上 下
104 / 136

104

しおりを挟む


あちゃ~!!

いつか起きるとは思っていたが、ついにこのときが来てしまった。

レイヴァンとフィガロの遭遇。

「こ~んちゃ☆」と相変わらず微妙にイラッとするテンションで声をかけられたのは昼休み。
中庭でレイヴァンとランチをしていた帰りだった。

気安い感じにへらへらと俺に話しかけてくるフィガロにレイヴァンの機嫌が急降下するのが実によくわかった。
そりゃあもうパラメーターでも出現してるかのようにはっきりと。

起爆ボタンはフィガロが俺の名前を呼んだこと。

「ラファエル」

対抗するようにやけにはっきりと名前を呼ばれた。
俺の腕を掴みながら、視線は睨みつけるようにフィガロを見ている。

あれだ、古風に言うならメンチ切るってやつね。

「この野良猫はなんですか?」

クッと口角をあげてイケメンな冷笑とともに吐き出された言葉に、フィガロの目元がぴくっと動いた。

うっわっ!言ったよ。
本人目の前にしてはっきり言ったっ!!

俺も思ったことあるけど……と内心のツッコミを入れている間にも、馬鹿にしたような笑みを浮かべたフィガロが反撃にでた。

「誰が野良猫だっーの。先輩に対する礼儀ぐらい持ったらどうだ?飼いならされた飼い猫ちゃんよぉ」

「必要な相手はちゃんと選びますのでご心配なく。第一、それを言うならあなたでは?つきまといは迷惑行為ですよ」

「はぁ~あ?!」

「はいはいはい、そこまで!ストップ」

人通りが少ないとはいえ、廊下で喧嘩勃発しそうな二人の間に入って慌てて止める。

つか、どっちもニャンコじゃねーか。
仲良くしろよ。

なんとか宥めてその場は解散した。
だけどその後も顔を会わせる度にシャー!!て言い合いがはじまるようになった。

「ラファエル先輩って猫に懐かれやすいタイプですか?」

「いやまぁ、うーん……どっちかっていうと犬?」

アレンに聞かれた俺の脳裏に浮かんだのは「エルくん!エルくん!」って構ってくる実兄と甥っ子だった。



「うーわ。遅くなった」

窓の外の色にうんざりした声を漏らす。
日直の日誌を届けにいったら、天の助け!とばかりに教師に雑用を頼まれ気づけばすっかり夕方だ。

人気のない廊下を歩いているとやたらフラフラしている女生徒の背中が見えた。
小柄な少女は両手に大きな荷物を抱えている。

前さえ見えないだろうその様子に声をかけるべく足を速めた。
距離があったので追いつく頃には少女は階段を下っていた。

「……っ?!」

ぐらりと荷物が揺れる姿に息をのんで三段飛ばしで階段を駆け下りる。

「危ないっ!」

スローモーションのように両手から投げ出される荷物、踏み外された足と前のめりに傾く身体。
階段の踊り場でギリギリその手を掴んだ。
不安定な姿勢で手摺を掴んだまま、反対の手でグイっと引き寄せる。

大きく息を吐いた。
いまさらながら心臓がバクバクと音をたてる。

手摺から手を離せば嫌な痛みが走った。
どうやら痛めたようだ。

抱き寄せるように抱えてた身体を離し、ざっと全身を見渡す。

「怪我は?」

「ふぇっ、えっ、あの……わたしっ」

小動物っぽい雰囲気をした可愛らしい少女はパニックを起こして半泣きだ。
階段の中空では、咄嗟に魔法で浮かせた荷物が不自然に宙を浮いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・

相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。 といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。 しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

処理中です...