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『大人の色香』
しおりを挟む「お酒弱いんだよねぇ、僕。」
トロンと潤んだ視線で私に寄りかかったのは、我が家で一番お酒が強そうなイメージの明光だった。
「いやいやいや、めちゃくちゃ強そうに見えるんですけど・・!!」
彼の身体からふわりと香る良いにおいにドキドキして、妙に声が大きくなる。
明光とこんなふうに触れ合ったのは初めてのことで照れくささMAXの私は、明らかに挙動不審だった。
私の肩にもたれかかった彼が、私の手を取り甘く指先を絡める。
(エ・・・エロ過ぎです・・・・っ!!明光さん・・・・ッ!!)
アルコールが一滴も入っていないくせに、私は平常心を保つだけで精一杯だ。
「やべ、俺めちゃくちゃ飲ましちゃった、明光さん・・・」
無事に出産を終え、久々にアルコールを解禁した桜雅は、明光に相当量の日本酒を注いだことを白状する。
線が細く繊細な身体つきをしている明光が、赤い顔で目を潤ませている姿は、あまりに妖艶で見ていられない。
「明光さんエロ・・・なんか見てはいけないものを見ているような・・・」
赤面しながら明光を見つめている樹に、泉が手でそっと目隠しする。
「樹、泉、お前らもう遅いから部屋戻って寝ろ。」
桜雅が学生組を部屋に戻そうと、立ち上がった。
確かに若い彼らには刺激が強すぎるかもしれない。
「なんだか熱くなってきちゃったなぁ・・」
いつもは首の後ろで結えている明光の綺麗な黒髪が、サラリと解ける。
胸下まで伸ばした綺麗なロングヘア。彼が髪を下ろした姿は初めて見た。
明光は、和食割烹の店主で、世界的に有名な料理人。
年上で物静かな彼は、線が細く綺麗な顔立ちをしているので女性と間違われよく声をかけられるらしい。
彼を見ていると自分が女であるということを後悔するほど、惨めな気持ちになった。
透き通るようなきめの細かい白肌。華奢でスラリと伸びた手足。
着物が似合う、美しい男性。
いつもはクールで大人の余裕を纏っている彼が、酔い潰れている。
「繭、僕の部屋に来てくれる?」
「は・・はい・・・!!」
甘い吐息で耳打ちされ、思わず即答していた。緊張で、背筋がピンと伸びる。
明光さんに名前を呼ばれるのは、初めてだ。
彼はいつも優しい微笑みをくれるけれど、近寄りがたい雰囲気を崩さなかった。
夫婦関係も、この結婚生活に馴染むまでは保留にしたいと申し出があり、私もそれ以上は踏み込めずにいたのだ。
女である私の自尊心を粉々に砕いてしまうような、彼の美しさ。
襟ぐりから覗く白肌、鎖骨が眩しい。
先に席を立って自室に戻った明光を、時間差で追いかける。
彼の大人の色香にすっかりあてられてしまった私は、ドキドキしながら部屋の扉をノックした。
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