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『子どもは好きだけど』
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夫の大和と久々に愛し合った後、甘いピロートークの時間。
呼吸を落ち着けながら彼に腕枕してもらうこの瞬間、私は最高の幸せに包まれる。
彼の逞しい胸板に頭を預けて、明るい家族計画を話し始めたところで、彼が気まずそうに目を背けた。
「悪い。俺は・・・子どもは欲しくない。」
「え・・・?」
彼の言葉がすぐには理解できず、一瞬思考が固まる。
大和はハルやシノブの子育てに積極的に関わってくれていて、子どもが好きだとばかり思っていた。
「子どもは好きだけど、今は・・産みたいとは思っていない。」
子どもが好きだからといって、産みたいかどうかは全く別の問題だ。
自分に置き換えて考えてみたらひどく納得してしまって、思い込みの激しさ考えの至らなさに急に恥ずかしくなる。
夫が子ども産む今の状況では、私にとって出産がどこか他人事になっているのだ。
私自身子どもは好きだけれど、自分で産むとなると・・・と、こんな世界になるまではそう思っていた。
頭では理解できるのに、欲しくないと言われて放心状態になっているこの感情はなんだろう?
ショック、に似た感覚が、私の身体を支配している。
夫が私の子どもを産んでくれることが、一種の愛情表現なのだと感じているのかもしれない。
自分の身勝手さにハッとした。
♢♢♢
「あ~、それなんかわかる気がするわ。」
シノブの夜泣きが落ち着かず、子ども部屋で桜雅と2人、夜を明かす。
息子を抱え上げてよしよしとあやす彼の姿は、いつ見てもとても頼もしい。
「俺は子どもは嫌いじゃねぇし、自分の子どもがいつかは欲しいって思ってたけど、いざ俺の腹ん中で育てんのかって思ったら、なかなか踏ん切りつかなかったんだよな。今じゃなくていいとか、いつか仕事が落ち着いたら、って思ってた。」
「そう・・なんだ。」
予期せぬ妊娠でシノブを産んだ、桜雅の言葉。
妊娠した時は、彼の気持ちがわからなくて不安に思っていたのを思い出す。
子供は好きだけど、自分で産みたいかというとそうではない。
共感しかない。私もまさにそうだった。
どうして忘れてしまっていたんだろう。
「だからって繭ちゃんのこと愛してないか、って言ったら、全然話は別だぜ?」
「え?」
「大和さんが産みたくないって言ったことに、ショック受けてんじゃねぇの?」
桜雅は、鋭い。
私のことをきちんと見ていて、心の内を察してくれる彼に、毎回惚れ惚れしてしまう。
「子どもを産む産まないは別にして、俺らが繭ちゃんのこと愛してるのは間違いねぇから。」
桜雅が私の額に、優しく口付ける。
いつの間にか泣き止んだシノブは、彼の腕の中ですやすや眠っていた。
呼吸を落ち着けながら彼に腕枕してもらうこの瞬間、私は最高の幸せに包まれる。
彼の逞しい胸板に頭を預けて、明るい家族計画を話し始めたところで、彼が気まずそうに目を背けた。
「悪い。俺は・・・子どもは欲しくない。」
「え・・・?」
彼の言葉がすぐには理解できず、一瞬思考が固まる。
大和はハルやシノブの子育てに積極的に関わってくれていて、子どもが好きだとばかり思っていた。
「子どもは好きだけど、今は・・産みたいとは思っていない。」
子どもが好きだからといって、産みたいかどうかは全く別の問題だ。
自分に置き換えて考えてみたらひどく納得してしまって、思い込みの激しさ考えの至らなさに急に恥ずかしくなる。
夫が子ども産む今の状況では、私にとって出産がどこか他人事になっているのだ。
私自身子どもは好きだけれど、自分で産むとなると・・・と、こんな世界になるまではそう思っていた。
頭では理解できるのに、欲しくないと言われて放心状態になっているこの感情はなんだろう?
ショック、に似た感覚が、私の身体を支配している。
夫が私の子どもを産んでくれることが、一種の愛情表現なのだと感じているのかもしれない。
自分の身勝手さにハッとした。
♢♢♢
「あ~、それなんかわかる気がするわ。」
シノブの夜泣きが落ち着かず、子ども部屋で桜雅と2人、夜を明かす。
息子を抱え上げてよしよしとあやす彼の姿は、いつ見てもとても頼もしい。
「俺は子どもは嫌いじゃねぇし、自分の子どもがいつかは欲しいって思ってたけど、いざ俺の腹ん中で育てんのかって思ったら、なかなか踏ん切りつかなかったんだよな。今じゃなくていいとか、いつか仕事が落ち着いたら、って思ってた。」
「そう・・なんだ。」
予期せぬ妊娠でシノブを産んだ、桜雅の言葉。
妊娠した時は、彼の気持ちがわからなくて不安に思っていたのを思い出す。
子供は好きだけど、自分で産みたいかというとそうではない。
共感しかない。私もまさにそうだった。
どうして忘れてしまっていたんだろう。
「だからって繭ちゃんのこと愛してないか、って言ったら、全然話は別だぜ?」
「え?」
「大和さんが産みたくないって言ったことに、ショック受けてんじゃねぇの?」
桜雅は、鋭い。
私のことをきちんと見ていて、心の内を察してくれる彼に、毎回惚れ惚れしてしまう。
「子どもを産む産まないは別にして、俺らが繭ちゃんのこと愛してるのは間違いねぇから。」
桜雅が私の額に、優しく口付ける。
いつの間にか泣き止んだシノブは、彼の腕の中ですやすや眠っていた。
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