上 下
54 / 86

54.

しおりを挟む


ゆっくりと、優しく指が抜かれる。

「そろそろ、挿れンぞ」
「………うん」

そっと瞼を開ければ、身体を起こして体勢を整えたハイジが、自身のものを握り込む。
立てていた片膝を顔の方へと押し上げられ、先程まで指で愛撫されていた秘部がハイジに曝かれる。

「すげぇ、絶景」
「……ゃだ」
「や、じゃねぇだろ」

抵抗せずに漏らせば、口の片端を持ち上げたハイジが、嬉しそうに言う。
張り詰めて、大きく育ったハイジの怒張。その先端が宛がわれ、息を吐きながらキュッと目を瞑る。


ズズ……

指よりも太いソレが、慎重に奥まで挿ってくる。その圧に、思わず息を止めてしまうけれど。熱くて硬いその肉茎を感じながら、柔く瞼を持ち上げる。


……はぁ、はぁ、
余裕のないハイジの顔が、ぼんやりと視界に映る。

「その蕩けた顔……堪んねぇ」
「……」
「一生、オレだけにしか見せンなよ」

膝を押し上げている方の足を肩に掛け、反対側の手で僕の中心を握り込む。

「……っ、!」

奥を突かれたまま、前を扱かれるのは初めてで。その本能的な刺激が強くなるにつれ、ハイジとの間に距離が出来てしまってるようで……

「だめ……、」
「……何でだよ」

両手を下に伸ばし、その動きを阻止しようとする。と、その手をパシンとはね除けられてしまう。

「……、」

上手く、言葉で言えなくて。ハイジを見つめながら、小さく頭を横に振る。

……怖い。
何でだか解らないけど、凄く怖い。
拒絶されたショックはあるものの、それだけじゃなくて。漠然と湧き上がる不安が一体何なのかが、……よく解らなくて。

「……」

手を胸の上に引っ込め、目を伏せて耐えていれば、抱えていた僕の足をベッドに下ろしたハイジが、僕の上に覆い被さる。
まるで、心臓と心臓を近付けるかのように。

「悪ぃかった。怖がらせちまって……」
「……」
「もう、しねぇから」

ハイジの吐息が、柔く鼻先に掛かる。
甘蜜に濡れた瞳。僕の横髪に指を差し込み、優しく頬を包み込む。

「……ん、」

ただ、それだけで。胸の奥に広がっていた闇のようなものが消えていく。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺の天使は盲目でひきこもり

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:103

どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:1,740

罰ゲームで告白した子を本気で好きになってしまった。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:104

9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,867pt お気に入り:103

BLはファンタジーだって神が言うから

BL / 完結 24h.ポイント:825pt お気に入り:30

娼館で働く托卵の子の弟を義兄は鳥籠に囲いたい

BL / 連載中 24h.ポイント:1,635pt お気に入り:127

コーカス・レース

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:26

処理中です...