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1章スローライフ準備編

4 魔法の美しさ

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「違う。そんなんじゃスライムにも喰われるぞ」
あれから数日。鬼のような特訓が毎日繰り広げられている。
これは路地裏リンチよりきついのではないだろうか。

ちなみにだが、鬼のような特訓で倒した魔物の魔石や素材はなぜか全て換金し僕にくれている。
宿代も出さなきゃ行けないから助かるのだが、明らかに僕一人では倒せなかった魔物のお金も含まれている。

「そういやお前、魔法は使えるのか?」
一応水と火が使えることは転生した直後に確認した。ただ念じたら出ただけだが。

「一応、少しだけなら」

「使ってみろ」

「えっ、そんな魔物倒すとか無理「使え」ヒィッ」

相変わらずすごい威圧だ。

仕方がなく左手からマッチみたいな火を、右手からちょろちょろと水を出す。

「は?お前二つも、しかも同時に使えるのかよ。オレなんて、」
二つ同時に使えるのは珍しいのだろうか?
アセナの耳が外に向き折れた。 しょんぼり?

「あ、おいそこのスライム焼いてみろ」

そんな火力出したことないし、そもそも出せるのだろうか?

火を浮かべ、逃げていくスライムに近づけるが、明らかにサイズが足りない。

「違う。もっと大きくしろ」
大きく?大きくってどうやるんだ?

「魔力を込めるんだよ、風使えるなら風で無理矢理大きくしてもいい」

言われたことはわからないが、神経を研ぎ澄まして炎に流れているものを感じ取る。


多分これが魔力だな。


それをもう少し勢いを付けて流すイメージをする。

お?確かに炎がメラメラと大きくなっていく。
これをスライムに投げつける。

「ふん、そんなチマチマやってんじゃねえ!だからお前はいつまで経ってもへっぽこなんだよ」
燃えてカスになったスライムから魔石を取り出し、手の上で投げながらそう言ってくる。

「俺のブーツにその魔法をくれ。お前のカスみてぇなその不安定な魔力を全力で打ち込めばいい」
まだ駆け出しなので馬鹿にされたのは仕方がないが悔しい。そのブーツの中身まで燃やしてやろうという意気込みでたんまりと魔力を込めて、白金のようなブーツに打ち込む。

すると魔法が吸い込まれるようにブーツの赤く輝く石に吸い込まれていった。効かない!だと!?っていう茶番は外には出さず、考察する。魔石だろうか?

「こうやるんだよ!」
いつのまにか周りを見ればスライムを筆頭とする雑魚モンスターに取り囲まれていた。


足で薙ぎ払うかのように一掃する。



その時、まるでファイアーパフォーマンスでもみているかのような気持ちになった。

口にこそ出なかったが、綺麗だと思った。


そして、ただ綺麗なだけではない。東側にいた魔物はほとんどアセナが薙ぎ払った。この制御と魔法の撃ち方、すごい実力だった。

「そっちはお前がやってみろ」

今のを再現しろというアセナはスパルタだ。

でも、僕もあの一瞬で憧れてしまった。

憧れてしまったからにはやらなければ。

右手に魔力を込める。魔法を練っていないのにキラキラと輝き始める。これは可視化された魔力か、周りに潜む精霊たちか。いろいろ説があるらしいが、どうでもいい。

「燃えろぉぉぉぉ!」
雑魚魔物相手に馬鹿馬鹿しいかもしれないが、気合を入れた魔法を辺り一面にばら撒いた。

一瞬で炎の海が的確に魔物だけを焼いていく。逃げゆく魔物すらも迫り来る火には敵わない。

アセナほどの美しさはなかったが、持っている魔力の大半を注ぎ込んで、大きさにものを言わせる。

「マジかよ」
そうアセナが呟いた声は轟音にかき消されて僕の耳には届かなかった。
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