流れる星は海に還る

藤間留彦

文字の大きさ
上 下
27 / 50
第五話 転変

第五話 転変①

しおりを挟む
 両腕を抱えられ、半分引き摺られるようにして運ばれていくのが分かった。意識を失う前のことを思い出し、無理矢理重い瞼を持ち上げる。身体はまだ自由に動かせそうにない。

 階段を下りて、薄暗い部屋に入っていく。物置か何かに使っている部屋なのか、埃っぽかった。

 椅子に座らされ、胴体と椅子の背もたれを紐状のもので縛り付けて、身動きが取れないようにされる。と、部屋の出入り口に向かって、男達が一斉に頭を下げた。

「ご苦労様。向こうでブツ受け取って帰っていいよ。パーティー参加希望者はこのまま残って」

 少し高い声の男。視線を男に向けると、部屋の廊下の照明が眩しくて顔を顰める。男と男の連れらしい二人と入れ替わるように、二人が部屋の外に出て行った。何かの音楽が背後から聞こえていたが、ドアが軋む音がして閉じられると僅かな振動だけが部屋に響いた。

 狐目で細面のウェーブの掛った黒髪、痩せ型でひょろ長い、スーツを着た男。胡散臭い笑顔を湛えて、俺の正面にある革張りのソファに座った。

「初めまして、中村流星君。俺は君の従兄弟に当たる辻倉伊玖磨という者だ」

 伊玖磨と名乗る男の後ろには屈強なスーツの男が二人立っている。恐らく「カタギ」じゃない。勿論「辻倉」を名乗るこいつも。

 しかし、それ以外は先程俺を拉致し部屋を出て行かなかった三人と、元々部屋に待機していた三人の六人いるが、どいつもヤクザには見ない。

「手荒な真似をしてすまない。こちらにも事情があって、今日中に君をどうにかしなくてはならなくなった」

 ――俺の従兄弟ということは、兄ちゃんとも従兄弟なのか? 俺の親は兄ちゃんと同じ「辻倉」ということなのだろうか?

「心にもない謝罪は要らねーよ。さっさと本題に入れ、狐野郎」

 伊玖磨は嘲るように声を上げて笑うと、ソファの背に寄り掛かるように横柄な座り方をし、見下すような鋭い眼光で俺を睨み付けた。

「今からお前を薬漬けにして輪姦す。もう二度と薬とチンポなしじゃ生きていけない身体にしてやる」

 ――薬?

 ふと視線を伊玖磨の座っているソファの脇に移すと、鉄製のラックの上に複数の注射器が乱雑に置かれているのが目に入った。
 そしてその近くに立っていた男は、落ち着かない様子で薬を見詰めている。他の男達もどこか高揚した様子で息を荒げていた。先程「パーティー」と言っていたが、つまりこの男達は皆ヤク中で、「そういう」要員なのだろう。

「何でそんなことすんだよ」
「俺が跡目を継ぐのにお前が目障りだからだ。辻倉の直系でもヤク中なら、まず無理だ」
「跡目? 直系……? 何の話だよ。俺は『ヤクザ』じゃねえ」

 ヤクザの抗争に巻き込まれたらしいことは分かったが、それが今の状況とどう結びつくのか、前後関係もよく分からない話に眉根を寄せる。俺の反応に、伊玖磨は意外だったのか目を丸くした。

「……お前、自分が辻倉組の組長、辻倉一治の実子だって知らないのか……?」
「組長の、実子……?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷組長の狂愛

さてぃー
BL
関東最大勢力神城組組長と無気力美男子の甘くて焦ったい物語 ※はエロありです

[R18]エリート一家の長兄が落ちこぼれ弟を(性的に)再教育する話

空き缶太郎
BL
(※R18・完結済)エリート一家・皇家に生まれた兄と弟。 兄は歴代の当主達を遥かに上回る才能の持ち主であったが、弟は対象的に優れた才能を持たない凡人であった。 徹底的に兄と比較され続けた結果グレてしまった弟。 そんな愚弟に現当主となった兄は… (今回試験的にタイトルを長文系というか内容そのまま系のやつにしてみました)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

とろけてなくなる

瀬楽英津子
BL
ヤクザの車を傷を付けた櫻井雅(さくらいみやび)十八歳は、多額の借金を背負わされ、ゲイ風俗で働かされることになってしまった。 連れて行かれたのは教育係の逢坂英二(おうさかえいじ)の自宅マンション。 雅はそこで、逢坂英二(おうさかえいじ)に性技を教わることになるが、逢坂英二(おうさかえいじ)は、ガサツで乱暴な男だった。  無骨なヤクザ×ドライな少年。  歳の差。

純粋な男子高校生はヤクザの組長に無理矢理恋人にされてから淫乱に変貌する

麟里(すずひ改め)
BL
《あらすじ》 ヤクザの喧嘩を運悪く目撃し目を付けられてしまった普通の高校生、葉村奏はそのまま連行されてしまう。 そこで待っていたのは組長の斧虎寿人。 奏が見た喧嘩は 、彼の恋人(男)が敵対する組の情報屋だったことが分かり本人を痛めつけてやっていたとの話だった。 恋人を失って心が傷付いていた寿人は奏を試してみるなどと言い出す。 女も未体験の奏は、寿人に抱かれて初めて自分の恋愛対象が男だと自覚する。 とはいっても、初めての相手はヤクザ。 あまり関わりたくないのだが、体の相性がとても良く、嫌だとも思わない…… 微妙な関係の中で奏は寿人との繋がりを保ち続ける。 ヤクザ×高校生の、歳の差BL 。 エロ多め。

処理中です...