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…ー 
ーーー 
ーーーーーー

パチっ


目を覚ますと横にいたのは、 
上半身裸のロジャーと 
まだ
寝ているマリアンヌだった。

「…え?どゆこと?」 

と起き上がって驚く。
 



私倒れた? 

記憶がない…。 

魔王から攻撃うけたのか? 
 


啖呵を切ってる最中に 
いきなり倒れたので、 
自分でも状況が把握できてない。 



スースーとする私の体をみると 

何を着ていない

「…咲さん、起きたんだね!良かった。本当にごめん。一緒に居すぎて、咲さん魔力ないの忘れてて…」


訓練での、 
瘴気に当てられた事を思い出す。 


じゃあ、この全裸と 
ロジャーの半裸の理由は分かった。 



すくっと 
ダルそうに起き上がるマリアンヌ 

「私とロジャーでしたわ。スワロフは何するか分からないから」
 


そういう彼女?も 
今は男の姿 
、半裸なので出ている所がない。

見目麗しい男性の姿だった。

アダムは 
離れた所で 
ジャスティンの回復を促して、 
治癒魔術を施している。
 



いつもなら恥ずかしがる所が、 
至って冷静だった。
静かに脱がされた服を、また着る。
 

「…ジャン」 

目線をまだ横になっているジャスティンに移す。
 


「…大丈夫だ、少し寝ているだけ、すぐ回復する」 

片腕をあげ、 
無事だと報告するジャスティン



ここは森のどこかなのだろう
 
周りに魔族はいない。
魔王の姿も無い。

ひとまず 
安全な所だと確認し終えて、 
重い口を開く。 



きっと皆が知りたがっていることだ

「…皆に話さなきゃならないことがあるの」

目を瞑っている 
ジャスティンも聞いてくれるはずだ。 


ロジャーとマリアンヌは瘴気抜きで 
疲れた様でその場で、 


アダムは回復魔術の手を止めて 



スワロフはこちらを真剣に見ている。
 


「…魔王いや、明仁はカイトの父親なの…向こうの世界で出会った私を…捨てた男」
 



淡々と口を動かす 
私に 
皆、大きな反応はしなかった。 




もっと批判や罵声があるかと 
思っていたが 
、優しく受け止めてくれる様だった


「そうか!道理でカイト様は魔力が高い訳ですね…魔王の子ですか」

とアダムが 
いつも通りニッコリしながら言った。
 

 
皆に黙っていたのが申し訳なくて 
視界がうっすら涙で滲んでくる。
 



「…ごめん、黙ってて」
 



もしかして、 
魔王の子だとバレたらカイトを 
救出してくれないかもと 
思うと言えなかった。
 




ただ、 
ジャスティンが 
私を守りながら、 
大ケガした姿に決意できたのだ 

 

「…本当にごめん。ジャン…すごい怪我してる…ぅう…」

とうとう 
涙が滝の様にあふれ出してしまい、 


寝ているジャスティンの元へと急ぐ 

そっと座ると 
ケガを負った部分を触れないように抱き締める 


「…咲、キスしてくれないか?凄く痛いし、凄くズキズキする、それでもう死にかけたし、とりあえずくそ痛いからキスしてくれ」

目を瞑っているいる割には 
よく口が動くジャスティンを見て、 
ニヤついているのが分かる


「あ!もう回復は終えてます、咲さんが起きるまでこうしてろって…ジャンさんが」

素直なアダムが教えてくれる。
  





「もう!ほんとに心配したんだよ!!そういうの辞めてよ、バカバカっ」

滝は堰き止められ、 
自然と笑みがこぼれる


他の皆は負傷はなく 
まだ戦うつもり満々で、 
森の中のどこかにある城を探すために 
誰かでもなく歩き始めた 
  




途中、倒れてしまった後の事を聞く


あの後、 
魔王は何も発する事 
無く騎士団を見ているだけ、
いつまた攻撃があるか 
分からないので身構えていると
 




窓が現れて、 
中から側近の1人が 
「次、魔王様の番ですよ」 
といわれ、その中に入って行ったそうだ。


一難超えて 
皆、先程の場所に移動したという。


私の瘴気抜きに 
ジャスティンが大ケガを負ってるのに 
自分でやる!といって聞かなかったが、 
マリアンヌが力業で絞め落として 
寝せて、
 



スワロフは 
手を出すのが 
目に見えて分かっていたので、 
ジャスティンの回復を中心、
 



ロジャー、アダム、マリアンヌで 
順番に瘴気抜きをしてくれたそうだ
 

皆の対応にとても感謝し、 
今後の事を考える。
 




「私、本当に足手まといだ…」

とボソッと口にする。

「何言ってんの?咲さんいなきゃ始まらないでしょ~」

抜刀したまま歩くロジャーが 

元気づけてくれているのだろう、 
いつもより明るい声色でそう言った。
  



「そうだ、皆のやる気の元だ。 
咲殿がおられるから皆の士気があがる…チラっと見えたがなかなかのモノをお持ちで…」


自分の胸に 
両手をユサユサと上下に揺らすスワロフ。
 

 
やっぱり、 
こいつに瘴気抜きされなくて 
良かったと改めて思った。 


「ふーん… 
皆、咲の事そーゆー目で見てたんだ~、 
へぇ~…いやらしい目で見てんだ。ふーん」


起きてから 
スネ夫ぎみの上級貴族出身の 
現騎士団長は 


正直若干メンドクサイ。
 




「緊急事態だから仕方ないでしょ!私をそーゆー目で見てる訳ないでしょ?いつまですねてるの!まじメンドクサイ」
  



前を歩くジャスティンの 
背中に向かってそう言った。 

するとジャスティンはこちらも向いて
 


「だってこいつら、絶対勃起してたぞ? 俺が近くに居なかったら危なかったからな? 
ってか、俺だってしばらくお前に、触れてないのにっっ」 
 



とまるで小学生の様に言った。 

すねてるの内容は小学生では無いけど…
 
薄暗いとは言えまだ昼間なのだ。 
下ネタを口にするにはまだ早い。
 


いつまでも拗ねてるし、 
部下のアダムが気を遣っているのが分かる。  



「はいっ!私に触れてください、これ機嫌を戻して下さい」 
   
と手を出して広げ、
手を繫ぐ様に仕向ける。
 




彼はジー…と私の手と顔を交互に見る

「…はぁ~。まじで男心分かって無い、こんなんじゃ足らない」


と言いつつも 
手を繫いで来ようと腕を動かした 





その時だった。


向こうの 
木の陰から 
「ケケケ…」 
という声が聞こえたと思うと、 




足元に沢山の蛇がうねうねと突然現れた、
 



「うげ~最悪~!!私、蛇苦手なのよ…メデューサとかいう奴も苦手ーぇ!」 
   
蛇が苦手と  
マリアンヌは言っているが全然動じない。
 
声のする方へ睨みをきかせている。


「あれ?オレだって分かっちゃった?」

ひょっこり姿を見せた 
その人はメデューサ。 


頭に 
大量の小さな蛇を乗せている、 
細身の男性の様だ。 

目をつぶっているが 
開くと魔眼となって 
ソレと目が合うと 
岩にされるのは城で確認済みだ 

 


蛇のこの辺一帯を埋め尽くしている。

右を見ても 
左を見ても 
蛇だらけ、
木の枝にすらぶら下がっている。
 



「ぅわあ!!ホント無理~…蛇むりーーぃ」


足に絡まる 
蛇を   
バタバタ 
足踏みして払いのけるが、 



すぐにまた違う蛇がのぼってくる。

向こうにいる 
背の小さいアダムは 
もう全身 
蛇の群れに覆われ、 
気持ち悪くうごめく 
人型の蛇玉となっている。
 

  
姿を見てメデューサは 



「ケケケ…そのまま絞め殺されちゃえ~!」

と特徴の的な笑い声をあげる。

この笑い声に思い当たる節があり、  自分の記憶を遡ってみるも 
今ひとつ思い出せない 
 
  
頭の中を、  
ぐるぐるとしているうちに 
アダムと思われる 
蛇玉はドサッと膝を付けて倒れ込む。
 



「ジャン!アダムが…!」


そう言ったときだった      




ジャスティンは 
首をボキッと  
音をならして自信満々に 







「…アダム、そろそろいいんじゃないか?」

と言った。 

その声を聞こえていたのか 
その蛇玉は、ササーっと引いて 
アダムの凜々しい顔が見え始めた。
 



「時間かかったな~、国随一の動物使い…アダム・テイマーズ、最近サボり気味だったしな~」


抜刀されていた刀を 
鞘に収めたロジャーが自慢気に言った。 

ココは任せたと言うことだろう

「なにいいぃ!?テイマーズ家の奴がいんのっ!?」

メデューサは 
アダムの名前を聞くと 
態度がコロッと変わった。


大量にいたヘビの群れは 
先程と、打って変わって  
頭をメデューサに向けている 

シャーと口を開いて脅しながら 
その場にうねうねと動いていた。


「魔族にも僕の家の事、知られているなんて光栄です!…さて、僕の可愛い蛇さん達、あのメデューサを殺っちゃって下さい」 




アダムの 
そのかけ声で蛇達は一斉に襲いかかる。
 



「うわ!まてまて!ご主人はオレなんだぞ?うわっ!待てって~!」
 

するとメデューサの目が開く、

「…魔眼、岩におなりよ」
 


あの術だ。
蛇達は岩になって固まってしまった。

メデューサは 
動かなくなった蛇の岩から 
スルリと抜け出して、こちらにも 



「…魔眼、岩におなりよ」

と術を放ってきた。


「ワンパターンだな。メデューサ」

ジャスティンが 
瞬時にサングラスをかけると 

皆も 
既に持っていた 
スワロフが考えた対メデューサ用の 
サングラスをかける。
 



道中時間は沢山あったのだ。
これくらいの対策はさせてもらっている。

二度やられる 
ホワイトローズの騎士団ではない。 





「ナニソレ!?めっちゃうざいんだけど~!」

と地団駄を踏んで悔しがる 
メデューサを見るのは気分がいい。
 



じとーっと目の前の私達を見渡すと、 
シュル…と 
あの窓を木の陰にだして 
入って行く。 




「この人数だし、俺近距離戦苦手だしとりあえず引く事にするー!」

負け犬の遠吠えとは 
まさにこう言うことだろう 



魔王の側近の 
1人に勝利した我々は 
まだ、目的に達していない 





この 
薄暗く気味の悪い 
森の中 
歩みを止める訳にはいない。









 

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