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『生検』(SIDE 朝萩 千秋)
しおりを挟む~~~~登場人物~~~~
♡朝萩 千秋(あさはぎ ちあき)33歳
消化器外科医。
サラサラのロングヘア 。後ろ姿は女性に見えるのでよく間違われる。
女性のような可愛らしい顔立ち。
双子の姉がおり、他病院で医者をしている。
♡白河 傑(しらかわ すぐる) 33歳
皮膚科医。サラサラの黒髪。黒縁メガネ。
日常会話はほとんどしないが、仕事の話となると饒舌。
生検好き。
病理検査技師の鮎原と仲が良く、皮膚科にいないときは病理検査室にいる。
♡笹原 水樹(ささはら みずき) 33歳
消化器外科医。
千秋とは同期で仲が良い。
黒髪、前髪は真ん中分け、毛先はカールしている。
いつもは軽い印象だが、観察眼があり物事を見極める能力が高い冷静な医師。
千秋のことを一途に想っている。
~~~~~~~~~~~
『生検』(SIDE 朝萩 千秋)
僕は、消化器外科の医師だ。
大学病院というのは色々な科があって、細分化されている。
専門分野以外のことは、専門医に相談するのが一番早い。
数ヶ月前から胸の下あたりにある虫刺されのような膨らみが気になったので、皮膚科の専門医に診てもらうことにした。
同期の白河 傑は特殊な男で、いかにも医者という感じがする変わり者だ。
同期と言っても、そもそも専攻が違うし、彼は無口なので大した話をしたことはない。
生検の鬼。生検マニア。
医師たちの間で、彼はそう呼ばれている。
生検好きで有名な皮膚科医。
皮膚科に限らず、医師とは言えど、詰まるところ最終の病名診断は生体検査に頼るしかない。
細胞を実際にとってみて、病理検査にかけてみないと確定診断は出来ないのだ。
経験を積んだ医師で、ほぼ100発100中という人を知っているけれど、それでも絶対はない。
白河医師は見た目はクールな印象。
細胞にしか興味がないと揶揄されるほど、無口で愛想がない。
手術することには慣れているけれど、自分がされる側というのはほとんど経験がないから新鮮だ。
台の上に横になると、手術ためのライトが目に眩しい。
ただの生検だけど、手術台の上に乗って患者さんの気持ちを知ることは、
今後の医師としての対応にも役立つ。
それでもやはり医師の目線で見てしまう自分がいた。
少しワクワクする。
「始めます。」
局所麻酔の針がスッと入る感覚。
さすが、生検の鬼、と言われるだけある。うまい。
痛みはほとんど感じなかった。
「どうだった?白河の手捌き。」
消化器外科に戻ると、同期で同じ科の笹原 水樹が興味津々で聞いてきた。
「手捌きって言っても、手術を受けたわけじゃないからなぁ。あくまで生検だからあっという間に終わったよ。」
「あいつになんか言われた?」
「あ~、いい身体してるね、って言われた。」
「なんだよそれ、ただのセクハラじゃねぇか。」
水樹が呆れたような声を出す。
「検体として、いい身体って意味じゃない?」
「あいつ、病理検査技師の鮎原と付き合ってるらしい。」
「え?そうなの?」
意外だった。
病理検査技師の鮎原 恵巳は僕も仕事でよく話す。
人と距離を取り淡々と話す、事務的な態度。
ポーカーフェイスで、余計な会話は一切しない。
人間嫌いなのかと思っていた。
言われてみれば、あの二人は似ている。
「まぁ、手術の腕はいいらしいよ。でも手術より生検が好きだって言うから、少しマニアックだよな。」
生検好き。
医者には一定数そういうタイプがいる。
すぐ切りたがる医者が。
他病院で皮膚科医をしている、僕の姉もそうだ。
必要ないとまでは言わないけど、そんなに慌てて切除しなくてもいいものもあるから、どちらがいいのかわからない。
悪性化しないとは言い切れないから、早目に切除するのが良いという考え方の医師もいる。
「佐野も白河の生検受けたらしいけど、それ以来あいつの話ばっかすんのな。同僚の医者に切られるってなかなかないから新鮮で興奮したとか言って。あいつも変わり者だよなぁ。」
医師には変わり者が多い。
わからないでもない。
白河が僕の身体の一部を切除する。
患者側に立ってみて初めて感じる緊張感。医療行為を受ける新鮮さ。
真剣な眼差し。医師としての有能さ。
「医者を切るの嫌じゃないのかなぁ、あいつ。医者目線で見られてると思ったら俺はやりにくいけど。」
それも一理ある。
それから白河は何度も僕の夢に登場するようになった。
彼はいつもじっと真剣な眼差しで僕を見ていて、何か呟く。
何と言っているのか聞こえなくて、僕が聞き返すとそこで目が覚める。
白河の真剣な瞳。
医師としてただ患者を見ているのだとわかっていても、その真剣さに心を打たれる。
ある日仕事で病理検査室に行くと、白河が鮎原の隣に立って腰に手を回しているのが目に入った。
2人が付き合っているらしい、という水樹の言葉を思い出す。
エキゾチックな雰囲気の鮎原は、色気を纏う褐色肌に厚い二重まぶたのイケメンだ。
僕の姉が好みのタイプだと、以前この病院に来た時に言っていたのを思い出した。
「朝萩、ちょうどよかった。この前の検査、やっぱり良性だった。」
白河は彼の腰に手を当てたまま、僕にそう言った。
距離感のわからない男だ。
「そうか。よかった。ありがとう。」
「良性だけど、早めに切除した方がいいぞ。俺が切ってやろうか。」
彼が舌舐めずりするのが、見えた気がした。
ぞくり、と心が波立つ。彼の熱い視線。
彼の目は、僕の初恋の人に似ているのだ。
今ようやく気付いた。
「じゃあ、お願いしようかな。」
僕の心は決まっていた。
鮎原がちらりと横目で僕を見る。
「明日はどうだ?」
「うん。よろしくね。」
僕は、まるで彼とデートの約束を取り付けたような気分になった。
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