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冬のくねくね(7)
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「お、おつマナ~」
言い慣れない終わりの挨拶をする。少しすると画面が切り替わりアニメーションが流れた。最後まで再生されると配信が閉じられた。
「終わった?」
「終わりよ。ありがとね」
隣に座る玲の返答を受け、はあ、と大きなため息を吐いた。
「疲れた?」
「疲れた」
自分にできる最大限でリスナーに気を遣い媚びへつらい持て成しての配信。それも玲のチャンネルでコラボでだ。同接も何故かマックスで一万を超えてしまっていて気が休まるタイミングがなかった。私は私で大々的に努めて告知したけど、ここまで人が集まるのは玲の持てるポテンシャルのせいだろう。
「いやあ、凄いね。最初と最後のヤツ」
なんと、一配信に短いオープニングとエンディングがつけられているのだ。
「あんたもやったら?」
「いや、いい」
そんなに肩肘張って配信したくない。
「まあでも、数字出そうとするならそのくらいしないとダメなのか」
「そうね。それに今日みたいに目新しいこともね」
まるで別世界。
「これも全部くねくねのせいだ」
「くねくね、ね。まさか自分の中にあんな世界があったなんて」
玲の精神世界が晴れ渡った後の話。普通に玲に先を越されてくねくねは死んでいた。
今になってわかったことだけど、精神世界が外敵を殺す機構を持ってないはずもなく、晴れたその瞬間に殺せたらしい。
「所々記憶が曖昧だけど、あんたと勝負したことははっきり覚えていたわ」
「何でそこだけ覚えてるの」
そんなわけで、こんな状況になっていた。
「今になって何なんだけど、そっちのチャンネルは大丈夫なの? リスナーの反応とか」
「大丈夫じゃない? 何かあっても趣味でやってるようなものだし」
「趣味って生活はどうしてるのよ。当然、バイトとかもしてないんでしょ?」
「当然って。いや、バイトみたいなのはしてるよ」
「バイトみたいなの? え、いかがわしいこと⋯⋯?」
「違うよ。ああでも、人には言えないかな」
伺うような目。心配されたようだ。
「くねくねみたいなのを殺す仕事だよ」
「危なくないの?」
「危ないけど楽しいよ。まあいいじゃんそんなこと」
「楽しいならいいわ。あんたって、嫌なことしてたら消えちゃうでしょ」
「消えちゃうね」
「じゃあいいのよ」
何か知った風に言う玲。実際、私のことを私以上に知ってたんだろう。
あの頃の日々、玲が思う所は沢山あっただろうけど、今振り返ってみれば散々、玲に対して甘えに甘えまくっていたように思う。子が親に、妹が姉にするように。
それは友人関係と言えるんだろうか。
「ねえ。私達って友達?」
大人にもなって問うようなことじゃない。私の恥。これは何も考えずに生きてきたツケだ。
「ふふん。あんたはあんたで何か考えてるんだろうけど、私はあんたに甘えられることに優越感を抱いていたわ。そんなの友人関係に決まってるでしょ?」
わかっていた答え。
改めて、一番最初の時に話しかけて良かった。長生きしようとも、きっと私は今日のことを忘れないだろう。
言い慣れない終わりの挨拶をする。少しすると画面が切り替わりアニメーションが流れた。最後まで再生されると配信が閉じられた。
「終わった?」
「終わりよ。ありがとね」
隣に座る玲の返答を受け、はあ、と大きなため息を吐いた。
「疲れた?」
「疲れた」
自分にできる最大限でリスナーに気を遣い媚びへつらい持て成しての配信。それも玲のチャンネルでコラボでだ。同接も何故かマックスで一万を超えてしまっていて気が休まるタイミングがなかった。私は私で大々的に努めて告知したけど、ここまで人が集まるのは玲の持てるポテンシャルのせいだろう。
「いやあ、凄いね。最初と最後のヤツ」
なんと、一配信に短いオープニングとエンディングがつけられているのだ。
「あんたもやったら?」
「いや、いい」
そんなに肩肘張って配信したくない。
「まあでも、数字出そうとするならそのくらいしないとダメなのか」
「そうね。それに今日みたいに目新しいこともね」
まるで別世界。
「これも全部くねくねのせいだ」
「くねくね、ね。まさか自分の中にあんな世界があったなんて」
玲の精神世界が晴れ渡った後の話。普通に玲に先を越されてくねくねは死んでいた。
今になってわかったことだけど、精神世界が外敵を殺す機構を持ってないはずもなく、晴れたその瞬間に殺せたらしい。
「所々記憶が曖昧だけど、あんたと勝負したことははっきり覚えていたわ」
「何でそこだけ覚えてるの」
そんなわけで、こんな状況になっていた。
「今になって何なんだけど、そっちのチャンネルは大丈夫なの? リスナーの反応とか」
「大丈夫じゃない? 何かあっても趣味でやってるようなものだし」
「趣味って生活はどうしてるのよ。当然、バイトとかもしてないんでしょ?」
「当然って。いや、バイトみたいなのはしてるよ」
「バイトみたいなの? え、いかがわしいこと⋯⋯?」
「違うよ。ああでも、人には言えないかな」
伺うような目。心配されたようだ。
「くねくねみたいなのを殺す仕事だよ」
「危なくないの?」
「危ないけど楽しいよ。まあいいじゃんそんなこと」
「楽しいならいいわ。あんたって、嫌なことしてたら消えちゃうでしょ」
「消えちゃうね」
「じゃあいいのよ」
何か知った風に言う玲。実際、私のことを私以上に知ってたんだろう。
あの頃の日々、玲が思う所は沢山あっただろうけど、今振り返ってみれば散々、玲に対して甘えに甘えまくっていたように思う。子が親に、妹が姉にするように。
それは友人関係と言えるんだろうか。
「ねえ。私達って友達?」
大人にもなって問うようなことじゃない。私の恥。これは何も考えずに生きてきたツケだ。
「ふふん。あんたはあんたで何か考えてるんだろうけど、私はあんたに甘えられることに優越感を抱いていたわ。そんなの友人関係に決まってるでしょ?」
わかっていた答え。
改めて、一番最初の時に話しかけて良かった。長生きしようとも、きっと私は今日のことを忘れないだろう。
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