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『現実逃避』(SIDE 泰莉)
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「出来ない・・・泰莉・・ごめん。」
美影さんに身体を許したくせに、俺には抱かれたくないと拒絶した弥弦さんの態度が許せなかった。
いつもみたいに罵ったり、理屈の通らない駄々を捏ねてめちゃくちゃに掻き回してくれれば、どれほど良かっただろう。
「んだよ、お前。珍しいじゃねぇか。」
どうしても家に帰りたくなくて向かった先は、昔馴染みの喧嘩仲間の家だった。
弥弦さんとの恋人関係は、もう続けられそうにない。
俺が「別れる」と口にしたら、彼は追ってきてはくれないから・・・覚悟がまだ出来なくて、逃げ出した。
「たまにはお前のアホ面見てぇなと思って来てみた。中入れろよ。」
鮫島 榮吾。高校時代の俺の相棒。
ずば抜けた身体能力の持ち主で喧嘩が強く、高校を出てすぐ格闘家として活躍するようになった。
「気の置けない友人」と言うよりは、「戦友」の方がしっくりくる筋肉バカ。
しばらく見ないうちに、また逞しくなった気がする。
短髪がよく似合う強面で、口調が荒く無愛想な男だ。
こいつなら俺が酷い態度を取っても、簡単に傷ついたりしない。
「しばらく泊めてくれねぇ?」
「勝手にしろよ。」
鮫島はいつも何も詮索してこないし、細かいことはまるで気にしない。
学生時代に親と喧嘩して家出した時も、仕事がうまくいかなくてやけになっていた時期も、俺はここに来た。
現実逃避のための場所、なのかもしれない。
疲れていたのか少し眠って目を覚ますと、部屋中に肉の焼ける良いにおいが漂っていた。
「おう、起きたか。そこ座って食えよ。」
「すげぇ美味そう。お前いつも肉ばっか食ってんの?」
「肉を食わなきゃ始まらねぇだろ。」
俺が弱って逃げ出して来ると、いつも旨いものを食わせてくれる。
こんな風に一緒にいて同じものを食べて・・ただそれだけで良かったのに。
弥弦さんは「普通の幸せ」という枠の中におさまる人じゃない。
それでもなお弥弦さんのそばに居たい、手放したくないという気持ちが俺の胸を締め付ける。
今はただほんの少しの間だけ、現実逃避していたい。
投げ出した鞄の中、弥弦さんからの着信が何度もスマホの画面を点滅させていることを、その時の俺は知る由もなかった。
美影さんに身体を許したくせに、俺には抱かれたくないと拒絶した弥弦さんの態度が許せなかった。
いつもみたいに罵ったり、理屈の通らない駄々を捏ねてめちゃくちゃに掻き回してくれれば、どれほど良かっただろう。
「んだよ、お前。珍しいじゃねぇか。」
どうしても家に帰りたくなくて向かった先は、昔馴染みの喧嘩仲間の家だった。
弥弦さんとの恋人関係は、もう続けられそうにない。
俺が「別れる」と口にしたら、彼は追ってきてはくれないから・・・覚悟がまだ出来なくて、逃げ出した。
「たまにはお前のアホ面見てぇなと思って来てみた。中入れろよ。」
鮫島 榮吾。高校時代の俺の相棒。
ずば抜けた身体能力の持ち主で喧嘩が強く、高校を出てすぐ格闘家として活躍するようになった。
「気の置けない友人」と言うよりは、「戦友」の方がしっくりくる筋肉バカ。
しばらく見ないうちに、また逞しくなった気がする。
短髪がよく似合う強面で、口調が荒く無愛想な男だ。
こいつなら俺が酷い態度を取っても、簡単に傷ついたりしない。
「しばらく泊めてくれねぇ?」
「勝手にしろよ。」
鮫島はいつも何も詮索してこないし、細かいことはまるで気にしない。
学生時代に親と喧嘩して家出した時も、仕事がうまくいかなくてやけになっていた時期も、俺はここに来た。
現実逃避のための場所、なのかもしれない。
疲れていたのか少し眠って目を覚ますと、部屋中に肉の焼ける良いにおいが漂っていた。
「おう、起きたか。そこ座って食えよ。」
「すげぇ美味そう。お前いつも肉ばっか食ってんの?」
「肉を食わなきゃ始まらねぇだろ。」
俺が弱って逃げ出して来ると、いつも旨いものを食わせてくれる。
こんな風に一緒にいて同じものを食べて・・ただそれだけで良かったのに。
弥弦さんは「普通の幸せ」という枠の中におさまる人じゃない。
それでもなお弥弦さんのそばに居たい、手放したくないという気持ちが俺の胸を締め付ける。
今はただほんの少しの間だけ、現実逃避していたい。
投げ出した鞄の中、弥弦さんからの着信が何度もスマホの画面を点滅させていることを、その時の俺は知る由もなかった。
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