眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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なんだかんだ、仲良くなります。

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 なだらかな坂をくだり二十分ほど経つと、田んぼや畑の間にぽつんと建った校舎が見える。
 その近くで停車したバスから降りると、夢穂は運転手に感謝の気持ちを込め頭を下げた。
 そしてバスが去った後くるりと身体を反転させると、駆け足で学校の門を通り過ぎた。

 夢穂の教室は四階のかどにある、高校一年一組だ。
 生徒数が少ないので近隣の中学と高校が集まり、中高一貫の学校になっている。
 
 夢穂の姿を見つけると、先に来ていた二人の女生徒が近づいてきた。
 一人はショートカットのきりっとした美人、もう一人はゆるい天然パーマのボブヘアーをした童顔だ。
 
「おはよう夢穂、ちゃんと今日もバスに乗れたみたいだな」
「夢穂の家からじゃ坂が多くて自転車もちょっと危ないもんねぇ」

 男勝りな口調の沙子さこと、おっとりした雰囲気の美菜みな
 夢穂が小学生の頃からずっと同じクラスで、慣れ親しんだ仲だ。
 軽く朝の挨拶を交わすと、二人は夢穂が座った席の周りに集まった。
 
 今度のテストが嫌なことや、次に遊びに行く場所の相談など、取り止めのない日常会話の最中さいちゅうで、夢穂は思い出したようにカバンを探った。
 取り出したのは、麻でできた若草色の巾着袋。夢穂の手にちょうど二つ乗せられるほど小さい。
 それを見た沙子と美菜はそれぞれに喜んだ。

「ありがとう夢穂、これがあるとよく眠れるんだ」
「あたしはこれがないともう絶対に眠れなーい!」
「美菜は大袈裟なんだから、でも二人にも喜んでもらえてよかった」

 嬉しそうに匂い袋を手にする二人を見て、夢穂の口元も綻んだ。
 巾着袋の中には寺社の裏手に生えた……というより、咲いた、と言った方が相応しいと思うほど美しい薬草が入っている。

「相変わらずすごくいい匂いだな、爽やかでクールな感じの」
「嘘? 甘くて美味しそうな匂いだよっ」

 こんな二人のやり取りはお決まりだ。
 正確にはどちらの言うことも嘘ではなく、間違ってもいない。
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