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1章スローライフ準備編

3 怖い獣人

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「これにて依頼は完了でございます」

スローライフのためにやってきたこの村で、僕は毎日せっせと冒険者稼業を頑張っています。

はじめての魔物に怯える、、、なんてこともなく普通に討伐もできている。昔祖父に鹿や猪を「ジビエ料理じゃ!はっはっ」とか言いながら捌かされた経験が効いているのだろう。

はした金ではあるが着々とお金も貯まっていっている。
そろそろ村の大工のオリさんと相談しながら村の中心から少し離れたところに家を建てたいところではある。


「おい、そこの旅人風情。いや冒険者風情か?今は」

旅人って僕のことだろうか?

ギルドから出ようとした時、後ろからなんともトラブル臭のする呼び止め方で誰かに呼び止められた。

この村ではなるべく穏便に過ごしたい。

波風立てずに済まそう、そう思いながら振り返るとそこにはこちらを睨んでいる、粗暴そうな、、、でも美形、がいた。
そして頭に耳、後ろには尻尾がついている。コスプレなんか疑うまでもなくリアルな獣人とわかった。
狼だろうか?

「はい、、、」
風情で間違いない。旅人でもなければ冒険者も一時凌ぎなのだから。

「お前、最近この村に来て、低ランクのクエストばかり優遇してもらって。調子乗ってんのか?あ゛?」

「ひっ、すみません」

「あ?」

所詮はぬくぬくとブラック企業で生きていた日本人だ。この村のローカルなルールも冒険者としての当たり前も知らない。

「この村にきたばかりで、冒険者なんて今までやったこともなくて。ギルドのお姉さんには優しくしていただいてたのですが、、、迷惑をかけるわけにいかないと思って、誰にも右左を聞けなくて、、、その、本当に申し訳ないです」
ここにきて言い訳は逆効果と分かっている。

でも威圧された恐怖感がより言い訳を加速させる。

村に来る時に良くしてくれたラルフとオスカーもたまにすれ違ったりして、「困っていることはないか?」と聞いてくれたが相手も冒険者。依頼などで忙しそうにしている姿をみると、到底初心者の僕に一から教えてくれなんて言えない。

でもよく考えたら開き直れそうだ。

村なんて狭いコミュニティーなんだから強そうなお前が責任もって
「教えろや」
偉そうにするなら。そうだよな?

「ああ゛?今なんつった?」
ついボソッと口走ってしまったようだ。

「あ、いや、その」

「今なんつった?って聞いてんだよ。ガキが」

ことを穏便に?もういいや。殴られても。僕はいつもそういう性格だから結局嫌われる、、、わかってるんだけど、、、

「教えろって言ったんだよ」

周りの人は何言ってるんだ馬鹿と言っているだろう。

「、、、」
周りにいたベテラン風の冒険者のおじさんたちもマジかよアイツなどと言っているのが聞こえた。目の前のこの獣人より経験豊富そうなのになんでそんなにおびえているのだろう?

獣人特有の野生の獣のような鋭い目に射抜かれ、自分もおびえることとなる。
草食動物が天敵に狙われたかのような感覚に陥り、いまさらになって謝罪するべきだと思い、震える声をなんとか張って謝る。


「すみm「チッ、こいよ」」
なんてことを言ってるんだと自嘲しようと思ったが遮られた。

「えっ?」

「オレが教えるっつってんだ」

人前で特にギルドなんかで殴ったり殺したりすることはまずいから、教えるという建前でどこか人気のないところに連れていかれるか、、、

完全にそう思った。
「あっあの、、、」
僕の不安混じりの視線に気がついたのか受付嬢が何か言ってくれそうだ。

「あ?なんか文句あるか?クリスティーナ。依頼も完了したし、オレはしばらくヒマするんだからいいだろ?」


「は、はい、、、」

返事をすることなく無理矢理腕を掴まれてギルドから引っ張り出された。

腕が痛くならないように引っ張り出してくれたことには後から気づいた。

「あの、、、」

「なんだよ」

「名前、「アセナ。お前がまず名乗れよ」」

「アキトです」

アセナさんか。

「あのどうして、、、僕みたいなのと一緒にいたら、冒険者としての、、、」仕事もそうだが評判も、、、そして何とか気をそらして解放を。

「知らねーよ。お前みたいなちんちくりんがちょこまかちょこまかとされて死んだらウゼェんだよ」
あれ?意外と本気で僕の教育を?

確かにそれは迷惑をかけてしまうかもしれない。死体の処理とかね。
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