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『内視鏡専門医』(SIDE 野池 智彌)

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~~~~登場人物~~~~


♡野池 智彌(のいけ ともや) 31歳

消化器内科の医師。
内視鏡マニア。丹念医師の内視鏡技術に惚れ込み、自身も何度も検査を受けている。
丹念医師のことが大好き。内視鏡の腕にも、男としても惚れ込んでいる。
黒髪短髪、元野球部のノリを今でも引きずっている。


♡丹念 愛(たんねん まなぶ) 38歳

消化器内科の医師。
内視鏡を得意とする、内視鏡指導医。
190センチの長身。肩幅が広く男らしい肉体の持ち主。検査に入ることが多いので、白衣ではなくスクラブを着用。黒のロングヘアで、後ろ手に一本に結えている。
野池にだけは厳しい。


♡瀬戸 光一(せと こういち)38歳

救命救急医。激務で徹夜続きでも涼しい顔で働く体力の鬼。
肌艶がよく、いつもキラキラしているイケメン医師。
茶髪。真ん中分けのウェーブヘア。
内科医の丹念とは同期で、いつも嫌味を言い合う仲。
他の人には分け隔てなく優しいが、丹念にだけは違う態度。


~~~~~~~~~~~




『内視鏡専門医』(SIDE 野池 智彌)


丹念先生の内視鏡の技術は素晴らしい。

研修医時代に志願して初めて検査を受けて以来、俺は彼の技術の虜になった。
痛みが少ないのはもちろん、スムーズな検査進行で、あっという間に検査が終わる。


その後も先生の検査には何度も立ち会わせてもらっているが、ポリープの切除技術は素晴らしい腕前で、何度見ても惚れ惚れしてしまう。

もう少し見ていたいのに、短時間で検査が終わってしまうので、残念に思うくらいだ。


研修医時代、本当は循環器内科を希望していたけれど、
丹念先生の腕に惚れ込み同じ技術を習得したいと専攻を消化器内科へ変更した。

彼は内視鏡のプロ。医師に内視鏡の指導をしている、内視鏡の専門医だ。


「今度いつ検査してもらえますか?」

「は?まだ数ヶ月しか経ってないだろ。一年後だな。検査だって体に負担がかかるんだ、お前は若いし頻繁にやる必要はない。」


丹念先生は俺に特別、厳しい。
他の後輩医師には乱暴な言葉を使わないし、質問にもきっちり答える。
俺に対してだけは、自分で考えろと突き放したり、すぐに理解できないとイライラして乱暴な言葉遣いになる。

それが嬉しかった。

特別厳しくされるというのは、特別期待されているということだ。





♢♢♢♢♢♢




「お疲れ様。今日はサンドイッチ?」

「そうっす。卵が良かったんですけど、売り切れで。ミックスです。」


救命救急の瀬戸先生は、ランチ仲間だ。
職員専用の食堂で、時々一緒になる。

救命救急なんて頼まれても絶対やりたくないと思うくらい、精神的にも肉体的にもキツイ科にいるのに、瀬戸先生はいつも涼しい顔をして働いている。
徹夜も多いし、ほとんど家に帰れない、なんていいながら、いつだってキラキラした艶肌。笑顔。
この病院の看護師の半数は瀬戸先生が好きなんじゃないかというくらい、モテる。

医者は体力が無ければ務まらないし、精神力も人並みでは無理だ。

彼は人並外れた、桁違いのバイタリティを持っていて、俺は心底尊敬している。


「最後に家に帰ったのいつですか?」

「うーん、4日前?」

「昨日結局帰れなかったんですね。」

「あの後急患が立て続けに入って、さっきようやく落ち着いたところ。」


病院の仮眠室にはシャワーもあるし、ベッドもある。
それでも家に帰れないというのは、身体をしっかり休めることができないし、食事も偏る。

瀬戸先生はそんなこと少しも見えない、いつものキラキラした笑顔だ。



「化物並みの体力っすね、瀬戸先生・・・」


「まぁね、体力にはそこそこ自信あるよ、俺は。」



彼に特別な感情を抱いていなくても、ドキッとしてしまうようなイケメンスマイル。



思わず見惚れてしまっていた。





♢♢♢♢♢♢




「また瀬戸のとこ行ってたのかよ。」

「行ってたんじゃなくて、食堂でたまたま会ったんですよ。」

「ふうん。」

「瀬戸先生って若いし体力化け物級ですよね。徹夜明けでもキラキラしてるし・・・」

「キラキラ?チャラチャラの間違いだろ。あいつは学生時代からずっとあんな感じだ。」

丹念先生が眉間にシワを寄せて、ジロリと俺を見た。



丹念先生と、瀬戸先生は同期で、学生時代から仲が悪いらしい。


過去、2人の間に一体何があったんだろう?

聞きたいけど、聞ける雰囲気じゃない。



♢♢♢♢♢♢




「おい、智彌。俺の学会の資料、どこやった?」

丹念先生は、仕事がめちゃくちゃできるくせに、私生活は信じられないほどだらしない。

あれほど難しいことを毎日たくさんこなしているのに、普通のことが全然できない。
できないというか、やらないと決めている。

掃除、洗濯、料理。
家事全般は毎週家政婦を雇っていて、全てやってもらっている。

医者としては優秀すぎるほどだけど、人間としてはレベル1って感じだ。

「資料っすか?俺触ってないですよ。」

「触ってないじゃねぇよ。どこにあるかお前が把握しとけ。」

無茶なことを平気で言う。
感情のコントロールが苦手だ。

俺の前では言いたい放題、やりたい放題。
まるで子どもみたいだ。

今はイライラ期らしい。
時々一日中イライラしている日があって、少し経つとまた落ち着く。

仕事でも家でもイライラして俺に八つ当たりするけれど、セックスの時は優しい。
そのギャップがたまらない。


俺と丹念先生は、先月から一緒に暮らし始めた。

一緒に、と言っても部屋は完全に別だし、同棲というよりはルームシェアに近い。
俺の熱烈なアプローチに折れた形で恋人同士になってから、先生は毎日車で家まで送ってくれて、それが大変だからという理由で一緒に暮らすことになった。

一緒の時間を増やしたいから、とかそういう理由だったらもっと良かったけど、贅沢は言わない。

先生と一緒に暮らせるだけで、俺の人生は薔薇色だった。
職場でも家でも一緒に居られるなんて、夢みたいだ。



♢♢♢♢♢♢


「あいつと一緒に暮らしてるの?」

いつもの昼休み、瀬戸先生と一緒に卵サンドを食べていたら、急にそう聞かれて驚いた。


「え?あ、あ~、え?」

あまりに急な質問だったので、返答に困る。

丹念先生と一緒に暮らしていることは、職場では秘密にしていた。


上司と部下。
職場恋愛は面倒なことが多い。



「智彌って本当にわかりやすいね。」

瀬戸先生はトマトジュースを飲みながら、頬杖をついてふっと笑った。



彼は最近俺のことを「智彌」と下の名前で呼ぶ。
彼が言うととても自然で爽やかなので、すんなりと受け入れてしまう自分がいた。


「丹念と一緒に帰ってるから、そうなのかなと思って。安心していいよ、誰にも言わないから。」


「あ、ありがとうございます・・・!」


「その代わり、俺には色々聴かせてよ。」


瀬戸先生がいきなり俺の手に触れてきた。

綺麗な指だな~なんて、場違いなことを考えてぽかんとしていると、後ろから頭を叩かれた。


振り返ると丹念先生が俺の頭に手を置いて、瀬戸先生を睨んでいる。


「瀬戸、俺の部下に何か用か?」


「丹念先生、怖い顔してどうしたんですか?」


瀬戸先生の他人行儀な口調。

この二人はいつもこうだ。学生時代からお互いをよく知っていて意識しまくりなくせに、他人行儀。



「ただ一緒にランチしてただけですよ。嫌だなぁ。」

瀬戸先生は笑顔を絶やさないけれど、目が全然笑っていない。




俺は二人の間に挟まれながら、卵サンドを頬張り、気まずいランチタイムを過ごすことになった。




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