48 / 111
46. 馬乗りとか知らない目とか
しおりを挟む
「えっ、東雲会にガサ入れって……警察が入ったってこと!?」
「そうです」
朱虎はスマホの画面に素早く目を走らせてから何か打ち込むと、ポケットにしまった。
「会長の東雲錦以下、幹部連中はほぼ全員引っ張られたようです。……どうやら大規模な裏取引前だったようで、言い逃れ出来ない状況を押さえられたみたいですね」
どくどくと心臓が激しく鳴り出す。
蓮司さんが言ってた通り、本当に今夜だったんだ。
海外のマフィアと麻薬の取引を行うって言ってた。蓮司さんはちゃんと阻止できたんだろうか。
「そ、そうなんだ……大変だね」
「しょっぴかれた奴らの中に獅子神さんの姿は無かったそうです。何人か怪我人も出たようですが、そちらにも姿は無かったと」
朱虎の言葉に、最悪の想像は打ち消されてほっとする。
「そっか……あ、じゃあ取引はどうなるの」
「取引前にご破算でしょうね。東雲会はメンツ丸潰れで、多分このまま解体するでしょう」
じゃあ、二年もかけていた蓮司さんの仕事は成功したんだ。
あたしは思わず詰めていた息を吐いた。
「そっか……」
「しかし、絶妙ですね」
「えっ」
顔を上げると、朱虎が煙草に火をつけるところだった。
「ガサ入れのタイミングですよ。まさに取引の直前、証拠が綺麗に揃ってるところにドンピシャで合わせてきやがった。」
「そうなんだ……そんなにぴったりだったんだね」
「ええ。おそらく、東雲会の中にネズミ野郎がいて情報をリークしたんでしょう」
「うっ」
それってつまり、蓮司さんのことだ。
吐き捨てるような朱虎の口調に嫌悪感が滲んでいて、あたしは背筋に冷たい氷でもつっこまれたような気分になった。
いったん収まったはずの心臓がまた嫌な感じにバクバクし始める。
「……知ってたのかな」
「へっ!?」
朱虎がぽつりと呟いて、あたしは心臓が口から飛び出しかけた。
薄い煙から透かし見るように、朱虎の視線がこちらを向く。
「獅子神さんはリークされていたことを知ってたのかな、とね。……お嬢は何か聞いていませんでしたか?」
「へ……」
「例えば、日曜のデートは延期にしようとか、また予定を調整したいとか」
まさしく夕方の電話でした会話だ。あたしが何とも言えずに固まっていると、朱虎は肩をすくめた。
「……まあ、どちらにしろ、今後どうするか考えないといけませんね」
「え、今後って……」
「獅子神さんとの結婚の段どりですよ」
「へっ!?」
ぎょっとするあたしに朱虎は意外そうな顔になった。
「何を妙な声出してるんです。この前プロポーズされたんでしょう」
「えええっ、何で知ってんの!?」
あたしが驚くと、朱虎は肩をすくめた。
「近々、オヤジの体調がいいときに改めて挨拶に見えると獅子神さんからご連絡を頂いたんですよ。おかげでオヤジがめちゃくちゃ張り切って、今は招待状を一人ひとり手書きで作っています」
「えっ、そんなことしてんのおじいちゃん……ていうか蓮司さん、いつの間に!?」
知らないうちに外堀を埋められてる……!
「ただ、オヤジはあくまでも『東雲会の幹部』である獅子神さんにお嬢を任せるつもりですからね。東雲会がこうなった以上、獅子神さんは逮捕を免れたとしても役付きでも何でもないただのチンピラになる。オヤジが何と言うか」
「おじいちゃんは肩書で人を判断したりしないよ」
朱虎の言い方が嫌味っぽかったので、あたしはむっとして言い返した。
「だいたい、おじいちゃんは東雲会のことが嫌いじゃない。おじいちゃんが蓮司さんを推したのは、東雲会の偉い人だからじゃなくて、病室での態度が気に入ったからでしょ」
「そうですね」
反論されるかと思ったけど、朱虎はあっさり頷いた。
「そんな風に庇うってことは、お嬢の気持ちはもう決まってるんですね」
「え? 気持ちって」
「獅子神さんと結婚するんでしょう」
「はあ!?」
唖然とするあたしをよそに、朱虎は煙を吐き出した。
「もちろん、きちんと筋は通してもらいますがね。でもお嬢自身がその気なら……」
「ま、ま、待って待って! 朱虎!」
あたしは慌てて朱虎の言葉を遮った。
「結婚なんてできないってば! 蓮司さんとは無理!」
「何故ですか」
だってあの人、実は警察だから。
とはさすがに言えない。
「き……綺麗すぎてあたしじゃ釣り合わないでしょ! あの顔とずっと並んで過ごすのってすごいプレッシャーっていうか、比べられ続けて辛いなって」
「大丈夫ですよ、お嬢も可愛いですから。可愛い可愛い」
「あんたの可愛いって言葉、何の説得力もないどころかもはや煽りなんですけど!? あと性格にも難ありっていうか……とにかく、蓮司さんとは無理なの! だからちゃんと……」
「『蓮司さん』ね」
朱虎の口調は最高に嫌味ったらしかった。
「人見知りのお嬢が男性を下の名前で呼ぶなんて、ずいぶん距離が縮まってるじゃないですか」
「それは、蓮司さんから『名前で呼んで欲しい』って頼まれたから」
「頼まれたからですか。なら『蓮司さん』から結婚してくれって頼まれてるんですから、そちらもかなえて差し上げたらいかがですか」
いつもの朱虎らしくない突き放すような言い方に、心の底がひやりと冷えた。
「け、結婚はそんなに簡単なものじゃないでしょ」
「簡単に考えりゃいいんですよ。釣り合いが取れないだのなんだのグダグダ悩むなんてお嬢らしくもないことやめなさい」
「あたしらしくって……」
朱虎は煙を吐いて、そっぽを向いた。
「ったく。本当、面倒くさい……」
「メンドくさい!?」
ブチッと頭の中で何かが切れた音がした。
あたしはずかずかとソファに座る朱虎に近づくと、そのまま膝の上にどん! と馬乗りになった。
ぎょっとのけぞる朱虎の襟首を掴み上げ、思いっきり怒鳴る。
「メンドくさいって何よ! 何でそんなイヤミったらしい言い方するのよ、朱虎のバカッ!」
「えっ、いや」
「あたしらしくないって何!? あたしみたいなアホは悩むキャラじゃないって言うわけ!?」
こんなのはほとんど八つ当たりだ。
事情を知らない朱虎に言ったって仕方ないって分かってるけど、どうしても止まらなかった。
「何が『簡単に考えりゃいい』よ、いろいろ事情があるんだから! 朱虎の方こそ、簡単に言わないでよ!」
「――お嬢!」
朱虎が押し殺したような低い声で呟いた。小さな声なのに有無を言わせない迫力がこもっていて、空気がビリッと震える。
「――獅子神蓮司がどんな問題を抱えていようが、俺が何とかします。だから、お嬢は悩まなくていいんですよ」
「……な、何とか、って」
蓮司さんの問題は、朱虎がどうにかできるようなものじゃない。
そう言おうとしたあたしを目で止めて、朱虎は小さく頷いた。
「大丈夫です」
紺色の瞳が鋭くあたしを射抜く。
まるで獣だ。
とびきり凶暴な獣が、あたしの合図ひとつで飛び出せるようじっと構えているみたい。
「あんたが欲しいなら、俺が必ずあの男を手に入れてやるから」
『手に入れてやる』が『殺してやる』と聞こえた気がした。
いや、聞き間違いじゃない。多分、ほとんど同じ意味だ。
ここにいるのは本当に朱虎だろうか?
今にも暴発しそうなのに、ぞっとするくらい冷たい目の男の人。
「……ちゃんと聞いて、朱虎」
あたしはからからになった喉をごくりと鳴らした。
朱虎の頬に手を当てて、眼を覗き込む。
紺色の瞳が面食らったように瞬いた。
「プロポーズは断るつもりなの。あたしは、蓮司さんとは結婚しない」
言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「悩んでたのは、どうやって断ったらいいのかなってことだから。……分かった?」
息をつめて見つめていると、あたしを映している瞳からふと剣呑な光が消えた。
「……分かりました」
声は穏やかさを取り戻している。張りつめた空気は一瞬で綺麗さっぱり消え去っていた。
全身の力が抜けて、あたしはほっと息を吐いた。
「本当にいいんですか? 断って」
「いいって言ってるでしょ! 大体、朱虎が言ったんじゃない。結婚相手は、だ、抱かれてもいい人にしろって」
「……確かに言いました」
朱虎は肩をすくめた。いつもの飄々とした朱虎だ。
「じゃあお嬢は、あの色男に抱かれるのは嫌だってことですか」
「ぎゃっ、その言い方やめて! 良い人だなーとは思うけど……違うかなって。やっぱり、キスとかその先とかは本当に好きな人とじゃないとヤだし」
「そういうことはお嬢が思うほど特別なもんでもないんですけどね。あんまりハードル上げちまうと実際に経験した時がっかりしますよ」
「そんなことない! 絶対素敵だってば。だって、本当に好きな相手とだもん」
呆れた顔をされるかと思ったけど、朱虎はふっと笑った。
心臓がドキリと跳ねる。
「……お嬢らしいですね」
「えっ……な、何それ」
あれ?
今更だけど、朱虎の膝の上に馬乗りになって向かい合ってるこの姿勢って、ちょっと近すぎないだろうか。しかも朱虎の頬に手を当てたまま。
これってなんだか、まるでキスする直前みたいな――
「見つかると良いですね、そんな相手が」
もし今、あたしが本当にキスしたら、朱虎はどんな顔をするんだろう。
いきなりそんな考えが頭に浮かんで、心臓がひときわ大きく飛び跳ねた。
「そうです」
朱虎はスマホの画面に素早く目を走らせてから何か打ち込むと、ポケットにしまった。
「会長の東雲錦以下、幹部連中はほぼ全員引っ張られたようです。……どうやら大規模な裏取引前だったようで、言い逃れ出来ない状況を押さえられたみたいですね」
どくどくと心臓が激しく鳴り出す。
蓮司さんが言ってた通り、本当に今夜だったんだ。
海外のマフィアと麻薬の取引を行うって言ってた。蓮司さんはちゃんと阻止できたんだろうか。
「そ、そうなんだ……大変だね」
「しょっぴかれた奴らの中に獅子神さんの姿は無かったそうです。何人か怪我人も出たようですが、そちらにも姿は無かったと」
朱虎の言葉に、最悪の想像は打ち消されてほっとする。
「そっか……あ、じゃあ取引はどうなるの」
「取引前にご破算でしょうね。東雲会はメンツ丸潰れで、多分このまま解体するでしょう」
じゃあ、二年もかけていた蓮司さんの仕事は成功したんだ。
あたしは思わず詰めていた息を吐いた。
「そっか……」
「しかし、絶妙ですね」
「えっ」
顔を上げると、朱虎が煙草に火をつけるところだった。
「ガサ入れのタイミングですよ。まさに取引の直前、証拠が綺麗に揃ってるところにドンピシャで合わせてきやがった。」
「そうなんだ……そんなにぴったりだったんだね」
「ええ。おそらく、東雲会の中にネズミ野郎がいて情報をリークしたんでしょう」
「うっ」
それってつまり、蓮司さんのことだ。
吐き捨てるような朱虎の口調に嫌悪感が滲んでいて、あたしは背筋に冷たい氷でもつっこまれたような気分になった。
いったん収まったはずの心臓がまた嫌な感じにバクバクし始める。
「……知ってたのかな」
「へっ!?」
朱虎がぽつりと呟いて、あたしは心臓が口から飛び出しかけた。
薄い煙から透かし見るように、朱虎の視線がこちらを向く。
「獅子神さんはリークされていたことを知ってたのかな、とね。……お嬢は何か聞いていませんでしたか?」
「へ……」
「例えば、日曜のデートは延期にしようとか、また予定を調整したいとか」
まさしく夕方の電話でした会話だ。あたしが何とも言えずに固まっていると、朱虎は肩をすくめた。
「……まあ、どちらにしろ、今後どうするか考えないといけませんね」
「え、今後って……」
「獅子神さんとの結婚の段どりですよ」
「へっ!?」
ぎょっとするあたしに朱虎は意外そうな顔になった。
「何を妙な声出してるんです。この前プロポーズされたんでしょう」
「えええっ、何で知ってんの!?」
あたしが驚くと、朱虎は肩をすくめた。
「近々、オヤジの体調がいいときに改めて挨拶に見えると獅子神さんからご連絡を頂いたんですよ。おかげでオヤジがめちゃくちゃ張り切って、今は招待状を一人ひとり手書きで作っています」
「えっ、そんなことしてんのおじいちゃん……ていうか蓮司さん、いつの間に!?」
知らないうちに外堀を埋められてる……!
「ただ、オヤジはあくまでも『東雲会の幹部』である獅子神さんにお嬢を任せるつもりですからね。東雲会がこうなった以上、獅子神さんは逮捕を免れたとしても役付きでも何でもないただのチンピラになる。オヤジが何と言うか」
「おじいちゃんは肩書で人を判断したりしないよ」
朱虎の言い方が嫌味っぽかったので、あたしはむっとして言い返した。
「だいたい、おじいちゃんは東雲会のことが嫌いじゃない。おじいちゃんが蓮司さんを推したのは、東雲会の偉い人だからじゃなくて、病室での態度が気に入ったからでしょ」
「そうですね」
反論されるかと思ったけど、朱虎はあっさり頷いた。
「そんな風に庇うってことは、お嬢の気持ちはもう決まってるんですね」
「え? 気持ちって」
「獅子神さんと結婚するんでしょう」
「はあ!?」
唖然とするあたしをよそに、朱虎は煙を吐き出した。
「もちろん、きちんと筋は通してもらいますがね。でもお嬢自身がその気なら……」
「ま、ま、待って待って! 朱虎!」
あたしは慌てて朱虎の言葉を遮った。
「結婚なんてできないってば! 蓮司さんとは無理!」
「何故ですか」
だってあの人、実は警察だから。
とはさすがに言えない。
「き……綺麗すぎてあたしじゃ釣り合わないでしょ! あの顔とずっと並んで過ごすのってすごいプレッシャーっていうか、比べられ続けて辛いなって」
「大丈夫ですよ、お嬢も可愛いですから。可愛い可愛い」
「あんたの可愛いって言葉、何の説得力もないどころかもはや煽りなんですけど!? あと性格にも難ありっていうか……とにかく、蓮司さんとは無理なの! だからちゃんと……」
「『蓮司さん』ね」
朱虎の口調は最高に嫌味ったらしかった。
「人見知りのお嬢が男性を下の名前で呼ぶなんて、ずいぶん距離が縮まってるじゃないですか」
「それは、蓮司さんから『名前で呼んで欲しい』って頼まれたから」
「頼まれたからですか。なら『蓮司さん』から結婚してくれって頼まれてるんですから、そちらもかなえて差し上げたらいかがですか」
いつもの朱虎らしくない突き放すような言い方に、心の底がひやりと冷えた。
「け、結婚はそんなに簡単なものじゃないでしょ」
「簡単に考えりゃいいんですよ。釣り合いが取れないだのなんだのグダグダ悩むなんてお嬢らしくもないことやめなさい」
「あたしらしくって……」
朱虎は煙を吐いて、そっぽを向いた。
「ったく。本当、面倒くさい……」
「メンドくさい!?」
ブチッと頭の中で何かが切れた音がした。
あたしはずかずかとソファに座る朱虎に近づくと、そのまま膝の上にどん! と馬乗りになった。
ぎょっとのけぞる朱虎の襟首を掴み上げ、思いっきり怒鳴る。
「メンドくさいって何よ! 何でそんなイヤミったらしい言い方するのよ、朱虎のバカッ!」
「えっ、いや」
「あたしらしくないって何!? あたしみたいなアホは悩むキャラじゃないって言うわけ!?」
こんなのはほとんど八つ当たりだ。
事情を知らない朱虎に言ったって仕方ないって分かってるけど、どうしても止まらなかった。
「何が『簡単に考えりゃいい』よ、いろいろ事情があるんだから! 朱虎の方こそ、簡単に言わないでよ!」
「――お嬢!」
朱虎が押し殺したような低い声で呟いた。小さな声なのに有無を言わせない迫力がこもっていて、空気がビリッと震える。
「――獅子神蓮司がどんな問題を抱えていようが、俺が何とかします。だから、お嬢は悩まなくていいんですよ」
「……な、何とか、って」
蓮司さんの問題は、朱虎がどうにかできるようなものじゃない。
そう言おうとしたあたしを目で止めて、朱虎は小さく頷いた。
「大丈夫です」
紺色の瞳が鋭くあたしを射抜く。
まるで獣だ。
とびきり凶暴な獣が、あたしの合図ひとつで飛び出せるようじっと構えているみたい。
「あんたが欲しいなら、俺が必ずあの男を手に入れてやるから」
『手に入れてやる』が『殺してやる』と聞こえた気がした。
いや、聞き間違いじゃない。多分、ほとんど同じ意味だ。
ここにいるのは本当に朱虎だろうか?
今にも暴発しそうなのに、ぞっとするくらい冷たい目の男の人。
「……ちゃんと聞いて、朱虎」
あたしはからからになった喉をごくりと鳴らした。
朱虎の頬に手を当てて、眼を覗き込む。
紺色の瞳が面食らったように瞬いた。
「プロポーズは断るつもりなの。あたしは、蓮司さんとは結婚しない」
言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「悩んでたのは、どうやって断ったらいいのかなってことだから。……分かった?」
息をつめて見つめていると、あたしを映している瞳からふと剣呑な光が消えた。
「……分かりました」
声は穏やかさを取り戻している。張りつめた空気は一瞬で綺麗さっぱり消え去っていた。
全身の力が抜けて、あたしはほっと息を吐いた。
「本当にいいんですか? 断って」
「いいって言ってるでしょ! 大体、朱虎が言ったんじゃない。結婚相手は、だ、抱かれてもいい人にしろって」
「……確かに言いました」
朱虎は肩をすくめた。いつもの飄々とした朱虎だ。
「じゃあお嬢は、あの色男に抱かれるのは嫌だってことですか」
「ぎゃっ、その言い方やめて! 良い人だなーとは思うけど……違うかなって。やっぱり、キスとかその先とかは本当に好きな人とじゃないとヤだし」
「そういうことはお嬢が思うほど特別なもんでもないんですけどね。あんまりハードル上げちまうと実際に経験した時がっかりしますよ」
「そんなことない! 絶対素敵だってば。だって、本当に好きな相手とだもん」
呆れた顔をされるかと思ったけど、朱虎はふっと笑った。
心臓がドキリと跳ねる。
「……お嬢らしいですね」
「えっ……な、何それ」
あれ?
今更だけど、朱虎の膝の上に馬乗りになって向かい合ってるこの姿勢って、ちょっと近すぎないだろうか。しかも朱虎の頬に手を当てたまま。
これってなんだか、まるでキスする直前みたいな――
「見つかると良いですね、そんな相手が」
もし今、あたしが本当にキスしたら、朱虎はどんな顔をするんだろう。
いきなりそんな考えが頭に浮かんで、心臓がひときわ大きく飛び跳ねた。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる