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なんだかんだ、仲良くなります。
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影雪は夢穂を振り返ると、くんくんと鼻を利かせながら通り過ぎざまに生徒たちの匂いを確認しつつ歩み寄ってきた。
狐の耳と尻尾を生やした侍風情の格好をした男が、無差別に少年少女の匂いを嗅ぐなど警察に通報されてもおかしくないレベルだ。
しかし影雪の纏う独特の雰囲気にみんな呑まれてしまっているのか、黄色い声は聞こえても嫌悪を示す者は誰一人いなかった。
最後にたどり着いた夢穂の匂いを確かめると、影雪は噛みしめるように目を閉じて頷いた。
「お前が一番いい匂いだな」
影雪なりの褒め言葉かもしれないが、今そんなことを言われて喜ぶ気になるはずもなく、夢穂は額に手をやった。
「そういうのいいから、どうしてここにいるのか聞いてるんだけど」
「業華に学校という場所を聞き、やることもなく暇だから来てみた」
影雪の見た目年齢は、人間からすれば十七、八といったところだ。
若いとはいえ自分より年上に見える男が、悪びれもなく子供じみた台詞を吐くのはどうも夢穂の気にそぐわなかった。
だから夢穂は背伸びをすると、不満を込めながら影雪の三角型の耳を思いきり引っ張って自分の方へ寄せた。
「痛い」と言いながらも大人しく背を屈める影雪に、夢穂は囁き声で注意を促す。
「ここは遊ぶ場所じゃないんだから早く帰って、それからなるべく人間のフリをして、おかしな言動はやめて、わかった?」
「おかしな言動……?」
「とにかく今すぐここから出ていって、次に来たらご飯抜きにするからね」
ご飯抜き、という言葉に影雪の目がカッと見開かれた。
「わかった、帰る。よそで夢穂を待つ」
そう言い残すと、影雪は身を翻し窓から外へと消えていった。
夢穂と影雪のおかしな言動に対する定義のすれ違いがひどい。
「ええっ、ここ三階なのに大丈夫なの? あれ、誰もいない……あの人何者? どこに行ったのー!?」
美菜を筆頭にクラスメイトからの質問攻めにあい、夢穂は全部それ私が聞きたい、と思っていた。
「……手品がうまい親戚なの」
苦しい言い訳だと思ったが「夢穂の親戚ならわかる気がする」と妙に納得されてしまい、安心すると同時に自分は普段どんな目で周りから見られているのだろうと、若干心配にもなった夢穂だった。
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最後にたどり着いた夢穂の匂いを確かめると、影雪は噛みしめるように目を閉じて頷いた。
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「ここは遊ぶ場所じゃないんだから早く帰って、それからなるべく人間のフリをして、おかしな言動はやめて、わかった?」
「おかしな言動……?」
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「わかった、帰る。よそで夢穂を待つ」
そう言い残すと、影雪は身を翻し窓から外へと消えていった。
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