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『複雑な心境』

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まゆ・・・ッ・・・大好き・・・もう一回シても良い?」

大きく身体を震わせて私の中で果てたしずくが、乱れた呼吸のままそう言った。
普段とても穏やかな彼が、激しく何度も求めてくるなんて初めてのことで、嬉しい反面少し心配になる。


「雫さん・・っ・・・少しの間ギュってしてて欲しいです・・・っ」

何度も絶頂に上り詰めた熱い身体で、彼にぎゅっと抱きつく。
彼はハッとしたように私を見て、ごめんねと優しく抱きしめてくれた。

「雫さん、何か・・・あったんですか?」

彼の腕に顔を預けて、呼吸を整える。
理性的で穏やかな雫が、一心不乱に腰を振って快楽にふける姿がちらついて、なかなか鼓動がおさまらない。


「身体、辛かったよね。繭、ごめん。」

ギュッと抱きしめる腕に力がこもる。

(辛いどころか、最高!!だし、もっとしてほしいけど・・・雫さんが心配・・・)


甘えるように、彼が私の額に頬を寄せた。
サラリとした彼の綺麗な髪が、私の頬に触れてくすぐったい。


「雫さんに激しく求められるの・・・嬉しくて興奮しちゃった・・。」

ハッとしたような表情を一瞬浮かべた彼は、すぐにいつもの穏やかな顔になる。


「白状するとね・・、大和やまとが繭を抱くんだって思ったら、うまく説明できないんだけど・・・複雑な気持ちになったんだ。」

「雫さん・・」

大和の言葉に苛立ちを示していた、彼の顔を思い出す。


「うちにはたくさん夫がいて、それが俺たち家族の当たり前なのにね。大和に・・繭を取られるみたいな気持ちになるなんて・・・俺・・変だよね。」

(え・・?嫉妬ってこと・・・?!雫さんが大和さんに対して、嫉妬したってこと・・・?!も、萌える・・・・ヤバイ・・・嬉しすぎる・・・♡)


雫が複雑な心境で苦しんでいるというのに、不謹慎ふきんしんにも浮かれてしまう自分をなんとか抑え込む。

確かに想像してみると、友人が自分の妻と寝るというこの状況は、複雑極まりないものだろう。
「独占欲が強い」と言っていたのを思い出しながら、彼を見た。

(逆の立場だったら確かに複雑かも・・・うーん・・・)


夫たちに囲まれて幸せな生活を送れているけれど、彼らはそれぞれに複雑な心境を抱えているに違いない。
そんな考えにも至らなかった自分自身を、責めたい気持ちになる。


「雫さん、話してくれてありがとうございます。」

「情けない姿ばかり見せてるよね、俺。どんなことでも笑って流せるタイプだって、自信あったんだけどな。繭のことになると、俺はいつも必死で・・・・感情を抑えられなくなる。」

私の目を真っ直ぐに見つめたまま苦笑した彼が、たまらなく愛おしくなった。


「んぅ・・っ・・・繭・・・っ・・・・」

彼に、深く口付ける。

夫たちから日々もらっているたくさんの愛情を、私も彼らに返していきたい。
自分が幸せにしてもらっているように、彼らのことを幸せにしたい。

そう強く願った。


「大和さんは、私の知らない雫さんをたくさん知ってるんだって思ったら、私も悔しくなっちゃいます。私しか知らない雫さんを、もっと見たいです。」

「繭・・・繭も全部見せて。」

彼の綺麗な指が、私の身体中に触れる。
激しい彼の一面を知って、愛情が深まっていくのを感じながら、私たちは朝までずっと抱き合っていた。


♢♢♢


しずくさんでもいたりするんだな。親近感しんきんかん湧くわぁ。」

「え?」

朝いつも通り歯を磨いていたら、隣に立った桜雅おうがが急に口を開いた。


「あの後、雫さんと何かあっただろ?」

桜雅の鋭い指摘に、驚いて言葉が見つからない。


「何で、わかったの・・?」

「わかるわ。俺、結構しずくさんと仲良いだろ?あれじゃね?大和やまとさんに対して嫉妬?」

「すごい・・桜雅おうが君。」

歯磨きを終えてコップに歯ブラシを戻すと、彼が私の手を取った。


まゆちゃんは鈍感すぎ。俺が今どんな気持ちか考えてみ?」

「・・桜雅君・・・っ」

「なぁ、今日は体調良いから、抱かせてくれねぇ?」

私を抱きしめるように腕を伸ばした彼に、お尻を鷲掴わしづかみにされた。


「ん・・っ・・・痛っ・・・」

同時に、彼は私の首筋に噛みつく。


「妊娠してても、性欲はあるんだぜ?」

知ってたか?と低い声でささやく彼は、怒っているのかと不安になる程、乱暴な口調になる。


「ヤりたくてたまんねぇんだよ。繭、なぁ、ヤらせろよ。」

「桜雅君・・、お、落ち着いて、」


「落ち着けるわけねぇだろ。いいから俺の部屋来いよ。」

私の手首をがっしりと掴んだ桜雅は、乱暴に手を引いて歩き始めた。


(乱暴な桜雅君もイイ・・・・!!!ヤりたくてたまらないとか・・っ・・・萌える・・・♡)

夫の新たな一面を見るたびに、新鮮な気持ちになる。
私は初めて恋をした日のようにドキドキしながら、黙って彼について行った。




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