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恐怖の大王(1)
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「このヒップアタックって攻撃、何故普通の攻撃よりもダメージが出るのかしら」
十二月二十五日、日曜日。クリスマス。世間的にも私的にも休日の今日、フローレンスと共に積みゲーの消化をしていた。
「それは、大きなおしりだから大きなダメージが入るんですよ」
「説明になってないわ。槍で刺した方が痛いでしょうに」
フローレンスのゲームプレイは拙い。それを横から指示するのはとても気持ちがいい。世の中の指示厨もこんな気持ちなんだろうか。だとしたらあまり責める気にはなれないな。
ボスモンスター一体と向き合う四人のキャラ。そのうちの一人の剣による斬りつけ攻撃が繰り出される。すると、ボスモンスターが倒された。フローレンスはリザルトを殆ど確認することもなくテキストを送る。戦闘にはあまり興味がなさそうだ。
街に戻ると町人に話しかける。ここはじっくりと読み込んでいた。一人一人、マップの隅から隅まで町人を探し、街を一周した後は宿屋で夜にしてからもう一度マップを巡る。モーションの長い動物にも毎回話しかけていた。
実に楽しそうである。
「このゲームは良いわ。ちゃんと人間が生きているもの」
「にしてもくまなく回りますね。モンスターを倒すより楽しいですか?」
「ええ。逆にそっちは味気ないというか、向いてないわね」
フローレンスはターン制の戦闘もそうだけど、アクション全般が苦手に見える。
「アドベンチャーゲームとか好きそうかもですね」
「それはどういったゲームなの?」
「簡単に言うとテキストを読み進めていくだけのゲームで、たまに選択肢が出てきてキャラクターの未来がそれで左右されるんです」
「戦ったりはしないのね?」
「そういうコマンドとかはないですね。それとマップを動き回ったりもないです」
「今やってるようなこともないの?」
キャラクターを動かし回って見せるフローレンス。
「基本的には」
「じゃあ好きじゃなさそうね」
「そうなんですか?」
「これも好きなのよ」
一見時間泥棒なだけの要素も、時間が膨大にある魔女にとってはお楽しみ要素か。
いや、私も子供の頃はゲームをしてるってだけで楽しかった。理解できないゲームはあったけど、クソゲーなんて一つもなかったな。
「私もアドベンチャーゲームはあんまり好みじゃないんですよね。操作してる感が薄いから。でもカードゲームもできるギャルゲーとかは好きだから続編出て欲しいんですよねー」
「知らないわ」
素っ気なく言ってゲームプレイに戻った。
街でやることもなくなり、次なる街へと旅立つフローレンス一行。モンスターとエンカウントした。
「このぱふぱふって何の意味があるのかしら。モンスターには効き目はないと思うのだけど」
「私には効くからフローレンス、やってみませんか?」
ぽん、と頭を叩かれた。
「いたた」
「悪い癖よ」
麗しい流し目で見られた。
気を取り直してプレイに戻るフローレンス。シンボルエネミーを避けるようにして洞窟を進んで行く。必然、レベルが徐々に足りなくなっていくけど、そこは装備で補っていた。
薄暗い洞窟を進んでは戻る。それは迷っているわけじゃなく宝箱を探し回っているようだ。
「宝箱はちゃんと全部取っていくんですね」
「強い武器や防具が入っているから。私のプレイスタイルだとこういうのを拾っていかないとモンスターに負けてしまうわ」
思ったよりもゲームに適応した考え方をしていた。
「これが楽しいというのもあるわね。外れの道にも意味があるのよ」
全ての場所を見回って洞窟を抜けた。山と山の間に位置するそこには荒野が広がり、その奥に村がある。
荒野を探索したのち村に入った。
さっきと同じように人々に話しかける。村を回ると温泉が名物のようだった。
「温泉いいなあ」
「そうね」
フローレンスも同意してくれた。
「二人で行きません?」
「温泉はいいけど、それを目的にしていく気にはなれないわ」
「それはどういう意味ですか?」
「温泉というのは何かのついでに、必然性なく入るものなのよ」
「ふうん? そういうものですか」
よくわからない。私は入れたらそれでいいや。
十二月二十五日、日曜日。クリスマス。世間的にも私的にも休日の今日、フローレンスと共に積みゲーの消化をしていた。
「それは、大きなおしりだから大きなダメージが入るんですよ」
「説明になってないわ。槍で刺した方が痛いでしょうに」
フローレンスのゲームプレイは拙い。それを横から指示するのはとても気持ちがいい。世の中の指示厨もこんな気持ちなんだろうか。だとしたらあまり責める気にはなれないな。
ボスモンスター一体と向き合う四人のキャラ。そのうちの一人の剣による斬りつけ攻撃が繰り出される。すると、ボスモンスターが倒された。フローレンスはリザルトを殆ど確認することもなくテキストを送る。戦闘にはあまり興味がなさそうだ。
街に戻ると町人に話しかける。ここはじっくりと読み込んでいた。一人一人、マップの隅から隅まで町人を探し、街を一周した後は宿屋で夜にしてからもう一度マップを巡る。モーションの長い動物にも毎回話しかけていた。
実に楽しそうである。
「このゲームは良いわ。ちゃんと人間が生きているもの」
「にしてもくまなく回りますね。モンスターを倒すより楽しいですか?」
「ええ。逆にそっちは味気ないというか、向いてないわね」
フローレンスはターン制の戦闘もそうだけど、アクション全般が苦手に見える。
「アドベンチャーゲームとか好きそうかもですね」
「それはどういったゲームなの?」
「簡単に言うとテキストを読み進めていくだけのゲームで、たまに選択肢が出てきてキャラクターの未来がそれで左右されるんです」
「戦ったりはしないのね?」
「そういうコマンドとかはないですね。それとマップを動き回ったりもないです」
「今やってるようなこともないの?」
キャラクターを動かし回って見せるフローレンス。
「基本的には」
「じゃあ好きじゃなさそうね」
「そうなんですか?」
「これも好きなのよ」
一見時間泥棒なだけの要素も、時間が膨大にある魔女にとってはお楽しみ要素か。
いや、私も子供の頃はゲームをしてるってだけで楽しかった。理解できないゲームはあったけど、クソゲーなんて一つもなかったな。
「私もアドベンチャーゲームはあんまり好みじゃないんですよね。操作してる感が薄いから。でもカードゲームもできるギャルゲーとかは好きだから続編出て欲しいんですよねー」
「知らないわ」
素っ気なく言ってゲームプレイに戻った。
街でやることもなくなり、次なる街へと旅立つフローレンス一行。モンスターとエンカウントした。
「このぱふぱふって何の意味があるのかしら。モンスターには効き目はないと思うのだけど」
「私には効くからフローレンス、やってみませんか?」
ぽん、と頭を叩かれた。
「いたた」
「悪い癖よ」
麗しい流し目で見られた。
気を取り直してプレイに戻るフローレンス。シンボルエネミーを避けるようにして洞窟を進んで行く。必然、レベルが徐々に足りなくなっていくけど、そこは装備で補っていた。
薄暗い洞窟を進んでは戻る。それは迷っているわけじゃなく宝箱を探し回っているようだ。
「宝箱はちゃんと全部取っていくんですね」
「強い武器や防具が入っているから。私のプレイスタイルだとこういうのを拾っていかないとモンスターに負けてしまうわ」
思ったよりもゲームに適応した考え方をしていた。
「これが楽しいというのもあるわね。外れの道にも意味があるのよ」
全ての場所を見回って洞窟を抜けた。山と山の間に位置するそこには荒野が広がり、その奥に村がある。
荒野を探索したのち村に入った。
さっきと同じように人々に話しかける。村を回ると温泉が名物のようだった。
「温泉いいなあ」
「そうね」
フローレンスも同意してくれた。
「二人で行きません?」
「温泉はいいけど、それを目的にしていく気にはなれないわ」
「それはどういう意味ですか?」
「温泉というのは何かのついでに、必然性なく入るものなのよ」
「ふうん? そういうものですか」
よくわからない。私は入れたらそれでいいや。
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