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イシス王国&ドルイド王国編

受け入れる身体(うつわ)

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【昼の会議室】
ユーカは主要人物を集め食事をしていた。三姉妹やアドル、フレメイル兄妹、そしてシュバッツ家の者たち

「あれ?ランスロットが居ないわね…」

ユーカの従者として、常に周辺警護している彼の姿が珍しく無かった「すこしヨウジがあるから…」と、言って出かけたリリアも戻っていない


「仕方ないわ、それじゃ始めます
今回は苦しい戦いだったけど、本当にみんな頑張ってくれたわ。ありがとう、王女として感謝の意を表します!
生きて帰って来れなかった者も沢山いますが、彼等の想いを胸に刻み込み、私、ユーカ・レアは今後のイシスをより良い国へと導きます!ここに居る皆さん、今後もチカラ添えを宜しくお願いします!」

16歳でありながら、イシスの王女としての声明を伝えたユーカ。それは【拡張音域(ワールドヴォイス)】で城内に居る者全てに伝えられた

「さて、今回の戦いは総員の奮闘あってこその紙一重の勝利となりましたが……特筆すべきは、【ドルアーガ王国】から参戦していただいた臥龍族ドレイクの働きが大きかった事は、皆も良く知っているでしょう
この戦いに参戦していただく条件として、我がイシスとドルアーガ王国の姉妹都市提携を望まれています。王女としても個人的にも、私はこの件に前向きに取り組み実現致します!友好国と手を取り合い、更なるイシスの繁栄を…」

「バタンっ!!」

ユーカ王女の表明中、会議室のドアがけたたましく開けられた

「お取り込み中、申し訳ありません!僕の姉が危篤状態なんです…お願いします、助けてください!」

息を切らせたランスロットが、会議室に飛び込んで来た!



【ホムンクルス】
「じゃあ…リリアの妖精の姿は、本来は人間であるランスロット君のお姉さん。と、言う事なんだね?」

「はい、姉は小さい頃から生物学に秀でていて、錬金術にも長けていました。しかし、姉は生まれながらの不治の病で、長くは生きられない。と言われていました
……………………
5年前の前回、ベイ・ガウザー侵攻の時、城の周囲の警戒任務を終え家に帰ると…姉はベッドの上で息を引き取っていました
それと、姉が創作していた妖精も消えていました。先程、妖精の姿の姉から聞いた話では、ホムンクルスの寿命が来たようだと…」

つまり、ランスロットの姉リリアは、病弱な肉体で生まれ病魔に蝕(むしば)まられていた為、自作の妖精(ホムンクルス)に転移して、今日まで生き延びていた。らしい

「じゃあ、リリアはホムンクルスの寿命と共に死ぬしかないと?」

アドルは5年付き添ったリリアの危機に、激しく動揺していた。そこへ、回復長の女神官が立ち上がった

「その事なんですが…新しくリリアさんの魂を受け入れる器(うつわ)があれば、彼女は生き延びられると思います」

「でも、そんな都合良く、身体は生きているけど魂の抜けている身体なんて見つかる…あっ!」

ユーカは言いかけながら、ある事に気が付いた!会議室内のほぼ全員がカルーアを見た

「えっ、なんだい?…あっ!?まさか…母さんの身体をリリアさんに提供しろと…言うのかい?ちょっと、待ってよ…わたしは母さんと数年ぶりに再会したばかりなんだよ!なのに…」
 

数年ぶりに再会した母親は、兵器に利用されるだけの生ける屍だった。…とは言え救出できた翌日に、今度は人助けの為に再びその肉体を提供させる。ソレの許可を娘であるカルーアに迫られている。戸惑って当然だった。その時…

「待ってくれみんな!ユーカ、口を挟んですまないが…ソレを成功させるには、もうひとつ問題が無いか?」

オルガスが立ち上がった。兄の言葉に、ある事に気が付いたチェイム

「兄が言おうとしている事を、代わりに説明させていただきます。リリアさんは最初、自分で作った妖精の身体に、自ら開発した秘術を使って転移して生き延びました
今回も肉体が限界を迎えています。仮に新しい身体…つまり、カルーアさんの母親に転移出来たら生き延びれる。と、しましょう
ですが、かつて妖精に転移したと言う、リリアさんが編み出し行った秘術。今、リリアさんが意識不明の危篤状態で、誰がそれを代行して成功させるのですか?」

「あっ……あぁ!!」

会議室内の全員が、転移処置に重大なピースを如何にして埋めるのか?ソレに対する大きな問題に、ようやく全員が気が付いた

「宜しいでしょうか?第1師団長のアンネットです」

彼女はアイザー率いる第1師団の三賢者のリーダーである、アンネット・バレス・モアネット

「私たち三賢者は、リリアさんの死後…つまり5年前、彼女の葬儀の後の遺品整理で呼び出され、彼女が研究していた数々の術式を研究してきました。ある程度その秘術を解析しております。おそらく私たち三賢者なら、リリアさんの開発した秘術が代行出来ると思います」

「おおっ!」

リリアの延命に一筋の光が差し込んだ

「……後は、わたしの決断次第。って訳だね?…母さん…」

「カルーアお姉様、サーシャはお姉様の決断を尊重します。今の雰囲気だと、お姉様のお母様の肉体を献上するのが当然のようですが…サーシャはお姉様がどんな判断をしても…絶対に寄り添いますの!」

姉想いの優しいサーシャの気配りだった。反対に、カルーアの姉のアリスは悩んでいた。自分も姉としては、サーシャの様にカルーアの気持ちを尊重したい!
しかし、愛するアドルのパートナーのリリアを助けたい。という気持ちもあった。アリスは板挟みになっていた

「…はっ!はははは…みんな、何をそんなに心配そうにしているんだい?…母さんの肉体を提供するに決まっているじゃないか!リリアさんには、私達姉妹も凄くお世話になっているんだからね!」

そのカルーアの決断に、ランスロットは彼女にすがりつき何度も感謝の言葉を述べていた。急遽、地下施設の魔道研究部屋に妖精リリアとカルーアの母親の身体が運ばれ、三賢者により魔法陣が描かれ、リリアの転移魔法の準備が始まった

「ごめんなさい、ドレイクさん。こちらの事情で、姉妹都市提携の話がまた先延ばしになってしまいました」

「はっはっは!なぁに構わんさ!その分、美味い料理を堪能させて貰うぜ!」

「ドレイクは食いしん坊だから、好都合よね~!」

調印式の遅れをフレメイル兄妹の2人は、快く理解してくれた
魔道研究部屋には魔法に長けた者とランスロットだけが入り、転移処置が始められようとしていた



続く
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