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第五話 転変
第五話 転変①
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両腕を抱えられ、半分引き摺られるようにして運ばれていくのが分かった。意識を失う前のことを思い出し、無理矢理重い瞼を持ち上げる。身体はまだ自由に動かせそうにない。
階段を下りて、薄暗い部屋に入っていく。物置か何かに使っている部屋なのか、埃っぽかった。
椅子に座らされ、胴体と椅子の背もたれを紐状のもので縛り付けて、身動きが取れないようにされる。と、部屋の出入り口に向かって、男達が一斉に頭を下げた。
「ご苦労様。向こうでブツ受け取って帰っていいよ。パーティー参加希望者はこのまま残って」
少し高い声の男。視線を男に向けると、部屋の廊下の照明が眩しくて顔を顰める。男と男の連れらしい二人と入れ替わるように、二人が部屋の外に出て行った。何かの音楽が背後から聞こえていたが、ドアが軋む音がして閉じられると僅かな振動だけが部屋に響いた。
狐目で細面のウェーブの掛った黒髪、痩せ型でひょろ長い、スーツを着た男。胡散臭い笑顔を湛えて、俺の正面にある革張りのソファに座った。
「初めまして、中村流星君。俺は君の従兄弟に当たる辻倉伊玖磨という者だ」
伊玖磨と名乗る男の後ろには屈強なスーツの男が二人立っている。恐らく「カタギ」じゃない。勿論「辻倉」を名乗るこいつも。
しかし、それ以外は先程俺を拉致し部屋を出て行かなかった三人と、元々部屋に待機していた三人の六人いるが、どいつもヤクザには見ない。
「手荒な真似をしてすまない。こちらにも事情があって、今日中に君をどうにかしなくてはならなくなった」
――俺の従兄弟ということは、兄ちゃんとも従兄弟なのか? 俺の親は兄ちゃんと同じ「辻倉」ということなのだろうか?
「心にもない謝罪は要らねーよ。さっさと本題に入れ、狐野郎」
伊玖磨は嘲るように声を上げて笑うと、ソファの背に寄り掛かるように横柄な座り方をし、見下すような鋭い眼光で俺を睨み付けた。
「今からお前を薬漬けにして輪姦す。もう二度と薬とチンポなしじゃ生きていけない身体にしてやる」
――薬?
ふと視線を伊玖磨の座っているソファの脇に移すと、鉄製のラックの上に複数の注射器が乱雑に置かれているのが目に入った。
そしてその近くに立っていた男は、落ち着かない様子で薬を見詰めている。他の男達もどこか高揚した様子で息を荒げていた。先程「パーティー」と言っていたが、つまりこの男達は皆ヤク中で、「そういう」要員なのだろう。
「何でそんなことすんだよ」
「俺が跡目を継ぐのにお前が目障りだからだ。辻倉の直系でもヤク中なら、まず無理だ」
「跡目? 直系……? 何の話だよ。俺は『ヤクザ』じゃねえ」
ヤクザの抗争に巻き込まれたらしいことは分かったが、それが今の状況とどう結びつくのか、前後関係もよく分からない話に眉根を寄せる。俺の反応に、伊玖磨は意外だったのか目を丸くした。
「……お前、自分が辻倉組の組長、辻倉一治の実子だって知らないのか……?」
「組長の、実子……?」
階段を下りて、薄暗い部屋に入っていく。物置か何かに使っている部屋なのか、埃っぽかった。
椅子に座らされ、胴体と椅子の背もたれを紐状のもので縛り付けて、身動きが取れないようにされる。と、部屋の出入り口に向かって、男達が一斉に頭を下げた。
「ご苦労様。向こうでブツ受け取って帰っていいよ。パーティー参加希望者はこのまま残って」
少し高い声の男。視線を男に向けると、部屋の廊下の照明が眩しくて顔を顰める。男と男の連れらしい二人と入れ替わるように、二人が部屋の外に出て行った。何かの音楽が背後から聞こえていたが、ドアが軋む音がして閉じられると僅かな振動だけが部屋に響いた。
狐目で細面のウェーブの掛った黒髪、痩せ型でひょろ長い、スーツを着た男。胡散臭い笑顔を湛えて、俺の正面にある革張りのソファに座った。
「初めまして、中村流星君。俺は君の従兄弟に当たる辻倉伊玖磨という者だ」
伊玖磨と名乗る男の後ろには屈強なスーツの男が二人立っている。恐らく「カタギ」じゃない。勿論「辻倉」を名乗るこいつも。
しかし、それ以外は先程俺を拉致し部屋を出て行かなかった三人と、元々部屋に待機していた三人の六人いるが、どいつもヤクザには見ない。
「手荒な真似をしてすまない。こちらにも事情があって、今日中に君をどうにかしなくてはならなくなった」
――俺の従兄弟ということは、兄ちゃんとも従兄弟なのか? 俺の親は兄ちゃんと同じ「辻倉」ということなのだろうか?
「心にもない謝罪は要らねーよ。さっさと本題に入れ、狐野郎」
伊玖磨は嘲るように声を上げて笑うと、ソファの背に寄り掛かるように横柄な座り方をし、見下すような鋭い眼光で俺を睨み付けた。
「今からお前を薬漬けにして輪姦す。もう二度と薬とチンポなしじゃ生きていけない身体にしてやる」
――薬?
ふと視線を伊玖磨の座っているソファの脇に移すと、鉄製のラックの上に複数の注射器が乱雑に置かれているのが目に入った。
そしてその近くに立っていた男は、落ち着かない様子で薬を見詰めている。他の男達もどこか高揚した様子で息を荒げていた。先程「パーティー」と言っていたが、つまりこの男達は皆ヤク中で、「そういう」要員なのだろう。
「何でそんなことすんだよ」
「俺が跡目を継ぐのにお前が目障りだからだ。辻倉の直系でもヤク中なら、まず無理だ」
「跡目? 直系……? 何の話だよ。俺は『ヤクザ』じゃねえ」
ヤクザの抗争に巻き込まれたらしいことは分かったが、それが今の状況とどう結びつくのか、前後関係もよく分からない話に眉根を寄せる。俺の反応に、伊玖磨は意外だったのか目を丸くした。
「……お前、自分が辻倉組の組長、辻倉一治の実子だって知らないのか……?」
「組長の、実子……?」
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