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45. フラグとか真夜中の連絡とか
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警戒していたけど、朱虎は結局それ以上聞いてはこなかった。これ以上しらばっくれる自信がなかったあたしはほっとしたけど、そのせいで宿題のことはすっかり忘れていて、次の日から三日間ほど怒涛の補習祭りに突入した。
「うう~……もう二度と宿題忘れない……」
地獄の補習ラッシュを何とか乗り越えて帰宅したあたしは、ベッドに倒れ込んだ。頭がオーバーヒートしてズキズキ痛んでいる。
「うう~、頭が……って、そういえば、おじいちゃんのお見舞いにも行けてないな。明日は行けるかな。ミカの具合も気になるし……」
あれこれ考えながらうとうとしていると、不意に枕元のスマホが鳴った。
体を起こすのもダルいから、寝っ転がったまま耳に当てる。
「あい、もしもし」
『――志麻さん? ごめん、寝てたかな』
「ふあっ!? れ、蓮司さん!?」
あたしは飛び起きた。
「ね、寝てないです! ちょっとうとうとしてただけで……ていうか、何であたしの番号」
『環に聞いたんだ。突然、ごめん』
「い、いえ……」
蓮司さんとは三日前に別れたきり、連絡を取っていなかった。
あたしはきちんと座り直して、スカートを整えた。向こうからは見えないはずなのに、何となく気恥ずかしい。
「あの……どうかしましたか?」
『ちょっとね。志麻さんの声が聞きたかったんだ』
「ぬぅっ」
思わず変な声が出た。
『声が聞きたくて』なんてフレーズを言われる日が来るとは!
『どうかした? 今、なにか妙な声が……』
「あっいえいえ、全然どうもしません! 大丈夫です、ハイ」
『そうか、良かった』
声を聞きたいんだっけ。何を話せばいいんだろうか。
「あっ、えっと……今日、補習でした」
とりあえず思いついたことを口にしたけど、即座に後悔した。
『補習?』
「あの! 補習って言っても宿題忘れたせいで、あ、いや、あー……」
駄目だ、どんどんドツボにハマってる。
焦りまくってるとくすりと笑い声がした。
『今度、勉強教えてあげるよ』
「……ありがとうございます」
恥ずかしすぎる。私バカの子ですっていう自己紹介になってしまった。
ほてった頬を押さえていると、蓮司さんが電話の向こうで小さく咳払いした。
『ちょっと聞きたいんだけど……環はあれから真面目に学校へ来てるかい』
「えっ、環ですか。えっと……明日には来ると思います、部活やるってグループチャットで連絡がありましたから」
『そうか、良かった』
蓮司さんの声はほっとしたようだった。
環は「お互いに干渉しない」と言ってたけど、蓮司さんの方は環ほどクールじゃないみたいだ。顔は似ているけど、性格の方は結構違うのかもしれない。
『それにしても、環と君とが友人だとはな。驚いたよ』
「えっ、そうですか? 確かにあたしと環はタイプが全然違いますけど……」
『ああ、そうじゃなくて。環は昔から他人に興味がなくてね……昔から、誰かと一緒にいるところを見たことがない』
確かに、環が誰かとキャッキャしながら連れ立ってトイレに行く図なんか想像できない。
『環が君のことを友人だと言ったのは衝撃だったよ。付き合いにくい奴だが、仲良くしてくれてありがとう』
「付き合いにくいだなんて全然そんなことないです! あたしの方が構ってもらってると言うか……」
何だかくすぐったいような気分だ。環はいつもクールだけど、本当はあたしのことを結構大事に思ってくれてるんだろうか。
「あたしだって環はすごく大事な友達です! カッコいいし、頼りになるし……いないと死んじゃうかも」
『……それはうらやましい』
「え?」
『僕も君にそこまで言われたいな、と思ったんだよ。妹に嫉妬する日が来るとはな』
咄嗟に何と答えていいか分からず口をパクパクしていると、蓮司さんの声音が変わった。
『それと、ごめん志麻さん。どうやら日曜のデートはお預けになりそうだ』
「えっ?」
『予想より早く事態が動きそうなんだ。早ければ今夜にも』
ピリッと背筋を緊張が駆け抜けた。蓮司さんが話していた裏取引がいよいよ行われるかもしれないんだ。
「えっと……気を付けてくださいね」
『もちろん。――無事に戻れたら、プロポーズの返事を聞かせて欲しい』
「うぇっ!?」
『もう切るよ。じゃ、おやすみ』
何とも言えずにいるうちに、電話は慌ただしく切れた。
「すんごいベッタベタな死にフラグ立ててったけど、蓮司さん大丈夫かな……」
ズキリ、と忘れかけていた頭痛が蘇って、あたしは顔をしかめた。
「う~……さっさと着替えちゃおう。お風呂に入ったら治まるかな」
外は風が出て来たのか、窓がカタカタと鳴っている。落ち着かない気分は頭痛とともにいつまでもしつこく残っていた。
結局、頭痛はどんどん強くなっていって、あたしは夕食をパスしてベッドにもぐりこんだ。無理やり目をつぶっているうちに意識が落ちて、ふと目が覚めた時にはもう夜中過ぎだった。
「……えっと」
酷い夢を見ていた気がする。蓮司さんの正体がばれて、イタリアンマフィアっぽい黒服の外人が蓮司さんを取り囲んで銃を突き付けていた。
止めに入ろうとしたら、振り向いた黒服の外人は何故か朱虎の顔をしていて、びっくりするあたしに言った。
『お嬢はすっこんでてください』
銃声が鳴り響く。ばったり倒れた蓮司さんに駆け寄ったら、血だまりの中に倒れていたのは環で――
あたしは頭を振った。
「あたし、いろいろシャッフルしすぎ。……うわ、汗ヒドい」
頭痛はすっかり消えていたけど、Tシャツは汗でべとべとだった。ベッドから滑り出て、少しふらつきながらシャワーを浴びに行く。
クロちゃんたちは飲みに行ってるのか、家の中は真っ暗でしんとしていた。さっと熱いシャワーを浴びて着替えると、今さらおなかが空いて来たのでリビングへ向かう。
「なんか食べるものあるかな~……」
「――こんな時間に食うと太りますよ」
「ひぇっ」
冷蔵庫に手をかけていたあたしは、後ろからの声に飛び上がりそうになった。慌てて振り向くと、リビングのソファに黒い大きな影が座っていた。
「えっ、朱虎? なんで電気もつけてないの……びっくりしたあ」
「失礼しました」
黒いシャツにジーンズ姿の朱虎は置物みたいにじっとしていた。声をかけられなかったら全然気が付かなかっただろう。
「身体の具合はいかがですか」
「え? あ、もう全然平気」
「そうですか。夕食を食べなかったから……」
ブブ、と電子音がした。朱虎の手の中だ。
朱虎は言葉を切ると、スマホを耳に当てた。
「――どうなった」
声は普段聞かないような低くて緊張感のある響きだった。胸の奥がざわりと波立って、思わず耳を澄ませてしまう。
「……そうか、分かった。適当なところで戻って来い。……ああ、アニキには俺から連絡する」
電話を切った朱虎は小さく息を吐いた。
「ど、どうかしたの……?」
「ついさっき、東雲会にガサ入れが入りました」
「うう~……もう二度と宿題忘れない……」
地獄の補習ラッシュを何とか乗り越えて帰宅したあたしは、ベッドに倒れ込んだ。頭がオーバーヒートしてズキズキ痛んでいる。
「うう~、頭が……って、そういえば、おじいちゃんのお見舞いにも行けてないな。明日は行けるかな。ミカの具合も気になるし……」
あれこれ考えながらうとうとしていると、不意に枕元のスマホが鳴った。
体を起こすのもダルいから、寝っ転がったまま耳に当てる。
「あい、もしもし」
『――志麻さん? ごめん、寝てたかな』
「ふあっ!? れ、蓮司さん!?」
あたしは飛び起きた。
「ね、寝てないです! ちょっとうとうとしてただけで……ていうか、何であたしの番号」
『環に聞いたんだ。突然、ごめん』
「い、いえ……」
蓮司さんとは三日前に別れたきり、連絡を取っていなかった。
あたしはきちんと座り直して、スカートを整えた。向こうからは見えないはずなのに、何となく気恥ずかしい。
「あの……どうかしましたか?」
『ちょっとね。志麻さんの声が聞きたかったんだ』
「ぬぅっ」
思わず変な声が出た。
『声が聞きたくて』なんてフレーズを言われる日が来るとは!
『どうかした? 今、なにか妙な声が……』
「あっいえいえ、全然どうもしません! 大丈夫です、ハイ」
『そうか、良かった』
声を聞きたいんだっけ。何を話せばいいんだろうか。
「あっ、えっと……今日、補習でした」
とりあえず思いついたことを口にしたけど、即座に後悔した。
『補習?』
「あの! 補習って言っても宿題忘れたせいで、あ、いや、あー……」
駄目だ、どんどんドツボにハマってる。
焦りまくってるとくすりと笑い声がした。
『今度、勉強教えてあげるよ』
「……ありがとうございます」
恥ずかしすぎる。私バカの子ですっていう自己紹介になってしまった。
ほてった頬を押さえていると、蓮司さんが電話の向こうで小さく咳払いした。
『ちょっと聞きたいんだけど……環はあれから真面目に学校へ来てるかい』
「えっ、環ですか。えっと……明日には来ると思います、部活やるってグループチャットで連絡がありましたから」
『そうか、良かった』
蓮司さんの声はほっとしたようだった。
環は「お互いに干渉しない」と言ってたけど、蓮司さんの方は環ほどクールじゃないみたいだ。顔は似ているけど、性格の方は結構違うのかもしれない。
『それにしても、環と君とが友人だとはな。驚いたよ』
「えっ、そうですか? 確かにあたしと環はタイプが全然違いますけど……」
『ああ、そうじゃなくて。環は昔から他人に興味がなくてね……昔から、誰かと一緒にいるところを見たことがない』
確かに、環が誰かとキャッキャしながら連れ立ってトイレに行く図なんか想像できない。
『環が君のことを友人だと言ったのは衝撃だったよ。付き合いにくい奴だが、仲良くしてくれてありがとう』
「付き合いにくいだなんて全然そんなことないです! あたしの方が構ってもらってると言うか……」
何だかくすぐったいような気分だ。環はいつもクールだけど、本当はあたしのことを結構大事に思ってくれてるんだろうか。
「あたしだって環はすごく大事な友達です! カッコいいし、頼りになるし……いないと死んじゃうかも」
『……それはうらやましい』
「え?」
『僕も君にそこまで言われたいな、と思ったんだよ。妹に嫉妬する日が来るとはな』
咄嗟に何と答えていいか分からず口をパクパクしていると、蓮司さんの声音が変わった。
『それと、ごめん志麻さん。どうやら日曜のデートはお預けになりそうだ』
「えっ?」
『予想より早く事態が動きそうなんだ。早ければ今夜にも』
ピリッと背筋を緊張が駆け抜けた。蓮司さんが話していた裏取引がいよいよ行われるかもしれないんだ。
「えっと……気を付けてくださいね」
『もちろん。――無事に戻れたら、プロポーズの返事を聞かせて欲しい』
「うぇっ!?」
『もう切るよ。じゃ、おやすみ』
何とも言えずにいるうちに、電話は慌ただしく切れた。
「すんごいベッタベタな死にフラグ立ててったけど、蓮司さん大丈夫かな……」
ズキリ、と忘れかけていた頭痛が蘇って、あたしは顔をしかめた。
「う~……さっさと着替えちゃおう。お風呂に入ったら治まるかな」
外は風が出て来たのか、窓がカタカタと鳴っている。落ち着かない気分は頭痛とともにいつまでもしつこく残っていた。
結局、頭痛はどんどん強くなっていって、あたしは夕食をパスしてベッドにもぐりこんだ。無理やり目をつぶっているうちに意識が落ちて、ふと目が覚めた時にはもう夜中過ぎだった。
「……えっと」
酷い夢を見ていた気がする。蓮司さんの正体がばれて、イタリアンマフィアっぽい黒服の外人が蓮司さんを取り囲んで銃を突き付けていた。
止めに入ろうとしたら、振り向いた黒服の外人は何故か朱虎の顔をしていて、びっくりするあたしに言った。
『お嬢はすっこんでてください』
銃声が鳴り響く。ばったり倒れた蓮司さんに駆け寄ったら、血だまりの中に倒れていたのは環で――
あたしは頭を振った。
「あたし、いろいろシャッフルしすぎ。……うわ、汗ヒドい」
頭痛はすっかり消えていたけど、Tシャツは汗でべとべとだった。ベッドから滑り出て、少しふらつきながらシャワーを浴びに行く。
クロちゃんたちは飲みに行ってるのか、家の中は真っ暗でしんとしていた。さっと熱いシャワーを浴びて着替えると、今さらおなかが空いて来たのでリビングへ向かう。
「なんか食べるものあるかな~……」
「――こんな時間に食うと太りますよ」
「ひぇっ」
冷蔵庫に手をかけていたあたしは、後ろからの声に飛び上がりそうになった。慌てて振り向くと、リビングのソファに黒い大きな影が座っていた。
「えっ、朱虎? なんで電気もつけてないの……びっくりしたあ」
「失礼しました」
黒いシャツにジーンズ姿の朱虎は置物みたいにじっとしていた。声をかけられなかったら全然気が付かなかっただろう。
「身体の具合はいかがですか」
「え? あ、もう全然平気」
「そうですか。夕食を食べなかったから……」
ブブ、と電子音がした。朱虎の手の中だ。
朱虎は言葉を切ると、スマホを耳に当てた。
「――どうなった」
声は普段聞かないような低くて緊張感のある響きだった。胸の奥がざわりと波立って、思わず耳を澄ませてしまう。
「……そうか、分かった。適当なところで戻って来い。……ああ、アニキには俺から連絡する」
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