いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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545:対国外

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マトグラーサの砂漠で作った高床式のデッキより、
さらに高いデッキを展開する。
きちんと製作済みである。


「夜に、月が昇るのに狩りをするのか?」

ソヤが心配そうだ。

「うん。砂漠じゃないからね。
でも、砂漠石に寄ってくる傾向があるから、2人はここで待機ね。
お風呂も作ってるから。
見晴らしはいいよ?」

晩御飯はラーメンだ。
ソヤがかなり興奮して食べていた。
が、これは言うならば晩御飯前の軽い食事だ。
なぜなら、丸焼きを食べようということになったからだ。
高台の上に洗い場を作る。

ポットとウサギを軽く仕留める。
それを上で、トックスさんとソヤが捌いて焼いてくれるそうだ。

「では、行ってきます。
ソヤ?また何かったら呼んで?すぐ来れるから。」
「俺はいっちゃダメ?」
「ニックの手ほどきを受けてからだな。
先に私たちと一緒に動くと癖がつく。
基本はニックに教わったほう応用が効く。
今回はあきらめろ。」
「わかった。」

ちょっとがっかりしてるけど、仕方がないね。



下に降りて、マティスの指示をもらう。


「砂漠石に寄ってくることは確かだ。
が、肉というのは落ち着いた状態で〆るのがいいと、
ハンバーグ屋のラグロから聞いた。
砂漠石で近寄ってくるのは興奮しているだろ?
なのに肉自体はうまかった。
だったら、どこかで落ち着いている状態の肉を
〆ればさらにうまいのではないかと。」
「すごい!マティス!天才的発想だ!
その話聞いたことあるよ。
野生の動物を食べさせてくれるところがあるんだけどね。
猟師さんは鉄砲で仕留めるんじゃなくて。
檻で捕まえるの。で、しばらくは餌をあげたりして世話するんだって。
で、落ち着いたら、〆るって。えげつない話だとおもったけど、
なるほど。おいしいお肉の為なら仕方がないね。
瞬殺収納で行こう。」
「そうだな。死んだことすらわからないように。」
「そこだけ聞くと悪人だよね。」
「はははは!ポットにすれば人間は悪だ。」


そんなことで、気配を消して点在する小さな林を廻り、
のんきにもっそもっそと草を食べているポットと、
夜に活動しているウサギも狩った。夜行性なんだ。
ウサギの繁殖はすごいと聞くが、ポットも相当なものらしい。
本当に片っ端だ。環境破壊?
3つに一つは林ごとそのままにしたから大丈夫だろう。

「トラは何食べてるんだろうね?」
「肉食だろう?ウサギやポットだな。」
「そうか。それがいるから繁殖も押さえられてると考えると納得するね。
ということは、トラが食べる分をこっちが取ったから、
トラが腹を空かせて街に来るかもしれん。
いかん、いかんよ!狩らねばなるまい。」
「ああ、狩らねばなるまい。」


林と言っても小さいものだ。
その中にいる、ポットとウサギ。
共存しているのか?餌が違うのか?
わたしたちが狩っていないのに生き物の気配がぐっと少ない林、
それでいて大きい気配。

「たぶんあれだな。向こうも。ニックを呼ぶか?」
「まずは1匹、確認しよう。
これ、違いますやんってなるのは恥ずかしいから。」
「それもそうだ。」

気配を消して上空からトラと思しき気配に近づく。

お食事中でございました。

トラと聞いて、黒と黄色の柄かと聞いたのだ。
いいや、黒と赤だと。
うん、トラ?ゼブラ?マーブル?
派手でごわす。

「派手だね。」
「そうだな。私の記憶の中の色より赤が薄いがな。」
「見たことあるんだね?どこで?」
「?どこでだった?砂漠で?コットワッツ?」
「本かな?絵で見たとか?わたしもさー、
見たって記憶はあるんだけど、どこで?いつ?ってなると、
こまるんよね。おやつがある場所は忘れないけど。」
「・・・・。」
「そういうこともあるから。若くてもなるから!」
「・・・老化を心配しているわけではない!」
「あははは!そうなん?」
「愛しい人。」
「うん。それが新年を迎えて忘れたことだとしても、
今は必要ない。そうでしょ?」
「そうだな。」
「じゃ、行こうか!」


これがまた、大変。
こっちは完全に気を消せていると思ったが、
地面に降りると同時に気付かれた。
振動か?

速い!
突進してくるのだが、方向転回も同じ速度で向かってくる。


「蹴り!」
「おう!」

足を狙うも、だめ。
電柱に脚の小指で喧嘩をするようなもの。

「上!」

上空に避難。

「ダメだね。ニックさん呼ぼう。」

向こうはさすがに飛べない、よね?
なんか、わらわらと集まってきた。
まさか、ピラミッドでも作るの?
このご時世、組体操は禁止されてるよ?

大きめの絨毯を出して、ニックさんを呼ぶ。

(ニック?トラだ。蹴りを入れたがダメだった。来れるか?)
(行く!抜けるから!呼んだら呼び寄せてくれ!)
(ガイライは?)
(一緒に呼んでくれ。これ以上ここにいても仕方がないからな)
(引継ぎ、うまくいかないの?)
(そっち行ったら話すさ)
(わかった、呼んでくれ)
(おう!)



「もめてるのかな?」
「どうだろうな?ニックが喜んでいるからいいだろ。」
「ははは!そうだね。」


それから、すぐにニックさんが月無し石を通じて呼んできた。

『ニック!来い!』
『ガイライ!我がもとへ!』


ガイライの顔が赤い。
ニックさんはなぜかほっとしている。

「ガイライ?顔赤い!熱?風邪?」
「・・・母さん。」
「ん?」
「わたしは今まで何をしてたんでしょうか?」
「んー、哲学だね。
生きてたんだよ?そしてこれから死ぬまでね。
あれか?引継ぎでそんなことまでやっていたのか?
それとも、そんなこともしないといけないのか?
面倒だから、それは分隊でやったらどうだ?仕事を与えよう?
いままで、皆のためにやって来たことを誰も知らなかった?
理解されてなかった?」
「!母さん。どうしてわかるんですか?」
「そんなもんなんだよ。大体おんなじ。
必要なことだったんだろ?
大丈夫、都下や下町の人たちは
ガイライとニックさん、ルカリさんに感謝している。
軍部に離れたと大騒ぎになったそうだ。
悪さをする輩が増えるかもしれないね。
見回りは仕事だろ?
きっちりさせることだね。が、それを素直にするとは思えないけどね。
街の見回りは分隊でやってもいいとは思うけど、
なにかあった時に本体の軍人に指示を出せる、
命令系統だけはきっちりとしないといけないよ?」
「な?モウちゃんはそういうだろ?
ガイライがさ、これまでしてきた仕事を朝から晩まで、
1年通しての内容を読み上げたんだ。
そしたら、モウちゃんが言うように、そんなことまでってな。
向こうは大笑いよ。それは軍部の仕事ではないとな。
それにガイライが珍しく怒ってな。
必要だということを説明したんだがな、ま、無理だろ。
どうしたもんかと思ってたからな。助かった。」
「言っても仕方がないから、逐一報告はしてなかったてことだね?
ガイライはそういうところがあるね。ダメだよ?
向こうが理解しようがしまいが、報告は大事だ。
報告、連絡、相談ね。
理解できないのは向こうの問題だ。
そこまで面倒は見なくていいよ。それで?」
「街の見回りは分隊がしろと。」
「返事はしてないね?」
「もちろんだ。後で返事すると、抜けてきた。
あの場で、決めたほうがいい場合と、
後で出すほうがいい場合。これは後だ。
予算は出してもらうつもりだったが、そうだな、命令系統な。
当然だな。抜け落ちてたわ。」
「フー。そうだな。落ち着かなくては。余りの情けなさにな。」
「あははは!甘いもの食べれば落ち着くよ?
食べなかったの?」
「それは流石に。」
「ドーガーはうまいよ?長時間動く時は食べて、飲んでる。」
「それでよく動けますね。」
「食べないと動けないみたいよ?」
「はは!次回教えてもらいましょう。」
「うん。で、お気づきでしょうか?
下は恐ろしいことになっております。」
「だな。それよりも浮いていることの方が驚きなんだがな。」
「そうだな。ま、母さんだからな。で、全部狩るのですか?」
「いや、ポットとウサギをかなり狩ったんだけど、
その量をたべるトラだけ。
一日どれぐらい食べるんだろうね?」
「それはわからんな。
が、縄張りはあるんだろ?ここに集まった分はいいんじゃないか?」
「そうか。でもね、蹴りが効かない。
皮には傷を入れたくない。どうしよう?」
「眉間かな?目は共通な弱点だ。後は首。
槍は裏で付けばいい。」
「わたしが先に行きますよ。すこし発散しないと。」
「俺も。モウちゃんは俺たちの動きをみとけ。
マティスもな。半分狩ったら交代だ。」
「はい!」

半分?
野鳥の会の皆さんを呼ばないと数えられんけど。


ニックさんは槍を短く持ち、
懐にはいり、顎下を打つ。ビリヤード?

ガイライは先ほどのイライラを解消すべく、
心臓あたりを撃っていく。もちろん素手だ。

大きいからね。
懐に入ればいい。
入れればね。
速いんよ。

「んー。ある程度の速さで向かって、
向こうが動けば、倍の速さで下に?」
「緩急をつけるということか。」
「なるほど。」

あっという間です。

「交代だ!拳と槍でいけ!」
「「おう!」」

浮かぶ絨毯に2人を引き上げ、わたしたちが下りる。
わたしは飛び上がらないと届かない心臓。
あれだよ、昇竜拳というか、マリオ?
撃って、倒れる前に抜けて次。
飛び上がり、槍裏で打つ。
こうなると棒術だ。

マティスは?
はー、かっこいい。

いかん、次!

マティスより時間がかかっている。
一撃ではないから?浅い?
ポイントがずれてる?
もふもふでわからんよ?
眉間?脳天?盆の窪?ここ!
飛んで、空を蹴り加速。体重もかけ、これでどうだ!OK!

が、向こうも賢い。
飛び上がる前に、とびかかってくる。
そうなるとしたから心臓。
下敷きになる前に蹴り飛ばす。

3:1の割合で制覇。
流石マティスです。

すぐに収納。

上に戻り、あとで復習しようといわれ、
トックスさんとソヤのいる場所に戻った。


「いい匂い!」
「ガイライの旦那たちも来たのか?じゃ、トラも?」
「うん。いっぱいね。」
「やったな!あー、みたいが、収納したんだな?
劣化はないな。先に飯にしよう。」
「ソースも使ったよ!」

豪快だ。
ポットは皮はきれいに外している。
よく見る吊るし肉をそのまま焼いてます。
内臓系は預けた収納袋に入れてます。
ここで捨てるわけにはいかないから。
それこそトラが来るよ。


「モウちゃんは一呼吸遅い。
見て確認して、撃つところを確かめて、撃つ。
見て撃つ。見るのは撃つところでも相手ではない。
次の得物だ。見つけると同時に撃つ場所は決まっている。
もちろん廻りを見るなと言ってるわけじゃないぞ?
首の後ろを撃つの良かったな。
モウちゃんがいうと、こうだな。
あ!トラが来た。どこ撃つ?首裏!良し!だろ?」
「まさしく!トラが来た!そのあとに、モフモフ!が入るぐらいに。」
「余裕があるのはいいけど、相手にも同じだけ時間を与えてるからな。
トラ、撃つだ。で、撃つの前に
次の得物もとらえると。
次の手が遅い。」
「なるほど!それは大蒜競争の時と同じだ。精進します。」
「あの時より早くはなってるぞ?初めて見る得物だからだろ?
数をこなせばいい。」

会話はしているが、見ているのは肉のみ。
分かるわ、その話。食べ終わってから次にそぎ落とす部位を見ている。
これだね?
あ、ソヤが狙ってるところを!

「しかし、うまいな。
丸焼きはうまいもんだが、ソースもうまいが、肉が自体がうまい。」
「でしょ?ここのお肉はおいしいんだ。食べてる物も違うのもあるかな?
で、これはさっくり狩ったから相手も恐怖心がでたとおもう。
大量に狩ってきたのはゆったりくつろいでいるところを狩ったからね。
恐怖で身が固くなってないからさらにおいしいと思うんだ。」
「餌は何とでもなるだろうけど、そうか、〆方な。
追い込んで、叩き殺すと聞いてるからな。」
「あー、それは改善したほうがいいかもしれんね。」
「食われる方は一緒じゃない?」
ソヤが言う。
「ごもっとも。が、それが自然界の摂理、弱肉強食。
おいしく、無駄なく、頂きたい。感謝をもって。」
「ふーん。」
「無駄なくな。その考え方はいいな。さ!トラを見せてくれ!」
「トックスさんは見たことあるんだね?
マティスが言うにはちょっと薄いって。」
「そうか?わたしもあるが、あの色だ。」
「そうだな。同じだと思うが?といっても見たのは1回だけどな。」
と、ガイライとニックさん。
「いや、もっと色が濃い、赤と黒が。」
「旦那、ティス?それをどこで見た?」
「覚えてないんだ。見たことは覚えてる。」
「そうか。色が濃いほど価値があるって言われてる。」
「そうなのか?だが、皆同じような色だったぞ?」
「そりゃそうだろ?自然界で派手な色は目立つだろ?」
「そうか!保護色か!赤い葉っぱ多いもんね。」
「そういうことだ。」
「ん?じゃ、保護色で隠れないといけない天敵がいるってこと?」
「共食いだよ。」
「あー。それか。」

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