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魔法で相手を拘束したまま激しい剣技の応酬を見やる。

剣同士が鳴り合う音を響かせるのはカイルとクロイ。

クロイってのはさっきカイルに対戦を申し込んできた張本人だ。
隣のクラス一の剣の腕前で、やっぱりコイツも男前。なので声援がキャーキャー、キャーキャー凄まじい。

チーム戦なのに俺らはみんな半・観戦中。

いやさ?さっきまでは俺らも頑張っていたわけよ。

勝手に期待されて、勝手にガッカリされるのもしゃくだから、ある程度は期待に応えようと指揮官としての仕事もしたし。
結果、他の奴らは拘束中。

カイルとアダムで翻弄させて、 “そこそこ” 組で奇襲みたいな感じで攻めてみた。

途中、教室の窓から「あっ!兄貴とラファエル先輩っ!!」ってでっけぇ声が聞こえて二階の窓からアレンの顔が覗いた。
ちょうど3、4限の間の休憩時間ってこともあってわらわらと覗きはじめた生徒たちの中にレイヴァンの顔も見えたしね。

そりゃあ良いとこ見せるべく頑張ってもみたわけですよ。

予期せぬだろう猛攻に相手チームは次々動きを封じられ、周囲からは大喝采も頂いた……が、最初っから最後までさくろうするだけってのも野暮ヤボでしょう。

ってことで、最後トリは強者同士の純然たる実力勝負。

「周りは私たちがなんとかするよ。君だってクロイと正々堂々い合いたいだろう?」の一言にカイルも大喜びだったしね。

重なり合った剣がせめぎ合う。
力比べはカイルの方に分があったようだ。

「エバンスチームの勝利!!」

教官の声にわぁぁ!!と声が響いた。

……チーム名が何故か俺の名。

ちょっと前に4限開始のチャイムが響いた筈なのに、教員まで交じって観戦している2階の窓からぶんぶん手を振るアレンの声が聞こえる。
それに返すフリをして、アレンの横に居る彼に向けて小さく手を振る。

きゃあ!歓声が響く中、剣をしまったカイルが掌を向けてくる。
一瞬とまどい、それがハイタッチ待ちであることに気付いてパンッと軽く手を叩き合う。

「そーんな甘い色気振りまくとまたファンが増えっぞ」

「?」

「無自覚かよ」

髪を掻いたカイルに小声で「拗ねられるぞ」と囁かれた。

見上げた先にはつい一瞬前に微笑みかけた時にはほわっと目元を緩めてくれてた表情がちょっと硬くなっていた。
確かにあれは拗ねてる顔だ。

黄色い声援のほとんどはカイルやクロイらに向けられたものだろうに。

「なになにー?エバンスの恋人でも居んの?」

ひょいっと寄ってきたのはアダム。揶揄からかいつつも周囲に聞こえないよう声を押さえているところが微妙に空気を読める奴だ。

軽くあしらえば、上を見上げつつも深くは追及されなかった。
肩付近まで手を挙げられ、アダムや他のメンバーとも軽いハイタッチ。

「やー流石さすがは指揮官」

「オレらの完全勝利だな!ひれ伏すがいい!!」

「まさかあそこでああくるとは思わなかった」

「再戦を要求する!!あとエバンスはこっちのチーム入れ!」

「何度やったって俺が勝つっての!あとラファエルはウチの指揮官ですー」

相手チームや外野も交えてがやがやと盛り上がる中、窓から離れ席に戻っていく生徒たちに紛れて気づかれないようにほんの小さく手を振ってくれたレイヴァンに目元を緩めた。
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