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なんだかんだ、仲良くなります。
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授業が終わると、夢穂はまっすぐ家に向かう。
沙子は陸上部のエースで練習に明け暮れており、美菜は実家のケーキ屋を手伝い、パティシエになるため腕磨きをしている。
そんなわけで放課後は忙しく、帰りのホームルームが終わるとみんなそれぞれの場所へと散っていく。
いつものバスに乗り、運転手に挨拶をして登校して来た道を戻っていく。
そんな夢穂の後ろから、地面を踏みしめるもう一つの音が聞こえる。
さっきまで誰もいなかった場所に急に現れる気配。夢穂は一瞬だけ横目で背後を確認した。
するとやっぱりか、といった様子で息をつくと視線を正面に戻す。
舗装された道から砂利道に吊り橋、すべて夢穂の後を追うように続く足音。
よそで待つ、と言っていたが、どこをふらついていたのだろう?
この辺りは人が少なく、すれ違うことの方が珍しいので騒ぎになる心配はなさそうだけど、と夢穂は考えていた。
「……今日もうちに泊まる気なの?」
夢穂は前を見て歩みを進めたまま、背後につける影雪に話しかけた。
その声を聞き逃さんとするように、影雪の耳は天を向きぴんと張った。
「泊まる、飯も食う」
「……働かざる者食うべからずって言葉知ってる?」
「知らない、なんだそれは」
「だよね……」
あやかしの世界がどう回っているのか知らないので、こちらの常識にはめようとするのが間違いなのかもしれない。それにしてももう少し遠慮というものが欲しいところではあった。
そんな中、不意に影雪が大きなあくびをした。
「何、寝不足?」
「かもしれない、向こうではずいぶん寝苦しい日が続いていたからな」
それを聞いた夢穂は何か思いついたように足を止め、ようやく影雪の方を見た。
「どうして? 何か眠れない理由が?」
夢穂の質問に影雪は首を傾げ考えてみたが、思い当たるふしはなかった。
沙子は陸上部のエースで練習に明け暮れており、美菜は実家のケーキ屋を手伝い、パティシエになるため腕磨きをしている。
そんなわけで放課後は忙しく、帰りのホームルームが終わるとみんなそれぞれの場所へと散っていく。
いつものバスに乗り、運転手に挨拶をして登校して来た道を戻っていく。
そんな夢穂の後ろから、地面を踏みしめるもう一つの音が聞こえる。
さっきまで誰もいなかった場所に急に現れる気配。夢穂は一瞬だけ横目で背後を確認した。
するとやっぱりか、といった様子で息をつくと視線を正面に戻す。
舗装された道から砂利道に吊り橋、すべて夢穂の後を追うように続く足音。
よそで待つ、と言っていたが、どこをふらついていたのだろう?
この辺りは人が少なく、すれ違うことの方が珍しいので騒ぎになる心配はなさそうだけど、と夢穂は考えていた。
「……今日もうちに泊まる気なの?」
夢穂は前を見て歩みを進めたまま、背後につける影雪に話しかけた。
その声を聞き逃さんとするように、影雪の耳は天を向きぴんと張った。
「泊まる、飯も食う」
「……働かざる者食うべからずって言葉知ってる?」
「知らない、なんだそれは」
「だよね……」
あやかしの世界がどう回っているのか知らないので、こちらの常識にはめようとするのが間違いなのかもしれない。それにしてももう少し遠慮というものが欲しいところではあった。
そんな中、不意に影雪が大きなあくびをした。
「何、寝不足?」
「かもしれない、向こうではずいぶん寝苦しい日が続いていたからな」
それを聞いた夢穂は何か思いついたように足を止め、ようやく影雪の方を見た。
「どうして? 何か眠れない理由が?」
夢穂の質問に影雪は首を傾げ考えてみたが、思い当たるふしはなかった。
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