眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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やってみなくちゃ始まりません。

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「夢穂、どうした?」
「これ、見て」

 夢穂に指し示され、影雪はようやく違和感に気づいた。
 夢穂は考えていたことを、影雪に説明した。

「墓荒らしか……目的はなんだ」
「何かここに、盗みたくなるような貴重なものでも入ってる?」
「それはない、あるのは亡骸だけだ、それももっと奥深くに……こんな浅い乱し方では到底届かん」

 影雪の言う通り、荒らすといっても掘り起こしている感じではない。
 素手でできる範囲で草をむしり、表面の土を掻き出しているような状態だ。
 しかも律儀に、元に戻そうとした形跡まで窺える。
 亡骸の回収や貴重品などを盗むためでもない。

「墓を荒らすこと自体が目的? だとしたら、誰かが眠りを壊そうとしてる?」

 影雪は腕を組み、頭を捻った。

「どうしてそんなことをする必要がある? なんの得にもならないだろう」
「私が聞きたいわよ」

 得をしないどころか、不眠になって喜ぶ生き物などいるのか?
 これには夢穂も皆目検討がつかなかった。

「なら、見張ってみるか。もしそれが原因なら、その犯人を見つければ理由もわかるだろう?」

 影雪の提案に、夢穂は明るい表情でうんうんと頷いた。

「そうね、それがいいわ、でもどうやって?」
「深夜に見張ればいい、悪いことをやるなら他の奴らがいない時間を選ぶだろうからな」

 つまり、深夜に墓参りに来るあやかしはいないということだ。

「……あやかしって夜中に徘徊してるイメージだったわ」
「お前たちの世界で、俺たちは一体どうなっているのだ」

 昔話とは、得てして正確に伝わらないものだ。
 そこで夢穂は気持ちを整えるように、一度大きく深呼吸した。
 そして眼前に差し出した手を静かに合わせた。

「今度はなんだ?」
「しっ、集中したいから黙ってて」

 大きな瞳を閉じ、夢穂の長いまつ毛が下瞼に被さる。
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