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21.二人だけの夜

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×××


「よォ!」

校門を抜けると、そこにはハイジの姿があった。
背中を塀に預け、膝を曲げた方の足裏を塀の下部に付けて片足立ちをし、僕に片手を上げる。

朝、バイクで送ってきてくれた時とは違う格好──肩を落としたスタイルの、白のフード付きパーカー。黒のカットソー。シルバーネックレス。
白金色の髪を後ろに束ね、縮れた横髪を押さえるようにして幾つかピンで留めている。

その姿は、やっぱり格好良くて。
人目を引くせいか、下校する女子達がチラチラとハイジの方を見て騒いでいた。

「ちょっとその辺で、軽くメシでも食っていこうぜ」

それには眼もくれず、真っ直ぐ僕だけを見つめてくれる。
気恥ずかしながら、それが何だか……嬉しくて。

「……うん……」

切ない程に、胸の奥がキュッと締め付けられる。





大通りから少し入った所にある、山小屋風の小洒落たレストラン。
ウッディな天井からぶら下がる、アンティーク調の照明器具。木製のテーブルの端に置かれた、ランタン型のキャンドル。そのどれもが暖色系の柔らかな光を放ち、壁などに飾られた様々なオブジェをお洒落に演出している。
デート向きのせいか、客層はやはり男女のカップルが目立つ。

「ンで、どうだったんだよ。久しぶりの学校は?」
「……」

牛ロースステーキのセットを二つ注文した後、ハイジが意地の悪い質問をぶつけてくる。
思い出されたのは、学級委員長との一件。じりじりと痺れる指先を誤魔化すように、テーブルの下で両手を握り締める。

「何か、あったンか?」

僕の様子に不穏を感じたらしい。ハイジが目を眇める。

「……ううん」
「あるなら、ちゃんと言えよ」

優しさを含ませながらも、僕を咎める口調。心情を見透かそうとする鋭い眼。
其れ等に耐えきれず、目を伏せる。

「……」

多分ハイジは、解ってる。
僕が学校に行きたがらないのは、嫌な目に遭ってるからだって。
だから今朝、わざわざ学校の門前まで送ってくれたんだと思う。僕が、これ以上舐められないように……

「まさか、──昨日のアイツか!?」
「……え」

驚いて視線を上げれば、ハイジと視線がぶつかる。
冷徹なまでに鋭く、尖った双眸──

「違うよ……」

それは、僕の首を絞めた時に見た眼、そのもので。
心臓を抉り抜かれるような恐怖が襲い掛かる。

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