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アリス IN 異世界日本

サーシャの頼み事

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【城内休憩室】
「そうですか、レイド叔父様にお会いしましたか…元気にしておられましたか?」

城下町の商店街から帰ってきたヒイロ達を姫であるケイトスが出迎えてくれて、休憩室で紅茶とお菓子を出してくれた

「ロード王とは違う方向性で国の行く末を心配している。そんな感じに見えましたね」

「お父様も叔父様も仲違(なかたが)いなどせずに協力し合ってくれたら、もっと国政は良くなると思うのですけれど…」

ロード王は国政に励んでいて兄のキングスは国外からの来客をモテなしている為、ケイトスが話し相手になってくれているのだが…上手くいかない人間関係にヤキモキしている様だ


「そうだ!そのレイドから聞いたんだけど、何でも明後日にコロシアムで武闘会が開かれるって話は本当なのかい?……実は、その彼に雇われているキメラの娘に喧嘩を売られてね…そこで決着を付けるから、わたし達にも出場しろ!って言われちゃったのさw」

カルーアは合成生物(キメラ)のキッチュから言われた話を思い出し、ケイトスに武闘会の事を質問した

聞いた通り武闘会は明後日開かれ、8組みの出場者で競うようだ。午前中に1回戦の4試合、昼の休憩を挟んで午後から残りの3試合をする様だ。キングス王子はその大会の為に国外から招集に応じてくれた、客人の相手をしているらしい

「カルーアさんも出場されるのですか?」

「うん、まぁ…そのキッチュって娘がしつこくてね……ヘパイトスさんの【月下美人(エリュシュオン)】が有れば【消去の魔女】とも戦えるかも?
なんて、余計な事を言わなきゃ良かったよ」
 

「( °◽︎° ;)えっ!?…あの【消去の魔女】相手にですか!?…そうなんですね。ならカルーアさん達の出場枠を空けるように、お父様に伝えておきますね。皆さんは夕食までくつろいでいてください」

そう言うとケイトスは、玉座の間で国政に励んでいる筈のロード王の元へ向かった。出場する事になってしまったカルーアに、ダークエルフのミントスが話し掛けてきた

「なぁエルフっ娘。街にそんな凄い杖があったのか?」

「そうだよ!そうだねぇ…エリエスが持っているエクスカリバーくらいの潜在能力(ポテンシャル)を感じたよ」

「マジでか?あのエクスカリバーに匹敵するほどの杖か…それは1度見てみたいな…なぁ、案内してくれないか?」

異世界勇者の優輝の世話係になってからは、あまり自己主張をしなくなったミントスが珍しく食い付いてきたので、カルーアは付き添う事にした

「また、出掛けるの?」

正直コハラコはめんどくさい!って顔をしている

「うーん…そうだ!帰りに牛カツ屋があったろ?…そうそれ!美味しそうな肉の匂いがしてたろ?帰りにアレを奢ってあげるけど?」

「いくー!カルーア優しい!カルーア大好きなの!」

吸血姫とはいえ5歳児のコハラコは、大好きな肉の餌付けにアッサリ引っかかったようだw

「サーシャはどうするんだい?来るんだろ?」

カルーアは当然の様にサーシャも誘った。いつもなら100%付いてきてくれるから。なのだが…

「あの、すみませんですの。サーシャはお兄様と大事な話がしたいですの。だから、残りたいのですの…」

家族が大好きなサーシャが、こういう誘いを断るのは実に珍しい事だった。それ故にカルーアは、それ以上は誘わず留守番を頼んだのだが…

「サーシャちゃんが残るなら、ミクイも残る!」

当然の様にサーシャ大好きなミクイも残る!と言い出したのだが…

「ごめんなさいですの。お兄様と2人で話したい事ですの…遠慮して欲しいですの」

再び断られたにも関わらず、サーシャの元に残りたい!と駄々をこね始めたミクイを、ミントスと優輝が掴まえ引きずるように出かけて行った

「ミクイ、残りたーい~」

ミクイは最後まで喚いていた。ヒイロは、何時になく真剣な表情のサーシャを連れて、自分達に用意された宿泊用の部屋へ向かった



【お客様用宿泊室】
「ずいぶん深刻な感じに見えたけど、よっぽどの話なのか?」

ヒイロは、いつもと様子が違うサーシャに優しく質問した

「先程レイドさんが、難民や孤児に仕事を与えたり教えたりしてる。って言ってましたよね?」

「そうだな…時には奴隷を解放したりして、そういう子らの面倒を見ている。って言ってたな」

「もし、お兄様達がキッチュさん達に勝ったなら、レイドさんが世話していると言う奴隷出身の子達に会いたい。と頼んで欲しいですの…」
 

「もしかして、知り合いの子とか居たりするのか?」

話が進むほどサーシャは真剣な顔つきになっていく。彼女にとって、かなりの理由があるのを察した

「サーシャは奴隷市場に2年ほど居ましたの。亡くなった義父に買われるまで…」

「前にそう言ってたな。その奴隷市場に居た時に、知り合った子を探しているのか?」

「はい。正確には今の今まで忘れてましたの。その奴隷市場でサーシャを姉の様に慕ってくれたひとつ年下の子が居たんですが…1年が過ぎた頃クラウンの貴族に買われて行ったらしくて…それ以来会ってなくて…もし、あの子が居るのなら…絶対助けてあげたいんですの!」

顔をあげたサーシャの瞳から涙が流れていた。よほど仲良くしていた子なのだろう。ヒイロは勝っても負けてもレイドに頼み込んでみる。とサーシャに約束した

「ありがとうですの!ヒイロお兄様、大好きですの!」

いつものサーシャからは掛け離れた乙女らしい必死な頼み事だった。凄く不安なのだろう、サーシャはヒイロの服を掴んで震えている

「サーシャ大丈夫だ。俺に任せておけ」

「お兄様…」

サーシャは顎(あご)を上げ、ヒイロを真っ直ぐに見つめると…そっと目を閉じた

「んむっ…」

何時になく、しおらしいサーシャに心揺さぶれたヒイロは彼女に優しくKissをした。おそらくカルーア達が戻るには、まだ1時間は有るだろう。ヒイロはサーシャの肩を掴み、布団の上に寝かせた



続く
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