いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「おかえりー!!」



彼女が出迎えてくれる。
テーブルと、椅子と。
砂浜に小奇麗な一角ができている。
ヨウショク屋さんだそうだ。


食べる前に、海底での戦利品を。

「貝でしょうか?それと、植物?ああ、上で見るとますます真っ赤だ。」
「ん?アワビとサンゴ?」

彼女は貝をひっくり返し裏を見る。
なまこに似ているのが?私たちからみればかなり、気持ち悪いのだが、
彼女はこの手合いは何ともない。

「おお!生きてる!これ、バター焼きでおいしいよ。
お刺身より焼くのがいいね。
これはまた、血赤っていうの?これ、虫なんだよ。」
「え?姉さん!」
「うん、知ってるから大丈夫。それに、どういうものか結局わかってないし。
こっちで一緒かどうかわからんしね。
きれいだ。削ってね、赤い装飾品になるよ。」

『丸く、丸く』

枝のような先を折り、
彼女が言霊を使う。

「ああ、きれいだ。これ、磨けばこうなる。
透明感もあるね。ふふふ。トックスさんとイスナさんにお土産ができたね。」

イスナさん、イスナ殿と呼ばないでくれと言われた。
領主でもなんでもないからと。

そのイスナは装飾職人だ。喜ぶだろう。


「うむ!2人ともでかした!!褒めてつかわす!!」
「「ははー!!」」
「「「あはははは!!!」」」


「すぐに食べれるよ。
さっと、シャワーだけ浴びといで?簡単ペペロンチーノにしようと思ったけど、
アワビのパスタにしよう。」



パスタ。
最初に食べたっきりだ。
パンとエビのスープもある。

「鮑のパスタ肝のソテーとエビのビスク、
サボテン添えでございます。」


彼女が給仕をしてくれる。
酒は冷えた白ワインだ。


「ラーメン?」
「ちょっと違うね。このフォークでくるりと。
ん!おいしい!!」


「「!!!!」」

スープもそうだが、パスタの皿もパンで拭う。うまい。

「おいしいです。ああ、おいしかった。」

食べている間はだれもしゃべらなかったのだ。
あっという間だ。


「そう?よかった。油、キトロスの種を絞ったもなんだ。
お料理に使えるからね。胡麻はいいにおい過ぎるから。」
「実も種も!キトロス植えてみたいですね。」
「たぶんね、地中に砂漠石がいる。キトロスに必要な養分は砂漠石なんだ。」

キトロスの樹を買った時の話をセサミナに説明している。
いま、サボテンの森にある樹の下にも埋めたことも。

「しかし姉さん?埋めたから育つのではなく、逆も考えられるのでは?
キトロスを植えたところに砂漠石ができると。」
「あー!それもあるかもね。なるほど。試してみる価値はあるね。
育たないっていうのはもともと砂漠石が取れない土地だったのかもしれないね。
そうか。おもしろい!試してみよう!」

砂漠の一部に植えることとなった。
イスナが植える樹々は草原側だ。
砂漠近く、綿畑、メーウーの放牧地を囲むように。


海苔は月が昇るまでそのまま、竹炭もだ。
煙は上がらないようにして、管を出している。
煙を冷やして液体をとるらしい。


レタンの村まで移動する。
入り口には村長のご母堂、ヘレーナさんが立っていた。

「あんた!また来てくれたんだね!」
「ヘレーナさん、今日は3兄弟で行商なんだ。
なんでかしってる?」
「!ああ、もちろん。ささ、おいで。問題は無いよ。
息子は今日は漁に出てる。いまは役立たずでも手がいるからね。
ふーん、よく似てる。兄弟に違いはないね。」

ヘレーナさんが金を鳴らしてくれた。
おじいちゃんおばあちゃんと子持ちのお母さん。

「あのタオル!もっと安いのはないのかい?
いいんだけど、もったいないだろ?」

1枚5銅貨のタオルがまさしく飛ぶように売れる。
50枚で絵柄を付けて売るから、100枚、船の絵柄だ。
赤ちゃん用に作ったガーゼタオルもだ。
作っておいてよかった。

豚とアヒルの形に丸めたものだ。
「チビ、これもおもしろいですね。祝いの品で送ろうかな。」
「しないんでしょ?出産は?」
「ええ、しかし、領民が誕生したことを祝ってもいいでしょ?」
「うん。喜ぶよきっと。」

マティスはまた、爺たちに囲まれている。
お茶とおかきが出ているから。

「ジロー!お前もこい!」
「ああ、行ってきます。」

お客が少ないから、あっという間に商売終了。
あとはお茶タイムだ。

「あんたたちが強いのは分かっていたんだ。
だけど、数で来られたら、あの日は寝れなかったよ。」
「いいえ。止められても、出発してましたよ。
走って逃げたんです。でも、ま、タロ兄ちゃんが一太刀あびせてましたが。」
「らしいね。話は入ってくる。ふふふ。たのいしいことをしたらしいってね。」
「ぼくも聞きましたよ?櫓宿でチーズ屋の娘さんとの無言の対決。」
「!クスナだね?あいつは昔からおしゃべりなんだ。」
「ふふふ。楽しいおしゃべりですよね。タロ兄ちゃんが
気楽に話してますよ。」
「タロ兄ちゃん、あれは?ジロー?で?」
「サブロー兄ちゃんたちはチビってよんでます。」
「うまく考えたね。あんたを大事にしてる、それで、上2人は似ている。
知らなければ、兄弟と思うだろうね。」
「兄弟なんで。」
「そりゃそうだね。」
[あ!ここでもエビって取れるんですか?」
「取れるよ?それを狙って魚やウミヘビが来るからね。
いまは脂がのってうまいよ?食べていかないのかい?」
「ええ、さっき食べたところで。焼いてもおいしいんですよ?」
「エビってくずエビのことだよ?
あー、ニッケで流行ってる?ほんとかしら?食べに行こうとは思てるんでけど。
そこはあれのおひざ元だからね。」
「昔のお知り合いなんですか?」
「ああ、そうなるね。昔も昔だよ?」
「向こうはずいぶんと意識してましたよ?悪いんですが、前回の商売の話、
ああ、夫婦の行商の話、買ってくれました。」
「はん!お好きにってことさ。あんたたちも気を付けなよ?
あれより、妹の方を。」
「わかりました。
ああ、でね、エビ。そのエビを使ったスープ。
飲んでみませんか?ヘレーナさんの料理丁寧だから、
きっとおいしくできると思う。
フエルトナで食べた料理より断然、ここで食べたほうがおいしかったから。」
「うれしいね。それで?スープ?エビで?」
「乳も手に入るんなら、ちょうどいいなって。
野菜は適当でいいし、香草も適当で。
時間を掛ければもっとおいしいとおもう。」

作り方を説明しながら、
多い目に作ったものを、温めて、皆に。
小さなパンもつけた。


「どうですか?」
「・・・おいしいね。エビ?殻ごとで濾すの?」
「そうですね。それを丁寧にするのがコツです。」
「ほかには教えてないの?」
「食べてはもらってますよ?あー、食べる専門の人ばかりかな?
隠匿は掛けないですよ?
材料も乳とエビがいる。なかなか、他では難しいですから。」
「コットワッツでは保存がきく箱を売り出すそうじゃないの?」
「それでも、新鮮なものが手に入るっていうのがいいんですよ。
たぶん、ほかの人に教えても、結局生臭くなる。
ここのお料理はそれがなかったから。」


名物料理にするよと言ってくれた。
今度来た時はご馳走してくれる約束だ。

そして、兄ちゃんズもまたしても若いエキスを吸われていた。
ジュゲム村でもそうだが、ここでも孫の手は売れまくり。
ゴムの肩たたきもちゃんとついてる。
1本3銀貨。高いか?いや、許してほしい。
息子、ガイライの収入源となるだろう。
母は心配なのだ。

「なんか面白い話聞けた?」
「イリアスに対する不満ですね。そのように話を持っていったのですが、
でるわ、でるわで。わたしも、そのように思われているのかと。」
「ん?」
「若いだけで、人生を知らないといっていたな。
しかし、セサミナのことは褒めていたではないか?」
「ばれたの?」
「いや、若き領主として引き合いに出された。
よくやっているようだと。」
「いえ、あのご老人たちは、わかっておっしゃっているのではないかと。
身が引き締まる思いでした。」
「あはははは!!あれだよ、自分の、それこそ正論を
真剣に聞いてくる若者には説教もしたくなるもんなんだよ。」
「なるほど。それで、あのおいしい海老のスープはどうしてここで?」
「ん?ここはエビと乳が両方手に入る。
で、ヘレーナさんは臭みをとる魚料理を出してくれたからね。
ここのエビスープが評判になれば、人が来る。
人が大勢来ると、盗賊がでる?逆だよ。
人が多いと逆に出ない。寂しいから出るんだ。
でも、そんなおいしいものも遠く離れたところでも飲みたいだろ?
うわさは千里を駆けるんだ。
で、冷凍馬車が売れる。凍らせて溶かせば飲めるもの。
遠回りだけど、冷凍馬車が売れるよ。」
「すごい!」
「流通っていうのは人の欲だ。手に入るんなら、
現地に行くより安く、同じようなものを買うより多少高くても欲しい。これね。」
「すごい!すごい!」
「うふふふ。冷蔵馬車、冷凍馬車。
これが売れる。ということは馬も売れる。御者が足りなくなる。
すこし操れるだけでその仕事をしようとする。
で、事故がおこる。馬が言うことを聞いてくれないとかね。
で、荷物の延着、破損。ダメじゃんってことがないように、しっかり御者の育成、馬の育成。
道の整備。ここらへんが儲かる、需要がある。」
「おお!!」
「馬といえばさ、今小さい馬が流行りだとか。
そうなると、こぞって小さい馬を育てるところが出てくるでしょ?
現に、王都にやってくる馬はほとんどが小さいって。ホー姐が言ってた。
でも、荷物を運ぶには不向きかも。
大きい馬を育てるのをやめて、手放すところが出てくるかも。
はい!どうしましょうか?」
「はい!それらを引き取る、もしくは育てる業者を支援する!」
「はい!正解です!!」
「おおおおお!!」
「2つ、3つ先にね。あの耳飾り兄弟の話。そう、ドーガーから聞いたでしょ?
あの2人の言ったことは正解だ。だれもかれもやり出す前にやって、いち早く抜ける。
馬車が流行る、馬が売れる。
そうなるとみなが育てる。で、供給過多だ。
値崩れが起きる。その前に、手放す。国営でするなら、なおさらだ。
見極めが肝心。」

バブル時代の教訓だーねー。

「ん?ちい兄ちゃん?どうした?」
「はー、転げまわりたい気分です。」
「そうなの?フエルトナの門まで走る?よし!そうしよう!
ヨーイ!どん!!」


今度は門に突っ込むこともなく、
息を切らして到着することが出来た。
荷重が10では無理だろう。
ちい兄ちゃんも2だ。

「ゼーハー、ゼーハー。」

セサミンが息絶え絶えに、行商で直接、櫓宿に売りに来たと。
販売の許可書5リングだけ払っておく。
ここで買うのはチーズとプカプカののみだ。
50リング分も買わない。1割、その都度払うほうがいいと学習済み。




「なんだ。驚かせるな。また、強盗から逃げてきたのかと思ったよ。」
「強盗出るんですか?」
「いや、ちょっと前までな。護衛をする奴らがいなくなって、
心配してたんだが、強盗も出なくなった。
きっと、すべて討伐したて、違う国にいったんだろうな。さすがだぜ!」

いい人になってる!!
護衛団が強盗だったのに!!

それを言うわけもいかないから、クスナさんの櫓宿に。
応対はセサミンだ。

「いらっしゃい。3人か?」
「泊りではないが、少し休憩したい。月が昇る前には出るが、
風呂付の一番上の部屋が空いてるならそこで。」
「贅沢だな。もちろん空いている。泊まらなくても10リングだ。」
「わかった。それで、悪いが、手が空いたら上がってきてくれ。」
「水か?」
「いや、少し話があるんだ。」
「・・・わかった。」


警戒されてしまった。そりゃそうか。
あ!タオルの棚は、空っぽになってる。
売れたんだ!うれしい!

背負子も一般的な小さなものにしている。
上に上がると、ものが置いてあって、上がれないような階段が、
完全にふさがれている。

マティスが上の階を買い取ったからだ。これはセサミンにも内緒。



「うわ!景色がいいですね!!」
「ピクトの山、その頂上もいいよ。
月が昇るところを見ようか?」
「月が昇る!恐ろしいですね。」
「一緒だよ。3人で一緒に見よう。それよりもそこにいる穴蜂のほうが怖いよ。」
「それは、セサミナと採ってこよう。」
「そうしてください。」


セサミンはせっかくなので絶景風呂を。
マティスは上に上がって部屋の改造。
これは雨の日までのわたしも見てはいけない。
わたしは、お茶を入れて、ティータイムの準備だ。
ティースタンドを出して、それらしく。
順番は関係なく好きなものから。

マティスが戻り、セサミンも贅沢ですね!と戻ってきた。
3人ともかつらは取ってる。お揃いの砂漠の民の服だ。

「上がって来たな。」


「お客さん?なんだい?」

ノックと同時に入ってくる。
返事を待って入るより攻撃しやすいからだ。


「まってましたよ。まずはお茶にしましょう。」
「え?え?」


「なんだよ!!!あんたたちか!!」

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