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歪みの原因はそれでしたか。
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「私は別にかまわないわよ、山には馴染みがあるし、暗くても影雪がいるなら怖くもないでしょ」
影雪の耳と尻尾がしびびっ、と音を立てそうな勢いで天を向く。
ここまでわかりやすいと嘘をつきようもないな、と夢穂は思った。
「ほ、本当か?」
「そもそも最初からその気で来たしね、誰も影雪が豪華なベッドで寝てるなんて想像してないわよ、気にしないで」
ぱああ、と表情が明るくなる影雪からほわわ、と花が飛んでいるように見える。
さすがに目の錯覚だが、それくらい嬉しそうなオーラを纏っている影雪が可愛く思えた。
頼り甲斐があるんだか、ないんだが、よくわからないあやかしだけれど、憎めないし放っておけない。
きっと影雪の周りに集まってくるあやかしたちも、彼の強い妖力よりも、別の魅力に惹かれているのだろうと夢穂は感じた。
「それに残月の御殿って煌びやかすぎて、余計眠れない気がするわ」
「わかるぞ、目がチカチカするからやめろと言っても聞かないからな」
親子だからといって趣味が合うとは限らないんだな、と思いながら夢穂は魚を食べ終えると「ごちそうさま」と再び合掌した。
「できればお風呂に入れたら助かるんだけど」
「おお、それならいい場所がある」
影雪は心持ち得意げに頷くと、ぱちぱちと音を立てていた焚き火を一吹きで消した。
肺活量まですごいのか、いつかトランペットを吹かしてみよう、と夢穂は思った。
立ち上がった影雪が、魚を丸ごと串刺しにしていた氷天丸を鞘に収める。
なぜか魚を刺した後の、汚れのようなものが見当たらなかった。
クリカキを剥いていた時も形跡がなかったが、どうやら妖力がコーティングのような便利機能を発動させているらしい。
もはや定型となりつつある、影雪のお姫様抱っこで二人は海から山へと移動した。
影雪の耳と尻尾がしびびっ、と音を立てそうな勢いで天を向く。
ここまでわかりやすいと嘘をつきようもないな、と夢穂は思った。
「ほ、本当か?」
「そもそも最初からその気で来たしね、誰も影雪が豪華なベッドで寝てるなんて想像してないわよ、気にしないで」
ぱああ、と表情が明るくなる影雪からほわわ、と花が飛んでいるように見える。
さすがに目の錯覚だが、それくらい嬉しそうなオーラを纏っている影雪が可愛く思えた。
頼り甲斐があるんだか、ないんだが、よくわからないあやかしだけれど、憎めないし放っておけない。
きっと影雪の周りに集まってくるあやかしたちも、彼の強い妖力よりも、別の魅力に惹かれているのだろうと夢穂は感じた。
「それに残月の御殿って煌びやかすぎて、余計眠れない気がするわ」
「わかるぞ、目がチカチカするからやめろと言っても聞かないからな」
親子だからといって趣味が合うとは限らないんだな、と思いながら夢穂は魚を食べ終えると「ごちそうさま」と再び合掌した。
「できればお風呂に入れたら助かるんだけど」
「おお、それならいい場所がある」
影雪は心持ち得意げに頷くと、ぱちぱちと音を立てていた焚き火を一吹きで消した。
肺活量まですごいのか、いつかトランペットを吹かしてみよう、と夢穂は思った。
立ち上がった影雪が、魚を丸ごと串刺しにしていた氷天丸を鞘に収める。
なぜか魚を刺した後の、汚れのようなものが見当たらなかった。
クリカキを剥いていた時も形跡がなかったが、どうやら妖力がコーティングのような便利機能を発動させているらしい。
もはや定型となりつつある、影雪のお姫様抱っこで二人は海から山へと移動した。
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