眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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なんだかんだ、仲良くなります。

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 沙子と美菜は親しいので何度か家に招いたことがある。
 そんな時、業華は決まって茶菓子を出してくれるので、すっかり顔見知りになった。
 業華の見た目は二十代前半なので、女子高生が憧れる年齢ではあるかもしれない。
 六歳の時引き取られた夢穂は、彼と血の繋がりがないことはわかっている。
 とはいえ、長年実の兄として慕っているので、かっこいいと言われてもぴんと来なかった。

「ごめん、美菜が変なこと言うからつい」
「全然変なこと言ってないじゃん、むしろ変なのはこの歳になっても浮いた話一つない夢穂だよ!」
「えぇ、私に話を振らないでよー!」

 突然美菜に指差され、油断していた夢穂は顔の前で、ないない、と手を振った。

「夢穂って目もくりくりで可愛いのにもったいないよ、巫女さんだからって恋の一つや二つしたってバチは当たらないでしょ」
「美菜は惚れっぽすぎるの、付き合ったと思ったらすぐ別れちゃうんだから」

 夢穂の反論にも美菜はへこたれる様子もなく、ちっち、と人差し指を眼前で左右に揺らしてみせた。

「だって自分に合う人を見つけるためにはたくさんの人を見なきゃダメじゃん。とろけるスウィーツのような甘い恋がしたいの!」
「ケーキ屋さんになりたいからって、それとこれとは話が別だろ」
「同じようなもんだよ、陸上選手の沙子にカロリーオーバー必至の糖分注入しちゃうぞ!」

 じゃれつく二人が、夢穂には眩しくも見えた。
 この年頃の話題と言えば、家族、恋、将来の夢などが中心だ。
 世間と自分を取り囲む環境があまりに違うことを、夢穂はなるべく考えないようにしていた。

「あ~あ、朝起きたら超イケメンのお兄さんが隣で寝てるとかないかなぁ」

 美菜のとんでもない願望に、夢穂は今朝の出来事を思い出してため息をついた。

「確かにイケメンと言えばそうかもしれないけど」
「え、なになに?」
「こっちの話……」

 ただし、獣の耳と尻尾がついたあやかしですけど――と、夢穂は胸の内で愚痴っていた。
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