いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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546:敷物

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まずは一頭。

「いいな!傷は?ないな?良し!解体するぞ!」
「ソヤ?見とくの?」
「?うん。なんで?」
「いや、刺激が強いかなと。」
「大丈夫だよ?ボットも豚も勉強になったよ?」
「そうですか。」


いまさらだけど、ボット、豚は大きい個体を狩った。
トラは?メスとかいたのかな?
皆同じ大きさだった。
メスでおなかに子供がいたらどうしよう。
収納したから死んでるんだけど。

「トックスさん?メスとオスってどう違う?」
「ああ。見分け方は知らんな。
毛皮の状態しか見たことがないから。」
「え?現物は初めて?解体できるの?」
「それはな。見ればわかるさ。」
「トラの子供ってどんな?もしかして、これはメスでおなかにいるとか?」
「人じゃあるまいし。腹に子ができるのは人だけだろ?」
「え?そうなの?ええ?」
「ん?トカゲも鳥も蛇もボットも卵だろ?」
「うそん!じゃ、卵があるかも?おなかに?」
「それはないな。乾季に入ってるんだ。もう産んでるだろ?地中にな。」
「おお!なんというか、違うね。ほんとに違う。
図鑑が欲しいね。」
「知りたければ現物を見ればいい。
現物で見れないものは知っていても仕方がないだろ?」

さわさわとトラを撫でながらトックスっさんは答える。
骨と筋肉の付き具合いを確認しているそうな。

「いやいや、一般的な知識としてよ。
動物園とか、水族館とか、植物園とかないの?」
「それは国家機密になるぞ?
研究院のところにあると思うがな。」

これはニックさん。
ニックさんも、同じように筋肉を確かめている。
これは弱点を探しているそうだ。

「それはどこの国も一緒?」
「そうだろな。」
「じゃ、中央は?」
「中央はそれらをすべてまとめているはずだ。」
「領国があって、国があって、中央?」
「そうなるな。」

リングが流通している国は一つの国と考えればいい。
地域紛争はとりあえず、当事者で解決なさい。
で、ダメだったら介入するよというスタンス。
で、南諸国はみなで制覇しようぜということか?
ニバーセルは大きな国だが、
所詮、中央の中の国。
ニバーセルが幅を利かせている訳ではないようだ。
中央が上。
それが、砂漠の労働環境視察に乗り込んでくると師匠が嘆いていた。
本社からの視察はなにかと面倒だということかな?

「じゃ、始めるぞ!」

トラの体の仕組みを隅々まで観察していたトックスさんが声をあげた。
お願いします。

マティスも解体に参加するので、
わたしはガイライの背中から観察だ。
マティスが拗ねるがしかたるまい。

「マティス!頑張って!」
「おう!」

皮を剥ぎ、なめしていく。肉はポットとほぼ同じ。
そうなれば大丈夫。

「トラってさ、故郷では黒と黄色なの。柄はちょっと違うけど。
でね、トラの敷物ってのがあって頭とかそのまま、
剥製にしてね。そういうのはあるの?」
「・・・・ないな。え?敷物?頭もついてるのか?
ああ、熊はあるな。だが、それは後頭部の毛だぞ?え?頭?」

そうだ。あのトウミギの村で買わされそうになった熊の皮は
頭が付いていると言えど、皮のみだ。
わたしが絵にかいて説明するような状態ではなかった。

トックスさんは首をかしげる。わたしもそれはどうなのって思う。

「モウちゃん?それは普通のことなのか?」

ニックさんは少しこわばった顔をして聞いて来た。

「んー、昔ね。狩りをするでしょ?
で、動物そのままを剥製して飾るっていのが流行ったみたい。
毛皮を着るとか、肉を食べるとかじゃなくて。
んー、肉は食べたのかな?詳しくないけど。
骨とか、肉とか、もちろん内臓もすべて取って、
木とかで作って骨組にかぶせてるんだと思う。
で、飾ると。目玉はガラス玉とかね。
こんな大きな得物を取りましたって自慢するためかな?
昔のお金持ちの部屋のイメージって、
暖炉があって、トラの敷物があるってイメージ。」
「自慢?自慢するだけ?」
「美術品と一緒?きれいなものには価値があるみたいな。」
「今も?」
「まさか!動物愛護の観点からそんなのは違法になったとおもうよ。
でも、違法でないところですれば違法でない。
狩りはある。ただの趣味だ。動物を撃って、殺して、
で、倒しましたーって自慢して剥製にしたりする。
お金持ちの道楽だね。」
「・・・あまりいい趣味ではないな。」
「そこだね。じゃ、これは?毛皮を利用するから殺してもいい?
食べるからいい?剥製にして飾るんだから、
利用するんだから一緒でしょ?っていわれるね。
線引きが難しい。
肉を食べるためだけに飼育されてる動物はかわいそうじゃない?
言えるのは強者だから弱者に対して行ってるってことだ。
人が弱者の立場にならないとこの理不尽さはわかんないだろうね。」
「・・・・。」
「故郷でも、ここでも弱肉強食、食物連鎖の頂点は人間様だ。
でも、その人間も、病気には弱い。
小さな羽虫が媒介する病気で毎年何万人と死んでる。
もっと目に見えないものちいさな、
んー、生き物って言ってもいいのかな?そういうものにもね。
ここは?病気で死んじゃう人は多い?」
「多いというか、けがで死ぬか、病気で死ぬか、寿命で死ぬか、殺されるか。
病気が一番多いだろうな。」
「医療はかなり遅れてるのかもしれないね。
これはわたしもわからんよ?予防はある程度できるけどね。
清潔にして、そとから帰ってきたら手を洗うとかね。
栄養になるものをしっかり食べるのもいいよね。
で、お肉食べれそう?」
「焼いてみるか?」


「・・・・味がしないね。」
「まずい!」

ソヤががっかりしている。
もちろんわたしもだ。

様々な部位を食べた。内臓も。毒素をため込んでいる様子はない。
でも、味がないのだ。

「干肉にするか、低温で保存すればおいしくなるか、
これも食べ方が別であるのかもしれんね。それまで、収納だ。
皮はトックスさんのいる分だけ剥いでしまおう。
あとはそのまま収納しておこう。
皮ごと保存すればいいとかあるかもしれんしね。」
「捨てないんだ。」
「当たり前でしょ?最悪食べれないとしても、
肥料になったりするかもしれないからね。
ソヤがおいしいって言ってた、手羽先だって
フレシアはお金を出して引き取ってもらってたんだよ?
だからね、命をもらったら、自分の血肉になることを考えないと。」
ダメならダメでしょうがないけどね。
でも、わたしのおいしいものセンサーは立ってるから!
おいしく食べれるはず!
あ!味がしないから煮込み料理にいいかも!
マティス!いろいろ試そうね!」
「ははは!わかった。食べるための努力だな。」
「うん。」


1枚きれいになめして干しておくそうだ。
で、今夜はここで泊まる。
ガイライとニックさんは、ボットを1頭もって帰る。
たぶん、今食べた丸焼きの肉よりもおしいはずだ。
収納袋を渡そうとしたが、持って帰れるだけでいいと断られた。

「タトートでなにかほしいものある?」
「え?」
「ん?なんか買ってきてほしいもの。香辛料とか布とか。
お土産はなにがいい?」
「土産か!香辛料は一通り欲しいな。」
「土産ですか?ああ、いいですね。では、大きな布を。」
「ん?何用?」
「ずっと使っている椅子があるのですが、それを張り替えようかと。」
「そういうのも自分でできるの?家具屋さんの仕事ないじゃん。」
「いえ、本職に頼むほどでもないのです。
端を縫い合わせて掛けるだけで。」
「ティータイに家具の職人さんがいるよ?頼んでみる?
長年使ってるんなら手入れも必要だよ?それでまた、長く使えるから。」
「そうですね。そうしましょうか。」
「うん。じゃ、布だけ買ってくるね。厚手の方がいね。
色は?要望はある?」
「いえ、母さんが選んでくれれば。」
「ん。わかった。
じゃ、気を付けて帰ってね。
師匠には棒術でトラを仕留めたって報告はしておいてください。
きっと、なんで呼ばなかたんだって拗ねるから。」
「だろうな。だが今は、動けないだろう。予算でもめてる。」
「あー、あれで納まらなかったか。頑張ってとだけ。」
「ははは!ニバーセル以外から金をとってこないとな。
サイの家畜化もその一つだ。」
「そうか。対国外ね。国策か。
コットワッツの宝石、メジャートの白磁、
ボルタオネの鉛筆、便座、ラルトルガの野菜、いろいろあるんだけどね。
一押しは銃なんだろうね。」
「そうなんだろうな。」


ニックさんは言葉を濁したけど分かる。
戦争が始まるのなら、国外に出すのは控えたい。
対南諸国だとしてもだ。
が、実際には手にして訓練しないと使いものにはならない。
中央統治の18か国は仲間と言えど、敵ともいえる。
ニバーセル内でも同じだ。
難しい話だね。
中央がどう出るか。年内には砂漠石高騰を抑制するはずだ。
その前にある程度売っておこうかな。
半分リングで半分金だ。
戦争が始まる前は金が高騰するっていうし。
博打みたいなことをしたくないけど、念のためだね。




ソヤはもう、こっくり船をこいでいる。
明日は月が沈めば、クーちゃんとビャクを呼び寄せて、
ドロインさんのところで朝ごはんだ。











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