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第二章 ここほれニャンニャン

第9話 ダンジョン攻略の相談

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 ビビは、ずっとダンジョンの入口を見つめている。
 だが、お腹が鳴り始めた。

『お腹、空いたニャ。おやつ食べて、寝たいニャー』

「今日はここまでにして、帰ろっか」

『はいニャー』
 
 ひとまずダンジョン探索は、後日に持ち越す。ビビもオネムだし、ボクは明日も仕事がある。

 

 翌日、ボクはベルさんの元へ相談に向かった。経験者でトップランカーであるベルさんの家に、興味もあったからだ。「いつでも遊びに来てね」と、許可もいただいていたし。

「こんにちは」

 隣のエリアに住む、ベルさん宅にお邪魔する。

「あら、いらっしゃい」

「ワン」

 ドーベルマンニンジャのナインくんも、出迎えてくれた。
 ボクに、アゴをなでさせてくれる。

「これ、ウチで穫れた薬草です。ポーションの足しにしてください」

「ありがとう! ポーションって消耗品だから、結構費用がかさむのよ!」

 ベルさんも畑をもらっているが、農作業はやっていない。いずれ誰かを雇って、外部生産になるという。

「いつでも言ってください。いくらでもポーション用の薬草をあげますから」

「いいの? うれしいわ」

「それにしても、すごいお部屋ですね」

 ボクが住んでいるお家より、立派なお部屋である。
 戦利品を飾るスペース、いわゆる『祭壇』まであった。

「ボクの家なんて、それこそ豆腐ハウスですよ」

 豆腐ハウスとは、四角いだけの家を指す。建築初心者の家は、まず豆腐ハウスになってしまう。寝床を作ることしかできない。

「そのほうが立派よ。あたしなんて作るもセンスも余裕がなかったし、ドワーフに外注しただけだわ。自分で作ったほうが、愛着も湧くってものよ」

 ベルさん的には、祭壇を作っただけで力尽きたという。それ以外はすべてドワーフ産で、自分の城という自覚はないらしい。

「あたしは戦闘職をやっていきたかったから、生産はさっぱりなの。生産職の人の話を聞くと、そっちはそっちで楽しそうだなとは思うわ。あなたも生産職に片足を突っ込んでいるみたいだし、お話が興味深いわね」

 隣の芝生は青く見えるというけど、そのとおりなのかも。

「ケント、あなたはそのまま自由に生きていって。そのほうが楽しいから」

「ありがとうございます」

 ボクがあいさつをすると、ビビも「ニャア」と鳴いた。

「それで、ダンジョンに行きたいって話だけど?」

「はい。森の奥にダンジョンがあったので」

 入る前に、攻略勢の意見を聞きたいと思ったのである。

「別に危険性はないわ。自由に入ってもいいんじゃない?」

「ダンジョンで気をつけるべき、トラブルなんてのは?」
 
「うーん……人に聞かないことね」

 ベルさんが、そう言い切った。

「色々と行き詰まってから、経験者には聞いたほうがいいわ。でないとこちらが、攻略の面白さまで奪ってしまうから」

「そういえばそうですね。気が付きませんでした」

「いえいえ。責めているわけじゃないのよ。あたしも、あなたにはこの世界を目一杯楽しんでもらいたいの。あたしに質問したのも、ビビちゃんを心配してのことだろうし」

「そうですね」

 ビビに危険が及ぶなら、できるだけ避けたかったのは事実だ。
 
「危ない目にあわせたくないなら、準備していけばいいわ。あなたには薬草畑があるでしょ?」

「そうか。ポーションの生産」

 このゲームは【錬金】というスキルを取ると、自作でポーションが作れる。最初は店売りよりショボいポーションしか作れない。

 スキルは戦闘・生産のどちらも、使い込んでいくうちに成長をしていく。
 
 練習してスキルが育っていくうちに、ポーション作りも上手になるのだ。

「そうね。スキルを消費することになるけど、無料のポーションを作ってみる手もあるわね」

【錬金】スキルは鍛冶や錬成などにも使えて、できることが多い。その分、大量のスキルポイントの消費を要求される。
 
 今後もポーションは、買ってしまってもいい。
 とはいえ、せっかく畑で薬草を育てているんだ。
 この際、ポーションを作れるようになってもいいかも。

「なんだか、あたしがあなたの作ったポーションを求めていると思うかもしれないけど」

「いえいえ。ボクの手作りでよければ」

「なにをいうの? ケントの作ったポーションなら、ノドから手が出るほどほしいわ。どんな効果を持つのか、楽しみでしょうがないし」

 ボクって、そんなに器用な男に見えるのだろうか?

「遊んでみて、わかったことがあるの。このゲームって、なにかに特化するより、色々試してみたほうが楽しいっぽいのよね」

「急いで攻略するゲームじゃ、ありませんからね」

 PペットRランFファクトリーのメインコンセプトは、動物と遊ぶことだ。普段からそばにいるペットと、もっと心まで近づきたいという願いが込められている。
 
「だから、ケントのように色々な場所に行ったり、たくさんのスキルを学んだほうが、できることが増えるわ」

「器用貧乏になりませんかね?」

「脱線しまくって行き詰まるほど、このゲームの難易度は高くないわよ。きっと寄り道も前提に作られているわ」

「そうなんですね」

「ええ。トップランカーの言うことを信じてみて」

「ありがとうございます」
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