ヤクザのせいで結婚できない!

山吹

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番外編: 誕生日とか夜更かしとか(前編)

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※恋愛小説大賞のキャンペーンで、追加更新五万字キャンペーンに若干足りなかったので掌編を付け加えます。
 ベッッッッタベタなやつです! ベタベタ大好きです!
 特に落ちも意味もありません! 
 ただイチャイチャしてるのがかきたかっただけ……。




 昼下がりの教室はけだるい空気に満ちていた。
 体育の後でみんな、やる気がない。あたしも申し訳程度に教科書を開いてはいたけど、頭の中はもやがかかっていた。

「……ということになるので、この場合の公式は……」

 数学の授業のはずだけど、先生の声が異国の言葉に聞こえる。眠い、ひたすら眠い。
 寝ちゃおうかな、と思いながら視線を上げると、黒板の端に書かれた日付が目にはいった。
 あ、今日ってゾロ目なんだ。
 というか、なんか見覚えのある日付だなあ。何だっけ、ええっと……。

「……んぬわあああっ!?」

 突然大声を上げたあたしに教室内の視線が一気に集まった。

「どーしたー雲竜。寝ぼけたかあ」
「はっ、いや、あの、すみません」

 もごもごとごまかしながらも、あたしはそれどころじゃなかった。
 何で忘れてたんだろう。今日は――




「……朱虎さんの誕生日?」
「そうなんだよ~、完全に忘れてた!」
「いや、それ……忘れるか普通」
「う……と、とにかく! プレゼントを買いたいの、あたしは! いいから協力してってば、ミカ!」
「分かったよ」

 ミカはしぶしぶ頷いた。
 あたし達は駅前のファッションビルにいた。放課後、迎えに来たミカに頼み込んで寄り道したのだ。

「少しだけお小遣い残ってるし、いざとなったらカード使うから」
「うわっ、カードなんか持ってんのか。あんたって、実はお嬢だよなあ」

 顔をしかめたミカはぐるりと辺りを見回した。

「つっても……ここで、朱虎さんに似合いそうなものなんか売ってんのかなあ」
「え、あるでしょ?」

 駅前のファッションビルは、帰宅途中にときどき環と寄ってぶらつく場所だ。あたしはぐるりとお店を見回した。

「あ、ねえねえあのマグカップ可愛い! 取っ手がハートになってる!」
「ハート……」
「あ、このブランケットもいいな~。このアルパカ可愛い~」
「アルパカ……」
「それともエプロンとかどうかな? 朱虎、料理得意だし……最近はミカが代わりにやってるけど、たまに朱虎も作ってるよね? あ、これ胸にひよこついてる、可愛すぎる~! ねえミカ、どれがいいと思う?」

 振り返ると、ミカは何とも言えない顔をしていた。

「いや、どれって……ハートだのアルパカだのヒヨコだの、正気か?」
「え、ダメ?」
「駄目だろ!? そんなん貰って喜ぶ男はほぼいねーって」
「そうなの?」

 あたしが首をかしげていると、ミカは息を吐いて「上の階、メンズだろ。上がろうぜ」とエスカレーターへ歩き出した。

「ま~、無難なとこで行くとネクタイとかハンカチとか良いんじゃねえの」
「なんかつまんなくない?」
「ブランケットより百倍マシだからな。つか、朱虎さんの趣味ってどんなよ。好きな色とか……私服とか何系?」
「何系……?」

 ミカに続いてエスカレーターに乗りながら、あたしは考えこんだ。

「んー……と、だいたいいつもスーツだけど……私服はだいたい無地の黒が多いかなあ。シャツにジーンズか、スウェットかって感じ」
「お、おお……なんか典型的だな……シャツか」

 ミカはあるお店の前で足を止めた。

「ここの服とかどう? イケてるけどそんな高くないし……俺、結構好きなんだ」
「へえ……」

 あたしがキョロキョロしていると、ミカは手慣れた様子でさっといくつかシャツを手に取った。

「これとか、こんなのとかいいんじゃねえの」

 ミカが選んでくれたシャツの一枚に、あたしは目を惹かれた。切り返しが入ったデザインで、ポケットのところは異素材になっている。

「あ……これ、朱虎に似合いそう」

 この服を着てカフェに座っている朱虎がパッと頭に浮かんだ。いつもの飄々とした顔でコーヒーを飲んで、こちらを見てかすかに笑う。

「……いい! すごく良い……そういうデートがしたい!」
「おい。おーい、帰ってこい」

 ひらひら、と目の前で振られたミカの手をあたしはぎゅっと掴んだ。

「ミカ、ありがとう! あたし、これにする!」
「お、おう、そうか」
「ちょっと買ってくるね!」

 あたしはウキウキとレジに向かった。やたらオシャレな店員さんにプレゼント包装してもらう。

「お待たせ~、何とかお小遣いで買えたよ!」

 スキップしながら店を出ると、ミカはエレベーターの方を見つめていた。

「ミカ? どうかしたの?」
「あ、いや。……んー」

 はっとしたように振り向いたミカはパチパチと瞬いた。

「いや、今、朱虎さんによく似た人がいたような気がして……」
「えっ、ウソ! どこ!?」
「でも多分気のせいだよな。こんなとこにいるわけねえし」

 キョロキョロしてしまったあたしは、ミカの言葉に我に返った。

「た、確かに……こんなとこにヤクザは用無いもんね」

 夕方のファッションビルに朱虎がいるはずがない。今頃は事務所で忙しくしているはずだ。
 ミカがあたしの背を叩いた。

「帰ろうぜ。あんまり遅くなると叱られるからよ」
「うん……朱虎、今日も遅いかなあ。プレゼント、今日中に渡せるといいけど」
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