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第二節「血を吸う鬼の最愛」
SCENE-040 〝鞘〟の指環
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伊月の指に巻きついた棘のない薔薇蔓が、そのまま凍りつくかのように結晶化して。そこに、ナイフと同じ薔薇柘榴色の花が咲く。
指環としておかしくないほど小さくデフォルメされると印象は随分変わるが、〝ドラクレアの血薔薇〟には違いない。
その薔薇の指環へ、キリエが伊月の手から抜き取ったナイフを近付けると。竜牙のナイフやその模造品が同じ竜種や竜類の鱗であつらえた特製の鞘にしまわれるよう、薔薇柘榴石を思わせる紫がかった魔力結晶製のナイフも、同じ色の魔力結晶にするすると吸い込まれていった。
「使用者登録の類いは何もしていないけど、お前なら〝ドラクレアの魔力〟に干渉できるから、このままでも取り出せるはずだよ」
そう促された伊月が、そういう意図を持って指環に触れると。この世に二つとない魔力結晶製のナイフが、ちょっとした〝物入れ〟として加工された魔力結晶から小物を取り出すような感覚で、伊月の手の中にすとん、と落ちてくる。
「大丈夫そうね」
逆にしまうのも一瞬で。その出来映えに満足した伊月はにっこりと笑いながら、もう一度、物欲しそうに期待混じりの目を向けてくるキリエにくちづけた。
不意打ちに近いものがあった一度目と比べて、二度目ともなると伊月の感動も若干薄れてはいたが。その分、余裕のできたキリエから熱心にお返しをされて、悪い気はしない。
魔力の相性がいい相手とのキスはただでさえ気持ちがいいのに。伊月とキリエの間には吸血鬼の〝牙の誓い〟によって、ただ〝魔力の相性がいい〟という以上の深い繋がりがあるので。キリエから真面目にやり返されると、伊月の体からくったりと力が抜けてしまうのに、たいして時間はかからなかった。
指環としておかしくないほど小さくデフォルメされると印象は随分変わるが、〝ドラクレアの血薔薇〟には違いない。
その薔薇の指環へ、キリエが伊月の手から抜き取ったナイフを近付けると。竜牙のナイフやその模造品が同じ竜種や竜類の鱗であつらえた特製の鞘にしまわれるよう、薔薇柘榴石を思わせる紫がかった魔力結晶製のナイフも、同じ色の魔力結晶にするすると吸い込まれていった。
「使用者登録の類いは何もしていないけど、お前なら〝ドラクレアの魔力〟に干渉できるから、このままでも取り出せるはずだよ」
そう促された伊月が、そういう意図を持って指環に触れると。この世に二つとない魔力結晶製のナイフが、ちょっとした〝物入れ〟として加工された魔力結晶から小物を取り出すような感覚で、伊月の手の中にすとん、と落ちてくる。
「大丈夫そうね」
逆にしまうのも一瞬で。その出来映えに満足した伊月はにっこりと笑いながら、もう一度、物欲しそうに期待混じりの目を向けてくるキリエにくちづけた。
不意打ちに近いものがあった一度目と比べて、二度目ともなると伊月の感動も若干薄れてはいたが。その分、余裕のできたキリエから熱心にお返しをされて、悪い気はしない。
魔力の相性がいい相手とのキスはただでさえ気持ちがいいのに。伊月とキリエの間には吸血鬼の〝牙の誓い〟によって、ただ〝魔力の相性がいい〟という以上の深い繋がりがあるので。キリエから真面目にやり返されると、伊月の体からくったりと力が抜けてしまうのに、たいして時間はかからなかった。
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