと鳴った音で僕は我に返った。
フラフラと椅子に腰を下ろした。
考えを巡らせる。
直江の殺害を企み、地利のお酒には毒が入っていた。
直江の手元には残り少なくなった地炉利があった。
それに気づいた僕は、僕用に用意されたお酒だけど飲まないから棄てられると思い、勿体ない精神を発揮して直江にそのお酒を注いだ。
直江の周りには僕と家臣の蒲原しか居らず、僕達の辺りに怪しい者はいなかった。
この状況で果たして直江に毒を飲ませることのできる人物は・・・
サァーっと一気に血の気が引いた。
だぁーっ、それって、どう転んだところで、僕が第一容疑者じゃないか。
状況だけで一発アウト!だよ。
詰んだ・・・完全に詰んだ・・・
円満離縁の出戻りどころか、ご遺体となって無言の帰宅じゃん。
やだよ~そんなの。
こうなったら犯人を見つけて、僕の容疑を晴らすしかない。
時系列を事細かに書き出して検証しよう。
紙とペンは・・・
徐ろに立ち上がり、脇机の引き出しを片っ端から開け、中をがさごそと漁る。
良家の子女なんて侍女や使用人がすべてを準備万端整えてくれるから
「あれを」
といえば、目的の物が用意されているのが普通なんで、はっきりいって、どこに何があるかなんて知らない。整理整頓なんかも侍女の役目だし。
あれ?こんなところにあの時の発明品がある。
冬星が来たっていうんで、嫌味を言われる前に突っ込んだんだな、きっと。
これは画期的で実用的なものだと思うんだ、うん。
僕はその小瓶を机の上に置いた。
まったく、どこに置いてあるんだよ。
引き出しの中のものを次々に床に落とし探す。
奥に手を入れたとき、紙らしきものに触れた。
取り出してみるとそれは手紙のようだった。
ご丁寧に隠すようにしてあった手紙。
さぞやひと目についたらマズいものなんだろう。そういうのって見たくなるのが人の性だよね。
僕は状況も忘れ、手紙を開いた。
もしかしたら、直江の人には知られたくない若気の至りの恥ずかしい詩とかだったら笑えるよな・・・
読んでいくうちに僕の顔色がだんだんと変わるのを感じた。
“父上、鬼元帥の名の通り、直江様は気に食わないものは蔑み、時にはその凶刃にて斬り捨てるのです。私はその狂気がいつ己に向かうかと思うと、一挙手一投足が朝夕に心を動揺させ、心細く、胸が潰れる思いです。都筑も晴も頼りなく、このままでは私の命は朝露の如く散ってしまうでしょう。故に私はその凶刃に倒れる前にと直江様に毒を盛りました。けれど、その罪の重さを思うに我が身が恐怖で震え、決して、許されることではないとわかっております。それ故に我が命を以て償います。来栖淡雪”
手紙を持つ手がぶるぶると震え、冷や汗ともあぶら汗ともつかない汗がどっと吹き出した。
僕は読み間違いか勘違いじゃないかと、我が目を疑った。
こ、こんな手紙書いた覚えなんかないが、筆跡はどう見ても僕の字に酷似している。
そもそも書いた覚えなんか皆無だし、こんな書き方はしない。
書くとしたら、
“父上、噂には違わず、西蓮寺はヤバい。どれだけヤバいかというと、間違いなく目つきだけで軽く二、三人は殺せると推測できる。これは一刻も早く、過失や瑕疵を見つけて円満に離縁にもっていかないと、いつ背後からバッサリ殺られるかわかったもんじゃない。生きて来栖家に出戻るためにも策を巡らすから後方支援をよろしく頼むね。淡雪”
と書く。
まぁ、比較すると自分でもなんだかなぁ~と考えなくもないけどさ。
僕という人物を知らない人間が、ぱっと見ただけでは、これは僕が書いたと思われても仕方がない。
つまり、直江を毒殺しようとした犯人は僕ですという告白書で物的証拠・・・
あまりといえばあまりのことに、目の前が一瞬暗くなり、貧血を起こして倒れるところだった。
「淡雪様、どうなされました?」
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