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しおりを挟むあちゃ~!!
いつか起きるとは思っていたが、ついにこのときが来てしまった。
レイヴァンとフィガロの遭遇。
「こ~んちゃ☆」と相変わらず微妙にイラッとするテンションで声をかけられたのは昼休み。
中庭でレイヴァンとランチをしていた帰りだった。
気安い感じにへらへらと俺に話しかけてくるフィガロにレイヴァンの機嫌が急降下するのが実によくわかった。
そりゃあもうパラメーターでも出現してるかのようにはっきりと。
起爆ボタンはフィガロが俺の名前を呼んだこと。
「ラファエル」
対抗するようにやけにはっきりと名前を呼ばれた。
俺の腕を掴みながら、視線は睨みつけるようにフィガロを見ている。
あれだ、古風に言うならメンチ切るってやつね。
「この野良猫はなんですか?」
クッと口角をあげてイケメンな冷笑とともに吐き出された言葉に、フィガロの目元がぴくっと動いた。
うっわっ!言ったよ。
本人目の前にしてはっきり言ったっ!!
俺も思ったことあるけど……と内心のツッコミを入れている間にも、馬鹿にしたような笑みを浮かべたフィガロが反撃にでた。
「誰が野良猫だっーの。先輩に対する礼儀ぐらい持ったらどうだ?飼いならされた飼い猫ちゃんよぉ」
「必要な相手はちゃんと選びますのでご心配なく。第一、それを言うならあなたでは?つきまといは迷惑行為ですよ」
「はぁ~あ?!」
「はいはいはい、そこまで!ストップ」
人通りが少ないとはいえ、廊下で喧嘩勃発しそうな二人の間に入って慌てて止める。
つか、どっちもニャンコじゃねーか。
仲良くしろよ。
なんとか宥めてその場は解散した。
だけどその後も顔を会わせる度にシャー!!て言い合いがはじまるようになった。
「ラファエル先輩って猫に懐かれやすいタイプですか?」
「いやまぁ、うーん……どっちかっていうと犬?」
アレンに聞かれた俺の脳裏に浮かんだのは「エルくん!エルくん!」って構ってくる実兄と甥っ子だった。
「うーわ。遅くなった」
窓の外の色にうんざりした声を漏らす。
日直の日誌を届けにいったら、天の助け!とばかりに教師に雑用を頼まれ気づけばすっかり夕方だ。
人気のない廊下を歩いているとやたらフラフラしている女生徒の背中が見えた。
小柄な少女は両手に大きな荷物を抱えている。
前さえ見えないだろうその様子に声をかけるべく足を速めた。
距離があったので追いつく頃には少女は階段を下っていた。
「……っ?!」
ぐらりと荷物が揺れる姿に息をのんで三段飛ばしで階段を駆け下りる。
「危ないっ!」
スローモーションのように両手から投げ出される荷物、踏み外された足と前のめりに傾く身体。
階段の踊り場でギリギリその手を掴んだ。
不安定な姿勢で手摺を掴んだまま、反対の手でグイっと引き寄せる。
大きく息を吐いた。
いまさらながら心臓がバクバクと音をたてる。
手摺から手を離せば嫌な痛みが走った。
どうやら痛めたようだ。
抱き寄せるように抱えてた身体を離し、ざっと全身を見渡す。
「怪我は?」
「ふぇっ、えっ、あの……わたしっ」
小動物っぽい雰囲気をした可愛らしい少女はパニックを起こして半泣きだ。
階段の中空では、咄嗟に魔法で浮かせた荷物が不自然に宙を浮いていた。
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