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第四話 流星
第四話 流星⑧
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時間になるまで他のバンドの演奏を見たりして過ごし、九時過ぎに出番が来てステージに上がった。この後のことが頭を過ったが、会場の中央辺りに陣取っている俺のチームの奴等の顔を見付けて冷静になれた。
いつも通りのパフォーマンスを出せた、と思う。特にバンドメンバーも「今日も最高だったよ」と言ってくれたし、観客の様子も悪くなかったから、大丈夫だったはずだ。
「この後他のバンドと合同で打ち上げあるけど、どうする?」
「すんません、急用が入ったんで、また今度!」
汗でびちゃびちゃになった衣装を脱ぎ、服を着替えて荷物を持って控室を出た。と、ライブ会場前に賢太が立っていた。近くにいつも使っている黒の車が停まっている。
「久々お前の歌ってるとこ観たわ」
「は⁉︎ 勝手に観んじゃねぇ!」
「当日券余らせてる方がわりぃんだよ」
へらへらと笑う賢太に掴み掛かろうとした時だった。突然路地から男が飛び出してきて、その手にバールのようなものが握られているのが見えた。
賢太が俺と男の間に入った、瞬間鈍い音がして賢太が地面に転がる。
「賢太……‼︎」
膝をつき、賢太の身体を抱き上げる。腕で咄嗟に頭を庇ったのだろう。多少血は出ているが、頭部の傷は大したことがない。しかし、腕の骨が折れたのか、腕を抱えて呻き声を上げていた。
「てめえ、ぶっ殺す‼︎」
頭に血が上って、俺はそのまま男に殴り掛かった。が、横から頭を思い切り鈍器で殴りつけられた。倒れかかったが、ぎりぎり踏ん張ってその方を見る。バットを持った男が立っていた。その後ろにも数人の男達の姿があった。殴られたところを袖で拭うと、べっとりと赤い血がつく。
「あークソッ服汚しやがって‼︎ まだ二回しか着てねえっつーのッ‼︎」
俺が立っていることを信じられないというように俺を殴り付けた男は、バットを構えたまま震えている。大学生風の喧嘩をするタイプには見えない、ひ弱そうな男だった。俺は反射的に男の腹に拳を叩き込んで、蹲る男からバットを奪った。
「集団で武器持ってねえと喧嘩できねえってか⁉︎ まとめてぶっ殺してやるよッ‼︎ 掛かって来いクズ野郎どもッ‼︎」
一瞬怯んだように見えたが、イヤホンをした男の一人が地面に転がっている賢太の顔面を蹴り上げた。そして男はポケットからナイフを取り出し、賢太の喉元に突き付ける。
「こいつ殺されたくなかったら武器捨てろ‼︎ 俺達に従え‼︎」
腫れ上がり血だらけの顔の賢太と目が合った。握っていた手が緩み、金属音が足元から響く。
「後ろで手を組め」
言われるまま手を組むと用意していたのか、男達の一人が結束バンドで縛った。そして背中を押されて近くに止まっていたフルスモークの紺色のワゴンに乗せられる。車の窓から外を見ると、倒れている賢太に怜やチームのメンバーが駆け寄るのが見えた。チャンスだ。
逃げようとした瞬間、男の一人がシートに俺を押さえ付けると、布で俺の鼻と口を覆った。
「離せッ、クソッ‼︎」
暴れながら叫んだが、更に乗り込んできた男と二人掛かりで押さえつけられ、更に布に何かの薬品が染み込んでいたのだろう。身体から次第に力が抜けて、目の前がぼやけていく。
車が発進するのが分かった。俺はどこへ連れて行かれるのか、こいつらは何者なのか。賢太は怜がついてくれているから、安心だが。
俺はシートに突っ伏したまま、そんなことを考えて、車のエンジン音と男達の話し声を聴きながら、次の瞬間には意識を失っていた。
いつも通りのパフォーマンスを出せた、と思う。特にバンドメンバーも「今日も最高だったよ」と言ってくれたし、観客の様子も悪くなかったから、大丈夫だったはずだ。
「この後他のバンドと合同で打ち上げあるけど、どうする?」
「すんません、急用が入ったんで、また今度!」
汗でびちゃびちゃになった衣装を脱ぎ、服を着替えて荷物を持って控室を出た。と、ライブ会場前に賢太が立っていた。近くにいつも使っている黒の車が停まっている。
「久々お前の歌ってるとこ観たわ」
「は⁉︎ 勝手に観んじゃねぇ!」
「当日券余らせてる方がわりぃんだよ」
へらへらと笑う賢太に掴み掛かろうとした時だった。突然路地から男が飛び出してきて、その手にバールのようなものが握られているのが見えた。
賢太が俺と男の間に入った、瞬間鈍い音がして賢太が地面に転がる。
「賢太……‼︎」
膝をつき、賢太の身体を抱き上げる。腕で咄嗟に頭を庇ったのだろう。多少血は出ているが、頭部の傷は大したことがない。しかし、腕の骨が折れたのか、腕を抱えて呻き声を上げていた。
「てめえ、ぶっ殺す‼︎」
頭に血が上って、俺はそのまま男に殴り掛かった。が、横から頭を思い切り鈍器で殴りつけられた。倒れかかったが、ぎりぎり踏ん張ってその方を見る。バットを持った男が立っていた。その後ろにも数人の男達の姿があった。殴られたところを袖で拭うと、べっとりと赤い血がつく。
「あークソッ服汚しやがって‼︎ まだ二回しか着てねえっつーのッ‼︎」
俺が立っていることを信じられないというように俺を殴り付けた男は、バットを構えたまま震えている。大学生風の喧嘩をするタイプには見えない、ひ弱そうな男だった。俺は反射的に男の腹に拳を叩き込んで、蹲る男からバットを奪った。
「集団で武器持ってねえと喧嘩できねえってか⁉︎ まとめてぶっ殺してやるよッ‼︎ 掛かって来いクズ野郎どもッ‼︎」
一瞬怯んだように見えたが、イヤホンをした男の一人が地面に転がっている賢太の顔面を蹴り上げた。そして男はポケットからナイフを取り出し、賢太の喉元に突き付ける。
「こいつ殺されたくなかったら武器捨てろ‼︎ 俺達に従え‼︎」
腫れ上がり血だらけの顔の賢太と目が合った。握っていた手が緩み、金属音が足元から響く。
「後ろで手を組め」
言われるまま手を組むと用意していたのか、男達の一人が結束バンドで縛った。そして背中を押されて近くに止まっていたフルスモークの紺色のワゴンに乗せられる。車の窓から外を見ると、倒れている賢太に怜やチームのメンバーが駆け寄るのが見えた。チャンスだ。
逃げようとした瞬間、男の一人がシートに俺を押さえ付けると、布で俺の鼻と口を覆った。
「離せッ、クソッ‼︎」
暴れながら叫んだが、更に乗り込んできた男と二人掛かりで押さえつけられ、更に布に何かの薬品が染み込んでいたのだろう。身体から次第に力が抜けて、目の前がぼやけていく。
車が発進するのが分かった。俺はどこへ連れて行かれるのか、こいつらは何者なのか。賢太は怜がついてくれているから、安心だが。
俺はシートに突っ伏したまま、そんなことを考えて、車のエンジン音と男達の話し声を聴きながら、次の瞬間には意識を失っていた。
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