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やってみなくちゃ始まりません。
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「私からすれば、ちょっと羨ましくも感じるけどね」
再び夢穂を見た影雪が、不思議そうに首を傾げている。
「私は親がいないから、血の繋がった家族ってどんな感じなのかなって、想像もつかないもの」
影雪はこの時、初めて夢穂を取り囲む環境が特殊であることに気がついた。
自分には当たり前にあるものが、夢穂にはなかった。
「……夢穂の親は」
「捨て子だったからまったく知らないわ、孤児院……親がいない子供たちばかりの施設にいて、お兄ちゃんが引き取って育ててくれたの」
夢穂と業華が似ていないことも、本当の兄妹でなければ納得だった。
しかし、二人を見ていると、あまりに馴染んでいて、影雪は特に違和感を覚えたことがなかった。
「だからね、せっかくお父さんがいるなら、意地張ってる時間がもったいないと思う、大事な相手がいつまでも元気とは限らないし、自分だって明日生きてる保証もないんだから」
影雪はぎょっとした。
普段そこまで意識していない事実を、あえてはっきり口に出されると、実際に起きてしまう気がして少し不安になった。
「夢穂は、大丈夫だ」
今度は夢穂が、不思議そうに首を傾げる番だった。
「俺が死なせない」
影雪の一言に、夢穂は目を丸くすると、照れ隠しに少し怒ったように顔を逸らした。
「や、やだ、ものの例えに決まってるでしょ、変なこと言わないで、まだ十六歳なんだから、死ぬもんですか」
夢穂らしい意志の強い口調を聞くと、影雪は幾分か安心し、ほっと息を漏らした。
再び夢穂を見た影雪が、不思議そうに首を傾げている。
「私は親がいないから、血の繋がった家族ってどんな感じなのかなって、想像もつかないもの」
影雪はこの時、初めて夢穂を取り囲む環境が特殊であることに気がついた。
自分には当たり前にあるものが、夢穂にはなかった。
「……夢穂の親は」
「捨て子だったからまったく知らないわ、孤児院……親がいない子供たちばかりの施設にいて、お兄ちゃんが引き取って育ててくれたの」
夢穂と業華が似ていないことも、本当の兄妹でなければ納得だった。
しかし、二人を見ていると、あまりに馴染んでいて、影雪は特に違和感を覚えたことがなかった。
「だからね、せっかくお父さんがいるなら、意地張ってる時間がもったいないと思う、大事な相手がいつまでも元気とは限らないし、自分だって明日生きてる保証もないんだから」
影雪はぎょっとした。
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「夢穂は、大丈夫だ」
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「俺が死なせない」
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「や、やだ、ものの例えに決まってるでしょ、変なこと言わないで、まだ十六歳なんだから、死ぬもんですか」
夢穂らしい意志の強い口調を聞くと、影雪は幾分か安心し、ほっと息を漏らした。
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